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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年12月23日金曜日

私たちの『希望』


福音館童話集『きょうの世界昔話』から
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むかしむかし、ギリシアの神ゼウスは、巨人のプロメテウスを呼んで言いつけました。
「ねんどで、我々と同じ姿をした生き物を作れ。わしが息を吹き込んで、命を与えてやろう」
プロメテウスが言いつけ通りの生き物を作ると、ゼウスはそれに命を吹き込んで人間と名付けました。
次にゼウスは、プロメテウスにこんな命令をしました。
「人間に生きていく為の、知恵を授けてやれ。ただし、火を使う事を教えるな。火は、我々神々だけの力。人間に火を使う事を教えると、我々の手におえなくなるかもしれんからな」
こうしてプロメテウスは、人間に家や道具を作る事、穀物や家畜を育てる事、言葉や文字を使う事などを教えました。
しかし火がなくては、物を焼く事も煮る事も出来ません。
いつも寒さに震え、真っ暗な夜は動物たちに襲われる恐怖におびえていました。
そこでプロメテウスはゼウスの言いつけにそむいて、人間に火を与える事を決心しました。
プロメテウスは弟のエピメテウスを呼ぶと、こう言いました。
「おれは人間たちを、とても愛している。
だから人間たちに、火を与えるつもりだ。
だがそれは、ゼウスの怒りにふれる事。
おれはゼウスに、ほろぼされるだろう。
だからお前が、おれの代わりに人間を見守ってやってくれ」
プロメテウスはそう言うと、太陽から盗み出した火を人間に与えたのです。
そして怒ったゼウスに山につながれて、ワシに食い散らされてしまいました。

間もなくゼウスは、職人の神へパイストスに命じて、この世で一番美しいパンドラを作らせると、エピメテウスのところへ連れて行かせました。
人間に火をもたらした罰に送り込まれたともいえるパンドラには、神々からさまざまな贈り物をさずけられていました。
美の女神 アフロディーテからは美しさを、アポロンからは音楽と癒しの力を、そして何よりゼウスは、パンドラに好奇心を与えていたのでした。
エピメテウスはパンドラの美しさに心を奪われると、パンドラを自分の妻にしました。
エピメテウスの家には、プロメテウスが残していった黄金の箱がありました。
黄金の箱は、病気、盗み、ねたみ、憎しみ、悪だくみなど、この世のあらゆる悪が閉じ込められていて、それらが人間の世界に行かないようにしていたのです。
プロメテウスはエピメテウスに、
「この箱だけは、決して開けてはならない」
と、言っておいたのですが、パンドラはこの美しい箱を見るなり、中にはきっと素晴らしい宝物が入っていると違いないと思いました。
そこで夫に箱を開けて欲しいと頼みましたが、エピメテウスは兄との約束で、決して首を縦に振りません。
するとパンドラは、
「あなたが箱を開けてくださらなければ、わたしは死んでしまいます」
と、言い出したのです。
そこでエピメテウスは仕方なく、兄との約束を破って箱を開けてしまいました。
そのとたん、箱の中からは病気、盗み、ねたみ、憎しみ、悪だくみなどのあらゆる悪が、人間の世界に飛び散ったのです。
エピメテウスがあわててふたを閉めますと、中から弱々しい声がしました。
「わたしも、外へ出してください・・・」
「お前は、誰なの?」
パンドラが尋ねると、
「わたしは、希望です」
と、中から声が返ってきました。
実はプロメテウスが、もしもの為に箱に忍び込ませておいたのです。
こうして人間たちは、たとえどんなひどい目にあっても、希望を持つ様になったのです。
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出典:http://hukumusume.com/douwa/pc/world/03/17.htm

21世紀最初の10年は、まさにパンドラの箱が開かれた様なものでした。
アメリカ同時多発テロから始まった正義の武力対立(民族主義、宗教教義主義等々)
無慈悲な市場原理主義、野放図な金融市場が引き起こす経済不安
大規模自然災害の襲来(地震、台風、熱波、かんばつ)
そして暴走した原子力の火
参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/21%E4%B8%96%E7%B4%80

これらの禍は、私たち人の愚かな行為、
『主義主張の押し売り』
『際限なき消費欲望、膨張欲望』
『負の遺産(借金、公害、責任)の先送り』
そして『自らへの過信』
が招いたものです。

そして世界に解き放たれた、
『悪意』『暴力』『偽善』『保身』そして
『妬み』『憎しみ』『悲しみ』『餓え』を元の箱に収め戻すためには、
何世紀という時間を要するでしょう。

しかし、私たちにはプロメテウスが与えてくれた
『火を扱う力』、創造し、創意工夫し、自らを進歩させる力
『希望』、夢を見、憧れを持って、今日を歩み明日に挑む力
があります。

2012年が、
私たち人が、この世界で
『どの様に生きてゆくべきか』また『どの様な役割を果たすべきか』を再考し、
この世界の幸せ、そして私たち人の幸せのための、新たな一歩を踏み出すファーストイヤーとならん事、信じたいと思います。



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