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不寛容にもほどがある!

現在の日本社会を支配する倫理観では不適切として烙印を押されてしまう、昭和ど真ん中の言動や行動で生きている中年の男性教師を主人公にして、現代にタイムスリップした主人公が、誰かが不適切だと呟けば社会全体が盲目的に不適切を糾弾する不寛容な現代の日本社会の有り様に喜劇で一石を投じる、宮藤...

2013年12月12日木曜日

夢心地の恋物語「ルビー・スパークス」を観ました。

2012年制作米国映画「ルビー・スパークス」(原題:Ruby Sparks)を観ました。
この映画、当時のニューズウィーク日本版の映画評で取り上げられていた作品です。映画の中で奇妙な恋人となる二人は、実生活でも仲の良い恋人であることが書かれていました。

あらすじです。
高校を中退した後、書き上げた処女作の小説が一世を風靡して、一躍文壇の寵児となった青年カルヴィン。そんな彼が、二冊目を生み出すプレッシャーから、夢の中でひとりの可憐で従順な女の子を生み出します。
カルヴィンは、その女の子にルビー・スパークスという名前を与え、彼女の背景を設定して、物語を描き始めます。
そんなある日、カルヴィンの目の前に、彼の想像の産物であるはずのルビーが現れます。始め彼は、自分の精神が破綻したのだと恐れ、存在しないはずの彼女を無視しようと努めますが、ルビーが誰にも見えて、触れることの出来る正真正銘の女の子であることが分かって、驚嘆すると同時に、本物の恋人となって一緒に暮らし始めます。
ルビーは、カルヴィンがタイプライターで文章にする通りの女の子に変身します。フランス語が喋れる、とタイプを打てば、フランス語を話すのです。カルヴィンは、この秘密をルビーに明かさず、書きかけの物語を鍵の付いた引き出しにしまいます。

カルヴィンは、遠方に住む母にせがまれて、ルビーを紹介しに母のもとを訪ねます。人付き合いが悪く女の子にも奥手であったカルヴィンを心配していた母は、愛くるしい女の子ルビーをひとめ見て大喜びです。そしてルビーは、カルヴィンの家族と一時とても楽しい時間を過ごします。ですがカルヴィンは相変わらず、家族との交流も避けて一人読書にふけっていました。
自宅に戻った後、ルビーに変化が起こります。自分以外、家族ともうまく打ち解けられないカルヴィンとの生活に息苦しさや孤独を感じ、カルヴィンに少し距離を置いて生活することを求めます。ルビーは絵の学校に通い出しました。友だちも出来ました。そしてカルヴィンと過ごす時間が少なくなった時です。嫉妬したカルヴィンは、仕舞っていた物語を取り出して、タイプを再開しました。
・・・ルビーは、カルヴィンなしでは生きられない・・・
そしてルビーは、カルヴィンのもとに帰ってきました。彼女はもう一時も彼のもとを離れなくなりました。家の中でも、外出時でも、手を絡めていなければ泣き出してしまうのです。そんなルビーに恐れを感じ、カルヴィンは
・・・ルビーは、ルビーのままで・・・
とタイプをします。

ある高名な作家宅で同業者の懇親パーティーが開かれました。カルヴィンもルビーを伴いパーティーに参加しました。カルヴィンはこのパーティーで、以前恋人関係にあった元カノ、ライラと再会します。カルヴィンは、有名人となった自分に近づきて恋人になり、スランプに陥ると去ってしまったライラを誹謗します。でもライラが彼のもとを去った本当の理由は、自己中心的な彼の性格、自己愛に嫌気が差したからでした。
ルビーは、カルヴィンと離れてひとり佇んでいました。そこに邸宅の主人でプレイボーイのラングドンが現れ、ルビーを庭のプールに誘います。ちょっとした駆け引きを楽しんでいたルビーのもとにカルヴィンが現れます。下着姿になってプールに入りかけていたルビーにカルヴィンは怒り心頭し、自宅に連れ戻して叱責します。
カルヴィンの身勝手さに遂に家を出る決心をしたルビーを見て、カルヴィンは、君は僕の意のままなのだと言い放ち、急いで物語にタイプを始めます。
・・・ルビーは、一歩も部屋の外に出られない・・・
ルビーが部屋を出ようとすると、見えない壁に閉ざされます。ルビーの顔に恐怖が宿ります。
・・・ルビーは、服を脱ぎながら愛の歌を口ずさむ・・・
抵抗しようのない力によって、ルビーは服を脱ぎ、歌を口ずさみます
・・・ルビーは、指を鳴らす・・・
ルビーは、泣き叫びながら指を鳴らし続けます
・・・ルビーは、永遠に僕を愛すと叫び続ける・・・
ルビーは、タイプされた文章を、抗うことも出来ずに叫び続けます
カルヴィンは、悲痛なルビーの姿を見、我に返ります。そしてタイプの手が止まります。
ルビーは、崩れる様にしてその場に倒れ落ちました。
しばらくして、ルビーはゆっくりと起き上がり、寝室に姿を消しました。
カルヴィンは、ルビーへの贖罪に、
・・・君は、自由だ・・・
とタイプし、物語を終了します。

ルビーは、カルヴィンのもとを去りました。
そしてカルヴィンは、ルビーとの出会いを一冊の本に書き上げます。
タイトルは「girlfriend」
本当の愛に目覚めさせてくれたルビーへ捧げる物語は、大ヒットしました。

そしてある日の昼間、カルヴィンが公園を散歩していると、芝生に寝転んで「girlfriend」を読みふける女の子に出会います。振り返った彼女の顔は、ルビーと瓜二つです。
ぼーっと見とれるカルヴィンに、女の子が親しげに話しかけてきます。
「以前出会ったことがある?カフェだったかなぁ、それとも前世?」
「あなたは何をしている人?」
カルヴィンは、女の子が読んでいる本を預かり、本の裏表紙を開いて、そこに掲載された作者の顔写真を示し、作家だと答えます。
彼女が「もう一度、やり直していい?」と話します。
カルヴィンは、彼女の横に座り込みます。
本当の恋の始まりです。

end

創造した理想の女の子が、もしも現実に目の前に現れたら・・・
もしかしたら誰もが一度は夢想する物語かもしれません。ですから、生半可な結末でないことを願いながら見続けました。
そして結末は想像を超えるものでした。
ルビーは、木偶人形ではありませんでした。カルヴィンの創造の産物なのかもしれませんが、産み落とされた時から、彼女には意思がありました。カルヴィンが操れるのは彼女のうわべだけでした。ですから、カルヴィンが嫉妬と怒りにまかせて彼女を操る場面は、ホラー的な恐ろしさとともに、恋に不器用な彼女のそして彼の悲しみが満ち溢れていました。
そしてエピローグ、ルビーとそっくりな女の子が現れて、
「もう一度、やり直していい?」と話します。
そしてもう一言
「物語の結末は、話さないで」と伝えます。
二人の新しい恋がハッピーエンドであって欲しいと、心から願いたくなる物語でありました。

2013年12月9日月曜日

巳の年の瀬

朝、天上を見上げると、大蛇が空をうねっていました。
今年も、そろそろ終わりです・・・