連続ドラマ『FENCE』のラストシーン、主人公の雑誌ライター小松綺絵が、ドラマの冒頭に沖縄で起こったあるレイプ事件を取材し記事にするよう依頼した雑誌編集長東諭吉に投げつけた言葉『これは沖縄の問題ではありませんよ、日本の問題です。』は、小さくない痛みとして私の心に刺さりました。
連続ドラマ『FENCE』は、2023年にWOWOWで制作されたドラマです。私は先日、Netflixで出会いました。『FENCE』というタイトルとドラマのあらすじを読んで、これは沖縄が抱えてきた差別や基地問題を扱った社会派ドラマと踏んで、とりあえず一話だけでも観てみよう、そんな気持ちで見始めました。でもスタートから、リアリズムを追求した物語と俳優たちの迫真の演技によって、すっかり物語世界に没入しました。
そして『FENCE』は、私に突きつけてきました。
この世界には、性暴力という人権を蹂躙する凶悪犯罪を軽率に実行する人間がいる。無知蒙昧な偏見や先入観で他者を攻撃したり貶める人間がいる。損得勘定だけで物事を判断し道理を無視する人間がいる。責任を取る立場にありながら責任を取ろうとしない人間がいる。
その結果、被害者となった人々は、救われるどころか謂れのない中傷や疑いという二次被害に晒される事になって、生きる希望が断たれてしまう。
これはあなたが生きている世界の話、あなた自身の周りでいつ起こってもおかしくない話、あなたが加害者になるかもしれない、あなたが被害者になるかもしれない。これはあなたが真摯に向き合わなければならない問題であると、強く突きつけてきました。
救われる話もありました。もう一人の主人公でブラックミックスのうちなんちゅである大峰桜に起きた出来事です。彼女は、誰からも同一性を疑われ続けるためにアイデンティティーを形成することが叶わず、その心の空白を他者に愛情を注ぐことでバランスを保っていました。しかし、彼女と母親を見捨てたと思っていたアメリカ人の父も、別れは苦渋の決断の末のことであったこと、そして今でも彼女を大切に思っていることを知る出来事があり、その結果、ブラックミックスとうちなんちゅという二つのアイデンティティーを誇りに生きていく決意を固めることができました。そして、これまでずっと彼女を育て大切に見守り続けてくれた沖縄戦の体験者で米軍の沖縄からの撤退を訴える平和運動に参加している祖母に、祖母と意見の異なる平和への考えを伝えることもできました。その時、祖母が彼女を愛でながら話した言葉が素敵でした。
『桜が一生懸命考えて出した答えなら、構わないよ、おばぁと考えが違っても、(桜を愛しているよ)変わらないさ』
このドラマ『FENCE』は、私たちが今、観るべきドラマだと実感しています。
テレビのニュースでは、現実に今、社会的地位の高い人間による人権を蹂躙した犯罪の裁判が進行中であることを報道しています。また、意見の対立や無知蒙昧な偏見から誹謗中傷され社会からスケープゴートされる人々を何人も目にしています。
だから今、私たちは、他人事とせずに、自分事として、被害者、誹謗中傷される人々に、寄り添い支え合える社会を形成することを、希求し続けなくてはならないと思います。そして、行動しなければならないと思います。
