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不寛容にもほどがある!

現在の日本社会を支配する倫理観では不適切として烙印を押されてしまう、昭和ど真ん中の言動や行動で生きている中年の男性教師を主人公にして、現代にタイムスリップした主人公が、誰かが不適切だと呟けば社会全体が盲目的に不適切を糾弾する不寛容な現代の日本社会の有り様に喜劇で一石を投じる、宮藤...

2011年4月29日金曜日

『ほんとうのさいわい』を探しに、手を携えて、前に進もう。内閣総理大臣、及び文部科学大臣からのメッセージ『新学期を迎える皆さんへ』

『Dream』、A3の用紙にコピーされた高砂市立鹿島中学校 第3学年、学年通信。その№2(平成23年4月26日(火))を昨日(4月27日)読んだ。5月の修学旅行(長崎、熊本)の目的、スケジュール等が書かれていた。

妻が裏面も読んで、というので裏返したら、そこに、
中学校、高等学校段階の生徒用『新学期を迎える皆さんへ』と題する菅直人内閣総理大臣、高木義明文部科学大臣連名の署名が記されている文章が掲載されてあった。
この文章は、4月6日に発表されたものと後で分かったが、毎日、ashahi.comのRSSをチェックしていたのにも関わらず、日々掲載される首相動向や枝野官房長官の会見は、ページを開いてまでして内容をチェックしなかった。
新聞も丹念に読む方であるが、この文章に気付かなかった。
もしかしたらマスコミ自体も、中学校、高等学校の生徒向けメッセージという程度の認識で、国民への重要な首相メッセージとして伝えなかったのではないか、そう思えてならない。

3月11日の、大地震、大津波と立て続けに日本列島を襲った自然の猛威により、多くの町が破壊尽され、多くの人命が奪われた。そして私たち日本人は、その後、約一ヶ月間、喪に服した様にすべてにおいて自粛を自らに課した。
しかし、その間も、被災地では日本中の消防士、自衛官、各国の救助隊が生存者救出に活動していた。そして、生存確立のタイムリミットが過ぎてからは、遺体の捜索・収容が主な活動となった。
破壊尽くされた町で、何とか生き延びた被災者も、何もかも奪われ着の身着のままで、避難所生活を強いられている。
多くの就学年齢の子どもたちが扶養者(とうさん、かあさん)を失った。
それでも、時間は止まることなく進み、春が訪れ、進学、進級を迎える。

この『新学期を迎える皆さんへ』は、彼らへの菅直人首相からの応援メッセージである。
と同時に、すべての日本人に対しての、『共に、自然と共生した本来の日本を新たに作り直そう』という表明であると受け取りました。

地震災害から一ヶ月が過ぎ、内閣や東京電力の対応のまずさを糾弾する声が、敵対する野党だけでなく、与党内からも噴出し、管降ろしが声高に叫ばれ始めました。マスコミも同様です。コメンテーターや、専門分野の学者までもが解説と糾弾の波に乗り遅れまいとしているようです。

私は、菅総理、管内閣が不安ならば、手弁当で身を預け、補佐し、支え、日本国民のため、日本の未来へ通じる道を開くために、持てる力を出し尽くして、あなたを国政に導いてくれた民意に答えるために、今こそ、全力で働く時だと思います。

地震発生直後、それでも日本人は、秩序正しく行動したと、世界の人々が驚嘆と共に賞賛して下さいました。多くの国、個人が他国である日本の危機のために奔走しく下さいました。これからは、日本の政を担う者が、全身全霊を掛けて、日本国民のため、世界の友人のために素早く、共に手を携えて行動すべきときです。

私たち国民は、政を担う者達の行動をチェックしています。そして、マスコミや企業、学問の府の動向もチェックしています。

原子力発電所の破壊と放射能漏れや、これからの地震、津波対策など、これまでの様な『想定』という自ら限界を設ける様な対応の繰り返しでは、問題の根源的対応にはならないことを私たちは知りました。大いなる自然の脅威に知らされました。

私たちは自然に対してもっと謙虚に、そして科学や技術の発展も、これまでの産業優先ではなく、人間が幸せになることを第一の目的において、社会システム、産業システム、経済システム、政治システムを再構築しなければいけない、そう思います。

司馬遼太郎さんが、20世紀末に書かれた随筆『21世紀に生きる君たちへ』では、21世紀は、20世紀の負の経験を生かして、人間にとってより良き社会が訪れる、またそういう社会を構築するために、子どもたちに『頼もしさ』『優しさ』『他人の痛みを感じる』人になって下さい、という言葉を贈られています。

それにも関わらず、1990年代からこれまでの約20年間、世界は新たな脅威(見えざる敵、ファントムとの戦い)に終始してしてきました。現実社会では、まだまだ様々な社会思想、宗教、民族の争いが耐えません。また、インターネットが繋ぐ仮想社会はボーダーレス化し、そこでは誰にでもチャンスを与えてくれると同時に、無秩序が犯罪の温床にもなっています。

私たちは、あらゆるものがそうであるように、光りあればその影が存在することをしっかりと理解し、影の部分(ダークサイド)に取り込まれないようにしなければいけません。
この度の原子力発電所の放射能漏れ問題、インターネット社会の問題、そして現実社会の問題然りです。

ただ、この東日本大震災で、司馬さんが『21世紀に生きる君たちへ』の中で、私たちに期待された、『優しさ』『他人の痛みを感じる』が証明されたことに深く感動を覚えました。

今、私たち一人ひとりが出来る事は、それぞれがこれまでに培った最も自信のある事柄で、新しい社会を設計し再構築するとか、学び・スポーツ・芸術の分野で次代を担う若者を育成するとか、教育・保育・社会的弱者のケアに尽くすといった、これまでの企業一遍通りの生き方ではない、それぞれが、それぞれの唯一の道を歩んで行き、それが最終的には、全人類、否、この世界で共に生きるすべての命と共に、より良き未来に、一歩一歩近づけたらいいなぁと思います。


p.s.
4月6日に発表された『新学期を迎える皆さんへ』は、とても平易な文章で書かれた、最近にない名文であると感激しました。
しかし、ある人はこの文章を見て、特に『日本の未来は、皆さんの双肩にかかっています』という箇所のみを引用して責任放棄だ、と批評されています。
また、実際にこれまでの対応を見ると、すべてが後手後手に見え、放射能漏れの問題、汚染された土地を放棄しなければならない問題、また日本有数の農作物の産地を失うことの問題等々二次三次の問題が、連鎖的に起こっています。

私は、この『新学期を迎える皆さんへ』を朗読し、朗読ビデオを作成しました。



音声以外に、
背景画として、東山魁夷さんの1948年作『郷愁 Homebound Road』を使わせて頂きました。
私は平成5年に姫路市立美術館で開催された『東山魁夷展』で、その崇高な絵画を観賞する栄誉に与りました。
展覧会場の入り口に配置された、巨大なキャンパスに描かれた『残照』に圧倒された記憶は今も鮮明に残っています。
そして、『月宵』『郷愁』『道』を観賞し、美しい日本の風景の神々しさをいつでも楽しめた当時(1940年代)の人々の、何気ない感謝の念に触れた思いがしました。

もう一つ、背景曲として、NHK21世紀大河ドラマ『坂の上の雲』のメインテーマ『Stand Alone』(作曲:久石 譲さん)を、現代の世界の歌姫"Sarah Brightman"さんのVocaliseの歌を使わせて頂きました。
この『Stand Alone』の雄大なメロディが大好きである事、そして小山薫堂さんの書かれた歌詞がとても気に入っていた点です。特にクライマックスの歌詞、
『わたしは信じる 新たな時がめぐる
凛として旅立つ 一朶の雲を目指し』
私たちはもう一度、坂の上の雲を目指すのかもしれません。
しかし、それは、富国強兵、産業革命、欧米化、植民地施策、拡張を名目とした戦争等というものとは180度反対の、
自然を畏れ愛し共生し、皆が安心し、皆がそれぞれに役割を担って働き、共に喜び合える社会を構築するという、『道』です。(『SlowFood』協会が提唱する、生活スタイルの考え方に共鳴した考え方です)
有史以来、そんな道を究めた歴史を持つ国はどこにもないでしょう。日本とて同じです。
しかし、謙って、感謝して、まずは日本人が協調し、隣国と協調し、そして世界中の国々、人々と協調するとという遙かな『道』の先に、きっとあります。私はそう信じたいと思っています。

改めて、朗読ビデオに二つの偉大な作品を使わせて頂きました。どうかお許し願えればと思います。


最後に、下記に、『新学期を迎える皆さんへ』の全文を掲載し、本文を終えます。
有り難うございました。

《平成23年4月6日(水)に発表された『新学期を迎える皆さんへ』全文》

月菅総理の演説・記者会見等
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201104/06message_chukousei.html

(中学校、高等学校段階の生徒用)
新学期を迎える皆さんへ

皆さん、入学、進級おめでとうございます。
皆さんは、この4月、希望に満ちた春を迎えるはずでした。
しかし、この春は、私たちにとって、とてもつらい春になってしまいました。
御存じのように、3月11日、あの未曾有の大地震と津波が日本を襲ったのです。
皆さんの中にも、ご家族を亡くされたり、あるいはいまも避難所から学校に通ったりしている生徒さんがいることでしょう。
避難所の中では、皆さんが率先して、お年寄りや身体の不自由な方を助け、掃除をしたり、食事の準備をしたりしてくれているという話をたくさん聞いています。皆さんがボランティアで活躍しているという知らせも、たくさん届いています。本当にありがとう。

直接被災をした皆さん。皆さんは、十代のもっとも人間が成長する時期に、この大きな試練に立ち向かわなければならなくなりました。
いま抱えているすべての悲しみや不安から、完全に逃れることはできないかもしれません。でもいつか、皆さんが、その悲しみと向き合えるようになる日まで、学業やスポーツ、芸術文化活動やボランティア活動など、何か一つでも夢中になれるものを見付けて、この苦しい時期を乗り越えていってもらえればと願います。
学校は、あらゆる面で、皆さんが、この逆境を乗り越えていくためのサポートをしていきます。

災害にあわなかった地域の生徒の皆さんにも、お願いがあります。
どうか、皆さんの学校にやってくる、避難してきた仲間たちを温かく迎えてあげてください。すぐ近くに、そういった友達がいなくても、遠く離れて不自由な生活をしている同世代の友達を、同じ仲間、友達だと思ってください。そして、被害を受けた仲間の声に耳を澄ましてください。
この大震災を通じて、日本国と日本社会は、大きな変化を余儀なくされます。この大震災からどうやって国を立て直していくのか。自然と共生して生きてきたはずの日本社会が、その本来の姿を取り戻すためには何が必要なのか。
もちろん復興の過程では、「がんばろう」という元気なかけ声が必要です。しかし、それと同時に、新しい社会、新しい人間の絆(きずな)を作っていくために、大きな声にかき消されがちになる、弱き声、小さな物音にも耳を澄ましてほしいのです。

東北が生んだ詩人宮沢賢治は、科学と宗教と芸術の力で、冷害・凶作の多かったこの東北地方の農民を、少しでも幸せにしようと考え、そのことに一生を捧げました。
どうか、他人の意見もきちんと受け止めながら、自分で合理的な判断ができる冷静な知性を身に付けてください。しかしそれだけではなく、他人のために祈り涙する、温かい心も育んでください。そして、芸術やスポーツで人生を楽しむことも忘れないでください。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』には、こんな言葉があります。
「僕、もうあんな暗やみの中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう」
賢治の言う「ほんとうのさいわい」とは何でしょう。この大きな災害と混乱の中で、皆さんに、このことを考えて欲しいのです。
もしも、それを皆さんが本当に真剣に考えてくれるなら、きっと皆さんは、どこまでもどこまでも、一緒に進んでいけるはずです。そしてその先には、もっともっと素晴らしい新しい日本の国の姿があるはずです。
忘れないでください。一緒に進んでいくのは、決して日本人だけではありません。今回の東日本大震災では、世界中からたくさんの支援が寄せられています。また、この非常時にあっても秩序正しく、理性を失わない日本人の姿に、世界中が驚き賞賛の声を揚げました。私たちは、世界と共にいます。  原子力発電所の事故に対して、危険をかえりみずに立ち向かう消防士や自衛官、電力会社の人たちの姿。各地の被災地で、救命救急活動にあたった警察官や医療関係者、そして何より、本当に命がけで皆さんを守ってくれた学校の先生たちの姿を忘れないでください。そして、みなさんも、もっともっと身体を鍛え、判断力を養い、優しい心を育んで、他人のために働ける人になってください。

日本の未来は、皆さんの双肩にかかっています。
あなたたちのその笑顔、ひたむきな表情が、いま家族や地域の人々を支えようと懸命にがんばっている大人たちに、勇気と希望を与えています。
私たちも、全力で、皆さんの支援に取り組みます。
本当の幸せを求めて、一緒に歩んでいきましょう。

              内閣総理大臣  菅  直人
              文部科学大臣  髙木 義明