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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年2月8日水曜日

大切な映画作品『陽のあたる教室』


私は映画が大好きです。
学生時代、どんな風に映画を観ていたかは、以前の記事で触れましたのでここでは省略しますが、映画について話し出したら今も止まらなくなります。(^_^)

そして映画館で観て、
是非子供が大きくなったら見せたいと、その後にDVDを買い求めた作品があります。
『陽のあたる教室(Mr.Holland's Opus)1996年上映』
『遠い空の向こうに(October Sky)2000年上映』
『小説家を見つけたら(Finding Forrester)2001年上映』
です。

今日はその一作品を観ました。
『陽のあたる教室』です。

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1965年、ピアニストのグレン・ホランドはジョン・F・ケネディ(以降JFK)高校の音楽教師になりました。
彼はこれまでジャズバンドのピアニストしてクラブなどで演奏活動を続けていましたが、夢である交響曲作品を書き上げるために、安定した収入と創作時間を求めて音楽教師になったのです。四年間の腰掛けのつもりでした。

そして登校第一日目で、彼は教師の仕事が甘いものでないことを痛感します。
生徒らはまるで音楽の授業に興味を示さず、オーケストラの指導においても、生徒らの演奏はあまりにも酷い。そしてなにより、彼の雇い主であるジェイコブス校長から
『教師の本分は、ただ教科を教えることだけでなく、コンパスとなって導くこと』を求めらます。

グレンは不満を抱きつつも、音楽を教え、オーケストラを指導します。そして五ヶ月が過ぎたある日、フォトグラファーの妻アイリスから妊娠を告白されます。彼は妻からの思わぬ告白に最初戸惑ってしまうものの、彼を音楽の世界に導いた『ジョン・コルトレーン』との出会いに準えて最上の喜びであることを妻に話します。
そして彼の生徒達への向き合い方も変わりました。
クラシック作品ではなく、若者達に支持されている(悪魔の音楽といわれていた)ロックンロールを演奏して授業を進めます。ロックンロールもまたクラシックを父系とした音楽であるとの彼の講義は生徒達の興味を喚起します。
またオーケストラ指導では、すぐにクラリネット演奏につまずいてしまう赤毛の女生徒ガートルードに対し、三つのコードしか知らずガチャガチャ演奏するだけの若者グループ(ビートルズです!)を引き合いにだし、『彼らの音楽は楽しいだろう?さあ楽しんで演奏しよう!』と生徒の不安をぬぐい去ります。そして教師となって一年後、最初の生徒を卒業式で送り出します。

子供が生まれました。コール(コルトレーン) と名付けられます。
コールは生まれる前から音楽が与えられます。ホランド夫妻は胎教に良いとクラシック音楽を流し、生まれてからはコールを囲んで楽しい歌をピアノで演奏し歌いました。

グレンは新しい生徒を迎えました。親友で体育教師のビルから、彼の大切な生徒でレスリングで華々しく活躍するも学業の成績が悪く、このままでは退学となってしまうルイスを、グレンが新しく指導するマーチングバンドに入れてもらえないかと頼まれます。バンドに入って活動すれば卒業に必要な単位が与えられるのでした。
ルイスは楽器演奏はもちろんのこと楽譜もまったく読めません。グレンはルイスにドラムパートを与えます。そして、初めは箸にも棒にもかからないルイスにさじを投げますが、ビルの『生徒は皆私の子供のようなもの』という熱意に絆され、体でリズムを取ることから始めて、やがてルイスはしっかりとドラムを演奏できるようになりました。

JFK高校マーチングバンドは、町のパレードで初演技を披露します。
キリリとしたコスチュームを身にまとったグレンが誇らしくバトンを持って行進する様子を、アイリスは幼いコールを伴って沿道から声援します。
マーチングバンドの行進の後ろを消防自動車が追尾します。そして大きな警笛を鳴らしました。人々は皆耳をふさぎ顔をしかめます。子供たちは泣き叫んでいます。
アイリスもコールを心配しました。そしてコールを見ると、まるで騒音などないように、すやすやと眠っているのでした。コールは先天的に90%の聴力が奪われていたのです。

物語はここからより深淵になっていきます。。。
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1970年、ベトナム戦争が泥沼化し、若者達はヒッピースタイルに傾倒します。スタドラーという生徒もそのひとりで、学校生活に正面から向き合わず、教師に悪態をつき、退学してもかまわないと放言します。
そこに悲しい知らせが入りました。軍隊に入隊したルイスがベトナムで戦死したのです。
グレンは、スタドラーをルイスの葬儀に立ち会わせ、『ルイスは苦労して高校を卒業した。そしてそれを誇りにしていた』ことを話します。それはスタドラーが現実に向き合う最初となりました。

コールは少年に成長しました。ホランド夫妻は難聴者に進んだ教育を施してくれる専門施設にコールを預けます。アイリスはコールと共に手話を学び、コールの成長にすべてを注ぎますが、『大好きだよ』の一言さえ伝える事ができぬもどかしさに苛立ちます。
そしてグレンは、大変だけど活き活きと活動できる教師の仕事にのめり込んでいきます。
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1980年、演劇祭で『ガシューイン・メドレー』レビューを上演することになりました。
レビューのオーディションはまるでドタバタ喜劇の様相でしたが、ひとりの女生徒の歌声にグレンは魅了されます。ロウィーナです。そして彼女を主役に抜擢します。
グレンはロウィーナにより高い歌唱を求めます。
『ただ上手に歌うだけでなく、詩の意味をくみ取って歌で表現する』よう求めました。そしてだんだんとロウィーナ本人に魅了されていきました。

ある日、グレンがコーヒーショップで交響曲を譜面に記している最中、ロウィーナが現れます。グレンは彼女に
『卒業したらどうするの?』と訊ねると
『親が小さなレストランを営んでいて、そこでウェートレスになるしかないの』
とため息をつきます。
グレンは思わず
『こんな事は言うべきではないと思うが、君は才能に満ちあふれている。誰がなんと言おうと、ニューヨークを目指すべきだ』
と口走ります。
彼女は熱いまなざしをグレンに向けました。

グレンは、妻アイリスとふたりのための交響曲創作から、いつしかロウィーナへの慕情を込めたセレナーデ『ロウィーナのテーマ』へと傾倒していきます。アイリスは譜面のそのタイトルを目にしますが、グレンは、
『北欧神話をイメージしている』と嘘をつきます。
そして、グレンとロウィーナは歌唱の個人レッスンの最中、愛の言葉は交わさないものの、甘美なそして切ない時間を過ごします。

レビュー公演が始まりました。
初日の公演は、ロウィーナの素晴らしい歌声もあって盛況の内に終えることができました。
公演会場となった講堂で、グレンが一人座っていると、ロウィーナが現れ
『明日の公演が終わったら、そのまま町を出ます。ニューヨークに行きます』
と告げました。そして
『私は小娘です、先生も一緒に来て下さい』
『先生も作曲をなさりたいんでしょう?』
『バス停で待っています』
と告白されます。

レビューの最終日、ロウィーナは愛情の熱視線をグレン一人に向けて、
”Someone to Watch Over Me(私を見守って)”を歌い上げます。

アイリスはコールを伴って、最終日の公演を見に来ていました。パンフレットに目を落とすと、歌姫の名前に目がとまりました。
”ロウィーナ”と書かれています。

公演が終わり、打ち上げパーティーが始まりましたが、でもアイリスは夫を残して先に帰宅しました。
そして深夜のバス停、寂しいベンチにロウィーナが一人座っています。そばには大きなボストンバッグが二つ。
蝶ネクタイをしたままのグレンが道を横切って近づきます。
うつむき加減のロウィーナに笑顔が点ります。でもその次には『どうして?』というゆがんだ表情へと変化しました。
ふたりはベンチに腰掛けます。ロウィーナにはもう先ほどまでの凛とした面影はありません。グレンはそっと訊ねます。
『どこに泊まるんだい?』
『YWCA』
『ニューヨークにいるバンド仲間に連絡しておいた』
『夫婦で君を待っている』
『行かないのね?』
『これでいいんだ』
バスが停車します。でもロウィーナは不安で立ち上がれません。
グレンがロウィーナをじっと見つめますと、ロウィーナはようやく立ち上がり、そしてキスを求めます。ですか、グレンはロウィーナの頬にキスをして
『Good-bye, Rowena. 』と告げます。
ロウィーナは少女の顔に、また大人の女性の表情を宿して、一人バスに乗り込みます。
家に帰ったグレンは、ベッドで休んでいるアイリスの傍らに腰掛け
『I love you.』と囁きます。
アイリスは片手をグレンの首に回して
『I know.』と応えます。
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1980年の冬の事です。ジョン・レノンが亡くなりました。
ベビーブーマー世代であるホランド夫婦は悲しみを表明しますが、
父グレンは、息子コールは耳が聞こえず、それがために音楽を知らず、ジョン・レノンも知らないと、悲しみを共有しようとはしません。
そんな父にコールは、手話で訴えます。
『僕だって』
『ビートルズのことぐらい知っている』
『あなたが彼らを好きなことも』
『あなたは父親だ』
『僕だって音楽のことをもっと知りたい』
『でも僕でなく生徒達に教えてる』
糞っ!と苛立ちを投げつけます。

そして父は、息子に向き合う決心をします。
息子に音楽を伝えようと決めたのです。
1981年の演劇祭に難聴者の子供たちを招きました。
オーケストラの演奏では、スポットライトを音の強弱に合わせて点滅させます。
音を光で表現する試みです。
そして、もう一つのサプライズ、それは息子に手話で歌を捧げることでした。
ジョン・レノンが息子ショーンのために作った子守歌
”Beautiful boy”です。
そして歌の最後に父は
『Beautiful Cole』と呼びかけます。

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そしてさらに時は立ち、1995年
区の財政危機のあおりを受けて、JFK高校でも教育予算も削減せねばならず、音楽そして美術、演劇の授業がカットされることになりました。グレンは突然に、30年務めた音楽教師を退職しなければならなくなったのです。
退職の日、すっかり大人になって教師として働いている息子コールと妻アイリスが、学校までグレンを迎えにきてくれました。
グレンは、整理した荷物をコールに預け、音楽室に別れを告げて校舎の出口に向かいます。

グレンはふと足を止めました。講堂から音楽が漏れ聞こえてきたのです。
妻と息子はとぼけながら、グレンを講堂に導きます。
そして扉を開けて、グレンが中に入りますと
”GOOD-BYE Mr.Holland”
在校生、卒業生、そして町の人たちによる
”ホランド先生を送る会”の開幕です。
彼の教え子達が拍手で迎え、手をさしのべます。グレンは一人一人と声を交わします。
州知事となったかつての教え子ガートルードが壇上に立って祝辞を述べます。
『ホランド先生は私を含め、
大勢の人間の人生を変えました』
『先生は、ご自分の人生を誤ったと
お考えかもしれません』
『授業の合間に交響曲を書き、
いずれそちらの方面で富と名声を得る(とお考えであったかもしれませんが)』
『でも今も富はなく、
この地域は別として、有名でもありません』
『それでご自分を、
人生の失敗者とお考えなら大きな間違いです』
『先生は富や名声を超えた成功を収められたのです』

そしてグレンに問いかけます
『見て下さい』
『あなたはここにいる全員の人生に触れ、
一人一人をより良い人間に育てたのです』
『私たちが
あなたのシンフォニーです』
『私たちは、あなたの作品(Opus)のメロディーで音符』
『あなたの人生の音楽なのです』
-We are your symphony, Mr.Holland.
We are the melodies and the notes of your opus.
And we are the music of your life.-

そしてもう一つのサプライズの始まりです。それは
グレンがようやく完成させていたシンフォニーの演奏です。
ガートルードは、指揮棒をグレンに渡し、クラリネットを持ってオーケストラの席に座ります。彼の教え子達がオーケストラを組んでグレンの指揮を待ちます。
そして”交響曲アメリカ(American Symphony)”初演の始まりです。
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一人の男の30年間の物語です。
夫婦の紆余曲折した愛情物語でもあり、
親子の絆を描いた物語でもあり、
そして人と関わり生きることを賛歌した物語でもあります。

また、原題(Mr.Holland's Opus)の通り、譜面に音符を記したわけでもない彼の人生そのものが、美しく高らかな交響曲を旋律するのです。

そして特に必見なのが、歌唱のシーンです。
”Someone to Watch Over Me”は、ロウィーナを演じるJean Louisa Kellyが実際に歌っています。
下記に”Someone to Watch Over Me”の歌詞を記しますが、本当に場面にぴったりの歌詞で、『恋する女の子のかわいらしくも切なる思い』が込められています。
また”Beautiful boy”も、グレン・ホランドを演じるRichard Dreyfussが歌っています。
手話を交えた切切たる歌声には、最愛の息子コールへのあふれる愛が満ちていました。

この『陽のあたる教室』は、じんわりとした暖かみと、そしてとても純粋な切なさを与えてくれます。それは涙となって、心を潤してもくれます。

受験生諸君には、受験の後の少し落ち着いた時期にでも、この映画の鑑賞をお勧めします。
君たちそれぞれが、自分だけのシンフォニーをこれからどのように描いていくか、夢想してみてはと思います。

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Someone to Watch Over Me
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There's a saying old Says that Love is blind
Still we're often told seek and ye shall find
So I'm going to seek a certain lad
I've had in mind

Looking everywhere Haven't found him yet
He's the big affair I cannot forger
Only man I ever think of
With regret

I'd like to add his initial To my monogeam
Tell me where is the shepherd
For this lost lamb

There's a somebody I'm longing to see
I hope that he turns out to be
Someone who'll watch
Over me

I'm a little lamb who's lost in the wood
I konw I could Always be good
To one who'll watch
Over me

Although he may not be the man
Some girls think of as handsome
To my heart He carries the key

Won't you tell him please To put on some speed
Follow my lead Oh, how I need
Someone to watch
Over me

昔から「恋は盲目」だなんて言葉があるけど
でも「汝、求めよ、さらば与えられん」という言葉もあるし
それなら私、思い描いてきたような運命の人をさがしてみるわ

でもね、あちこちをさがしているんだけど
まだそんな人をみつけられないの
でもね・・・、そんな素敵な人と出会えたなら
きっと一生忘れられないほどの大恋愛になるわ!

そして結婚して
彼の苗字に、私の名前が付け加えられたらいいな・・・
ねぇ、誰か教えて!
この私という迷える子羊の
羊飼いさんはどこにいるの?

ずっと会いたいと思っている人がいるの
その人はいつも私を見守ってくれる人だといいな

私は森の中で迷子になった子羊なの
でも私を見守ってくれる人が現れたら
私はその人の前だったらいつだっていい子でいられるわ

でももしかしたら、その人は女の子たちに
もてるようなハンサムじゃないかもしれないけど
でも、きっと
彼こそが私の心のカギを開けてくれる人なのよ

だから、ねぇ?
誰か彼に伝えて!
もっとスピードを上げて私を追いかけてきてって!
そして早く、私の前に現れてって!
あぁ、こんなにも必要としているのよ
いつも私を見守ってくれる、そんな人を・・・
(歌詞は歌詞サイトからの転載です)

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