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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年2月9日木曜日

エヘンエヘン、さくらが表彰されました。


娘さくらは、兵庫県播磨高等学校の二年生です。そしてソフトボール部のキャプテンを務めています。
そのさくらが今日、姫路市教育委員会主催の”姫路市非行防止大会”で、善行表彰なるものを受賞しました。さてさてどんな顔をして臨むのかを楽しみに、午後から、会場である文化センターに出向きました。

入り口で冊子を受け取りました。頁をめくると表彰受賞者は10組です。
さくらは友達とふたりでの受賞です。下校途中に携帯電話を拾ったのです。そしてそれを適切な手続きを踏んで持ち主にお返しした。それだけの事です。当たり前の事をしただけなのですが、それが表彰の対象となったのです。
そして、受賞者全員が壇上に上がり、受賞の順番を待ちます。さくらは9番目でした。
さくらの名が呼ばれ、中央に進んで一礼、そして賞状を受けました。
その時の、すーつと立った姿勢が、またお辞儀までもが、とても美しかったのです。
その動作はとてもたおやかで、しかも指先まで神経が行き届いていました。びっくりしました。
家では、特に私に対してはおっさんみたいな態度しか見せないので、別人かと思いました。
”県播”の接遇指導、恐るべしと感心しました。

そして夕方、帰宅したさくらに突っ込みを入れました。
『この別人28号!(鉄人28号の駄洒落です)』
『おまえ、何人おるんや?』
『五人』
『おまえ、ゴレンジャーか!』
『壇上に上がってたんは何色や?』
『青』
『そしたら、今のおまえは何色や?』
『赤』
『ほかに何色がおるんや?』
『黄色と。。。銀色、それから白』
『おとうちゃんにやさしいんは何色や?』
『おらへん』
『・・・』
少し寂しい顔をすると、さくらはすかさず
『緑や』
『でもなぁ、もう卒業したん』
結局、おられへんといういう事でした。

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姫路市非行防止大会は三つのプログラムがありました。
第1部 講演ライブ
姫路出身のバンド”THE NEUTRAL”のボーカルしげるさんによる
ミニライブ
第2部 善行表彰
第3部 非行防止啓発劇
    劇団野火の会 小林育栄さんによる一人芝居
    『仮面の少女・愛 ~それでも私を愛してくれますか』
です。
すべてしっかり鑑賞してきました。

姫路市非行防止大会パンフレット
www.city.himeji.lg.jp/var/rev0/0032/4370/hikoubousi.pdf

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ロックバンド”THE NEUTRAL”ボーカルしげるさん(三木茂さん)のミニライブ

『駄目人間だった僕がどのようにしてプロ歌手になったか』、
ライブで鍛えられた語りで時にユーモアも交えながら話されました。
そして4曲を熱唱、ギター一本と生声による、とてもパンチの効いたソウルフルな歌声でした。声質はそう、坂本九さんを彷彿させ、包む様な優しさと伸びのある強さがありました。
1曲目の題名は忘れてしまいましたが、後の3曲は
『ちびとふとっちょ』
『空飛ぶ本屋さん』
『フレーフレーフレー』
どのタイトルもとてもユーモラスなんですが、歌には愛が溢れていました。

またプロミュージシャンとして、私たちが知らない話を二つ披露してくれました。
一つは、インディーズ活動を経て、大手プロダクションからメジャーデビューを果たしたときの事です。『君たちに一億円を賭ける。君たちは価値がある』と言われたそうです。プロ野球のドラフトを連想しました。インディーズ時代の地道な、でも実力を付けファンを獲得してきた実績が評価されたのです。ですから、メジャーデビューをとても誇りとし、また責任も芽生えたと話されました。
そしてもう一つは、テレビの歌番組出演には出演料がでないという話です。
歌番組で歌うというのは、CD等を販売するプロモーション活動とみなされるそうです。いやぁ厳しい世界です。

The Neutral official web site
http://www.the-neutral.com/index.html

ちびとふとっちょの恋の話

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小林育栄さんの一人芝居
『仮面の少女・愛 ~それでも私を愛してくれますか』

物語は、
愛という少女が主人公です。
愛は高校生で、才色兼備。また毎夜自宅の屋上で亡き祖母の面影を星に宿して語りかける優しい少女です。ですが彼女にはもう一つの顔がありました。
仮面を被り、夜な夜な不良グループのリーダーとして、廃退した問題行動を起こしていたのです。

愛の両親は二人とも出会った頃は芸術家の卵でした。ですが父は、生活のために芸術家の道を断念し就職しました。そして母は結婚した後も創作活動を続け今や世界的に認められた仮面彫刻家です。そんな母に父は嫉妬し、酔っては暴力を振るうのでした。DVです。
愛は、家庭内の不条理を抱えながらも、まじめに勉強に向き合っていました。

ある日の事です。愛が勉強していると、獣が現れ
『何をしても無駄な事だ、どうせ死ぬのだから』とささやき始めます。
それからは四六時中、彼女から離れなくなりました。
愛は、獣から逃れようとして彷徨います。そして行き着いた場所が不良グループのたまり場でした。獣もそこでは沈黙します。そして愛は退廃に身を落としていきました。

そんな愛を、担任の菊川は、以前の愛に立ち直らせようと献身的に関わります。
でも愛は、大人の身勝手と取り合わず、侮辱を繰り返します。でも、それでも菊川の献身は揺るがないのです。そして愛が菊川の献身を信じてみようとした矢先、菊川は交通事故で亡くなります。

愛は、自宅に引きこもりました。
ある日、菊川の妻が、菊川のノートを持って訪ねてきました。
そして菊川のノートが愛の手に渡ります。
愛は自宅の屋上で、祖母に見守られながら、静かにノートを開き読み始めました。

『教室で君を始めて見たとき、僕の”愛ちゃん”がいると思った。』
『僕の娘”愛”は、小学生の時に白血病で死んだんだ』
『その”愛”が言うんだ。”愛さん”には長く幸せに生きてほしいと』
そして、
『君は”何をしても無駄だ、どうせ死ぬのだから”と言うが』
『その通りだ、もしかしたら明日蜂に刺されて死ぬかもしれない』
『命とははかないものだ』
『だからこそ、今日を大切に生きるのだ』
『僕はいつまでも君を見守るよ』
そして最後に
『とはいっても、僕が先に死ぬかもしれない』
『でもそしたら僕は、君のおばあちゃんの星にいって、おばあちゃんと一緒に、いつまでも君を見守るよ』

愛は、星に誓います、今日を大切に生きていく事を誓うのでした。
end

一人芝居を見たのは初めてでした。
そしてプロの演技を見て話す事ではないかもしれませんが、朗読を学び一人芝居のようにして朗読を実践している経験から、小林育栄さんの一人芝居を見て、ボディーの演技をし、BGMに合わせ、複数の役をこなさなければならない。開演から終演まで一時の油断もできないこの芝居を、小林さんと一緒になって、緊迫した面持ちで見つめていました。
小林さんは、まるで仮面を取り替えたように、別人になって喜怒哀楽を表現されます。芝居が進むにつれ、それは私の感情を揺り動かして、物語の深部に引きづり込んでいきました。そして一番に感動したのが、終幕のノートの読み語りでした。
きっと白紙のノートなのでしょう、なのに慈しむようにしてノートの頁をめくり、そして目で文字を追うのです。それはまさに真実の演技でした。

この物語では、終幕の直前まである疑問が晴れませんでした。それは、何故に愛の中で獣が生まれてしまったのかという事です。父のDVは、愛の深部にこれほどの深い闇を宿す理由としては弱かったからです。
でも芝居をすべて見終わって後、次のように理解しました。
”死が突然に訪れるように、心に宿る闇も不条理に広がる”と。
私にとっては些細な事柄でも、ある人にとっては非常に重い苦悩となる事があります。
ですから私たちは杓子定規ではいけないのです。大切な人の、ほんのかすかな変化もくみ取れるよう、私自身が大きな愛を満たしていなければいけない、そう物語は語っているのだと理解しました。

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久しぶりに、充足しました。
しげるさん、そして小林育栄さん
有り難うございました。

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