星新一が紡ぎ出したショートショートのひとつに
『最高の贅沢』という物語があります。
F氏が、大金持ちの友人から最高の贅沢を味あわせてあげると招待を受けます。
F氏は、最高の贅沢を味わえる事を楽しみに、招待状に入っていた地図を頼りに友人に会いに行きます。
そこは極寒の地です。男は凍えながら歩いていますと、大きなドームが見えました。
ようやくドームにたどり着き、中に入りますとそこは人工太陽が眩しく輝く常夏の世界です。F氏は友人の贅沢に感じ入りながらドームの中心にある家を目指しましたが、今度は暑くて死にそうになりました。
青息吐息でようやく家にたどり着き中に入りますと、室内は最高に冷房が効いています。そしてあまりの寒さに凍えそうになりました。
ある部屋に入りますと、暖炉に火が入っています。F氏は暖炉のそばの椅子に腰掛けますと、火力は猛烈に上がってF氏は熱さで目が眩みました。
そこに友人が現れて言います。
『最高の贅沢をどうぞ』、彼の手にはつめたく冷えたビールがありました。
記憶を頼り書きました。正確ではないかもしれませんが、この様な筋であったと思います。
贅を尽くした、というよりも最高に無駄を尽くしたもてなしですが、最後のビールはやはり至福であったと思います。
今年の夏は、いろいろな事が重なり、その過ごし方が一変しました。
そして、冷房を極力控え、暑さに向き合う過ごし方を実践しています。
それは『歩くこと』がきっかけでした。歩けばいっぱい汗をかきます。汗は体内の熱を放出し、体に軽快さが甦ります。また肌表面に残った汗(水滴)に微風が触れるだけでひんやり感を覚えます。
また早起きし、陽の明け切らない早朝、熱のこもった部屋の窓やカーテンを開け放つと、外から優しい冷気が入ってきます。
自然が与えてくれる真夏の最高の贅沢な瞬間です。
私は今、やせ我慢ではなく、本当に『最高の贅沢』を感じる事ができる鋭敏な今の状態を楽しんでいます。
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