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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年8月6日土曜日

お菊さんの伝承

現在午前二時、丑三つ時を迎えます。。。

真夏、そしてこの上なく蒸し暑い熱帯夜には、少々の冷房よりも何名か集まって百物語、怪談話で心底寒く、盛り上がりたいですね。。。

私の住む播州には怪談話の古典、『お菊伝承』があります。実際に姫路城内にはお菊井戸があり、また下り二号線(旧十二所線)沿いにはお菊さんを祀ったお菊神社があります。

このお菊さん伝承ですが、
時は江戸太平の時代、姫路藩の重鎮で青山鉄山という不忠義者がお家乗っ取り計画、それを知った忠義の者が娘お菊を密偵として青山の屋敷に女中として使わした。
しかし、鉄山の腹心某がお菊に執心、またお菊の素性を知るところとなり、これを種にお菊を我が物にしようとするが叶わず、腹心某はいよいよ恨み、お菊を陥れ亡き者にしようと策謀。青山家には家宝”十枚組の皿”があり、腹心某はその一枚を隠して、紛失の罪をお菊に着せた。
そしてお菊は惨たらしい拷問を受けて息絶え、その骸は井戸に遺棄される。
その夜、亡霊となったお菊が現れて腹心某を呪い殺し、またお菊の無念を知った忠義の者が鉄山を討ち、その野望を打ち砕いた。
と、だいたい以上のような話です。

さて、このお菊さん伝承の成り立ちついて書かれた文章を、20年ほど前に読んだことがあります。どの本だったかは忘れてしまいましたが。。。
さてその行ですが、
姫路城にゆかりの深い姫、千姫が嫁いだ本多家から出で江戸に入り出家して天樹院となった後の出来事。まだまだ女盛りの天樹院は、ある旗本屋敷の若侍に執心。しかし、その若侍には恋仲の娘がおり、叶わぬ恋を怨んだ天樹院は、二人を討ち家名を断絶。
屋敷は廃れ更地となり、いつしか更地屋敷、さらち屋敷、さら屋敷、皿屋敷と呼ばれるようになった。。。
当時の江戸は芝居が盛んで、この事件も早速題材となり『番丁皿屋敷』という怪談話が作られて、これが江戸話として大いに流行った。
そして江戸話を旅の土産話として持ち帰った人々が各地で皿屋敷伝承、お菊伝承を起こした、という内容です。
更地屋敷が皿屋敷、クスッと笑ってしまう話ではありますが、やっぱり怖い伝承ですね。

お菊さん話の中で私が一番ぞっとしたのが、この江戸話『番丁皿屋敷』です。随分昔のモノクロ映画でしたが、本当に怖かった。お菊さんが遺棄された井戸から出でて、怨む仇の屋敷まで辻を進む行、想像してみて下さい、夜中に歩いていて青白い薄光を纏った痩身の女性が側を音も無く通り過ぎ去る様を。。。
書くのに記憶を辿るだけでも背筋がゾッとしてしまいます。

ゾッとが嫌な方へ、後味よく笑いで締めましょう。
上方落語の演目に『皿屋敷』があります。こちらは姫路が舞台です。桂米朝さん、枝雀さんの音源で聴く皿屋敷は実に笑えます。怪談話も笑い飛ばしてしまう上方落語、是非聴いてみて下さい。