大好きな映画の話、本や朗読の話、また高校野球の試合観戦記、地元播磨の散策記など徒然に書いています。 その他にも、しょうもない昔話やちょっとしたエッセーなども書いています。 本でも読む感覚で読んで頂いて、面白ければ訪問カウンター下にある[G+1]ボタン(Facebookのいいねボタンの様なものです)を押して頂ければ嬉しいです。また、コメントの書き込みも楽しみにしています。
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差別の天秤
「愛を読む人」という約10年前公開の映画の、他の方が書いた映画評を読みました。 そこには私が考え及ばなかった、ハンナが隠し通した秘密についての考察が書かれいました。ハンナは文盲でした。そして、その事実を生涯隠し通しました。それは何故かです。 映画か原作小説の序章で、ハンナの...
2013年3月22日金曜日
『夢のような まだ夢のような ~落語家・桂枝雀七回忌~』を観ました。
今朝、選抜高等学校野球大会の開会式を観ようと、テレビをつけたところ、テレビの画面に桂枝雀さんの顔が写りました。
BSプレミアムアーカイブスで、2005年の番組
『夢のような まだ夢のような ~落語家・桂枝雀七回忌~』
が放送されていました。
しばし見入ってしまいました。南光さん、雀々さんを始めとする枝雀さんのお弟子さんや上方落語の重鎮達が、枝雀さんの思い出を語ります。
枝雀さんとは盟友であった桂福團治さんの、枝雀さんとの最後となった二人会の思い出話には、思わずぐっときてしまいました。
番組の中で、在りし日の枝雀さんの『鶴』を観ました。『鶴』は、大昔に購入した枝雀落語のCDで何百回と聴いた噺ですが、いやぁ、全身全霊で演じられる姿に、そして噺にすっかり魅了されました。
枝雀さんが亡くなられたのは、1999年の春でしたね。いつも聴いていた賑やかなラジオのパーソナリティー三代澤康司さんが、沈痛に声を震わせて番組を進行していたことを覚えています。
枝雀さんの命を奪ったのは鬱という病気です。同じ病気に苦しんだ者として、ましてや大の枝雀落語の一ファンとして、私も沈痛な面持ちになりました。
枝雀さんが亡くなられてから、今年で14年になりますが、枝雀落語大全をICレコーダーにダウンロードして、今でも毎日聴いて笑っています。
枝雀落語を一度だけ、生で観たことがあります。二十代の終わりの頃、加古川市民会館で、枝雀・べかこ(現南光さん)親子会がありまして、連中のタクロウさんと二人で観に行きました。
開場時間よりもずいぶん前に到着し、通用口辺りに車を止めて、車の中で待っていますと、タクシーが入って来て、通用口の前で止まり、枝雀さんとべかこさんの姿が見えました。二人はハンチングを被っていました。思わず賑やかに声をかけますと、枝雀さんはそそくさと通用口から中に入り、べかこさんは気の良い挨拶を返してくれました。
そして高座の一番前の席で、お二人の落語を観ました。
当日の演目はすっかり忘れてしまってますが、この日は特に、べかこさんの溌剌とした落語に大変引き込まれたことを覚えています。
3年前に、朗読をはじめようと思い立ったとき、朗読のトレーニングとして落語噺を朗読しました。『緊張の緩和』や『爆笑を誘う』訳ではないので、枝雀さんの60というネタにはない、米朝さんの持ちネタ『たちきれ線香』と、そして福團治さんの持ちネタ『藪入り』を朗読しました。朗読をして、初めて噺の世界を垣間見ることが出来ました。ともに2010年に落語朗読ビデオを作成し、Youtubeにアップしました。あまりの下手さは、視聴回数の少なさが物語っていますが、二話共に、とても人情深い、奥深い噺ですので、気力のある方は、一度チャレンジしてみてください。
『ジェノサイド』読後感想
先日、「このミステリーがすごい!2012年度版」国内編ランキング1位に輝いた、高野和明さんの小説『ジェノサイド』を読みました。
タイトルとなった、ジェノサイド、集団殺戮のシーンが中程にたっぷりと詳細に描かれていて、そのおぞましさ、むごたらしさには涙が出たほどでした。
でも、それでも600頁におよぶこの長編を読み進められたのは、物語に秘められた大いなる謎を一つ一つ解読していく喜びでした。
物語のあらすじです。
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アメリカ大統領執務室で、人類絶滅を引き起こす新種の生物出現という報告がもたらされます。生物の真否は不明でしたが、人類絶滅の危機を予言したレポート『ハイズマン・レポート』に従って、S・バーンズ大統領は、その生物と、そして生物が出現したとされるコンゴ奥地のピグミー居留地住人をジェノサイドするために、4名の民間特殊工作員(暗殺部隊)を送る決定を下します。
しかし、この人類の最高権力者の謀さえ、ある者が、計算し尽くして企てたプランに過ぎなかったのです。このプランとは、平たく言えば、ひとりの幼子を、アフリカの紛争地域から救出し、護衛して日本に連れ帰ることでした。そのために、ある者は、4名の護衛者を選び、彼らを幼子のところに誘導するために、アメリカを動かしたのです。
ある者には、もう一つ企てがありました。それは、護衛者のリーダー、イエーガーを懐柔するために必須なるものでした。イエーガーには一人子がいます。ぞの子は不治の病に冒されて、その病気の権威であるマドリードの医師の元で高額な治療を受けるものの、後一ヶ月の命と宣告されていました。ある者は、その不治の病を完治させる特効薬を開発しようとしていたのです。その特効薬開発には協力者が必要でしたが、第一の協力者は、突然の病で倒れます、しかし協力者は、我が子に遺志を託していました。それは、薬学部に通う学生、古賀研人でした。
死んだ父から、2台の黒いノート型パソコンが送られてきます。
1台には、GIFTという名の新薬を開発するアプリケーションプログラムが入っていました。それはこの世に存在し得ないものでした。もう1台には、完璧なセキュリティーと、リアルな通信を可能とする通信アプリケーションプログラムが入っていました。
しかしこの企ては、アフリカの幼子の側にいる協力者の些細なミスからアメリカの知るところとなって、研人も、テロリストの汚名を着せられて、アメリカから、また日本政府からも追われることになります。
研人は、父が用意した隠れ家にこもり、ある者の指示を受けて、特効薬の開発に乗り出します。研人には、誰にも知られていない友人がいました。韓国からの留学生李正勲です。
そして、正勲と二人三脚で特効薬の開発を進めていきます。
アフリカでは、幼子とその護衛者を抹殺するために、アメリカが有する全地球偵察システム《ネメシス》の眼が彼らを追い回し、悪行の限りを尽くす地元の民兵組織に彼らの暗殺命令が下ります。そしてアメリカ軍の有する最強の無人殺戮兵器プレデターが彼らの命を狙います。
しかし、この謀さえ、ある者のプランの一部でありました。ある者は、高度なハッキングによって世界中の仮想空間を手の内に抑えていました。ネメシスの眼は、ある者の眼となり、プレデターの攻撃目標は、ある者の手中にありました。
そして、幼子と護衛者達は、紛争地域を脱出し、軍の輸送機を奪い、アフリカから離陸します。
数時間後、輸送機はフロリダ沖に姿を現し、そこで転向してバミューダ島に向かう進路を進みます。F22ラプター3幾がスクランブルし、輸送機の撃墜に向かいます。その命令が下ると同時に、アメリカのライフラインすべてが一斉にダウンしました。ある者のハッキングによってライフラインが人質にされたのです。それでも、S・バーンズ大統領は、愚かにも撃墜の命令を強行します。
バミューダ島沖の海域にさしかかったとき、輸送機は燃料切れを起こして、滑空状態で飛行します。墜落は間近です。その輸送機にミサイルの標準を合わせた3幾のラプターが次々と炎に包まれて爆発します。この海域にはメタンハイドレート《燃える氷》が埋蔵され、海水温の上昇などによって氷の結晶が崩壊し、飛行進路の海域だけにガスが海上に充満していたのです。そしてラプターのジェットエンジンの炎がガスに引火して爆発したのです。自然災害さえも読み切ったある者のプランの通りに物事が進んだのです。
墜落する輸送機から脱出した幼子と護衛者は、無事に日本にたどり着きます。
彼らを迎えたのは、特効薬を期日までに開発させて、イエーガーの一人子を救った研人、正勲と、初めて見る母娘です。
母は日本人の女医で、10年前にピグミー居留地から重症の妊婦を治療するために日本に移送したのですが、その甲斐なく妊婦は死亡します。しかし、妊婦の一人子は無事に出産していたのです。女医は、その子を自分の娘エマとして戸籍を作り秘密裏に育てます。エマは異常に知性が高く、やがては現代文明を陵駕する存在となります。
人類の突然の超進化は、その一人子の親からもたらされたものでした。エマの父親は、その後再婚して、エマの誕生から7年後に一人の男の子アキリが誕生します。居留地で、アキリの最初の護衛者となって成長を見守ってきたピアースは、二人目の超進化人類を目撃します。
エマとアキリは、この世でたった二人の超進化人類となりました。
彼らが神として君臨するのか、悪魔として旧人類を滅ぼすのかは分かりません。
ですが一つだけヒントがあります。それは、研人と正勲が開発を成功させた特効薬です。この薬は遺伝病の特効薬開発の試薬となるものでした。
人が近親相姦で誕生するとき、遺伝病の恐怖があります。しかし、この試薬によって、すべての遺伝病を克服することができるのです。
それは、超進化人類の増殖に欠かせないものでした。そして旧人類の存亡は、エマとアキリに委ねられることになったのです。
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いやぁ、まさに現代人の暗黒面がせきららに描かれていて、虚構とは思えない凄みのある物語でした。私たち現代人の愚かさは、もうどうしようもないところまで、きてしまっているのかという恐怖を覚えるとともに、それでも私たちには、微力かもしれないけれど、学び、そしてより良い未来を創造する力が残されている、という希望も与えられました。
ファイト!さくら!
昨日、さくらが社会人として一歩を踏み出しました。
贈った言葉は
笑顔を絶やさず
周りに気を配り
進んで行う
そして、
自分の役割を、積極的に見つけて行動して下さい。
周りの人を大切にして、またそれ以上に自分を大切にして下さい。
です。
ファイト!さくら!
恩師来訪
昨日の夜、食事の最中、遼太郎が次の様な話をしてくれました。
昼間、自宅に交通安全のポスターを配るおじいさんが訪ねてきて、前田君は居るか?と訊ねられたというのです。名前は聞きそびれた様なのですが、昔教師をしていて、退職後、さまざまなボランティア活動に従事し、今日も交通安全のポスターを一軒一軒配達していたところ、教え子の家を見つけて、わざわざ訪ねてくださったのです。
訪ねてくださったのは、西沢先生ではないかと思います。うろ覚えですが、中学の時の国語の先生です。まだ教師になりたての、背が高く、『飛び出せ青春』の先生役村野武則似の男前で気の良い先生でした。
一年時の担任が神谷先生、そして二年時の担任が西沢先生であったと思います。三年時が剣道部の顧問瀧井先生です。この御三名には、私だけではなく学年全員が大変にお世話になりました。
私など、勉強もできず、スポーツも駄目、体も小さく、気の弱い少年であったため(ただ度を過ぎるおちょけさと、生真面目過ぎる面がありましたが)、印象の薄い者という自覚があったのですが、40年近く時を経ても、先生が覚えてくださっていたことに、大変嬉しく思いました。
先生、訪ねてくださって、本当に有り難うございます。
先生に合わせる顔などないですが、先生のご健勝とご多幸を心から願っています。
あぼちん耕太郎、走ってます。
昨日の夜、7時過ぎに耕太郎が汗だくになって帰ってきました。
練習着姿で、頭から湯気を出し、真っ赤に昂揚した顔は笑顔でした。
「自転車取られたから、走って帰ってきた」
と話します。どうも話が見えません、そしたら
自転車置き場に自転車を置かず、また鍵もかけずに校内に放置していたことから、監督に自転車を没収され、走って帰るようにと、罰が与えられたと続けてくれました。
親子共々、そらしゃあないわなぁと笑いました。
そして耕太郎は、やる気でいっぱいやから今から走ってくる、とその格好のまま、また出掛けていきました。
朝6時、途中まで送ったろか、と言いますと、
エエわ、と言い残し、体操服姿で野球バックを背中に担いで走って行きました。
親は情けないアホでも、子は逞しいアホに成長しつつある様です。
映画『クラウドアトラス』の感想
大きく開いた空に、穏やかな雲が悠然と浮かんだ風景にでくわすと、何だか満ち足りた気分を覚えます。
先日観た、映画クラウドアトラスのエンドクレジットを、そんな気分で眺めていました。
クラウドアトラスは、何の予備知識も無しに観ました。
クラウドアトラスは、時代の異なる、また趣も異なる6つの物語が同時に進行します。そしてすべての俳優は、すべての物語に、全く違う人物で登場します。人種も違えば、肌の色も違う、性別さえ違う人物となって登場します。
そして、くるくるとチャンネルが切り替わる様に、次々と6つの物語が映し出されるのです。
最初は、今どの物語を観ているのかに注意し、次には、それぞれの俳優が、どの人物になりすましているのかを探します。そしてその先には、きっと思いがけない展開、物語の交差点が待ち受けているという期待がどんどん膨らみました。
六つの物語、原作のタイトルに従えば
「アダム・ユーイングの太平洋航海記」
19世紀、奴隷貿易の船中で起こった、白人の若い貴族と奴隷との友情が芽生える物語
「セデルゲムからの手紙」
20世紀初頭、同性愛者の青年音楽家が幻の交響曲「クラウドアトラス六重奏」を完成させて自殺をはかるまでの物語
「半減記 ルイサ・レイ最初の事件」
20世紀中期、原発事故を故意に起こして自らの利権を守ろうとする石油メジャーを命をかけて告発する物語
「ティモシー・キャヴェンデッシュのおぞましい試練」
現代、風采のあがらない老齢の出版編集者が、不正に大金をせしめたことから人生が急転、やくざに脅され、逃げ込んだ先は老人ホームとは名ばかりの強制収容所で、そこから仲間となった老人数名と脱出するまでの物語
「ソンミ451のオリゾン」
22世紀中期、全体主義国家ネオソウルが舞台。クローンとして生まれた性奴隷のソンミが、革命家に救出されてから、おぞましい事実を知り、そして人として学び、虐げられている国民に事実を告発して処刑されるまでの物語
「ノルーシャの渡しとその後のすべて」
文明世界が崩壊した後のとある島が舞台。遥かな昔、世界を救済したとされる女神ソンミを崇める温厚な種族の男が、海の向こうから訪れた文明を密かに継承する種族の女に頼まれて悪魔の山の頂上へと導きます。そこで男は、真実を知ります。ソンミは救済の神ではないこと、そして世界が滅びつつあることを知ります。この間に、男の種族は、島の支配者種族に皆殺しにされ、男は助かったひとり子とともに、女の乗る救済の船に搭乗し脱出します。
長い時を経て、男は、女と夫婦になって銀河の果ての星に移住して暮らしています。幼子達に長い物語を語り終えた後、夜空を見上げ、あの青く輝く星がふるさとだよと腕を上げて示します。その腕には、すべての物語の主人公と同じ、彗星型のアザがありました。
というあらすじです。
6つの物語は、交差することなく、それぞれに結末がありました。でも、男がふるさとを示した腕にあるアザを見たとき、とても満ち足りた、安堵感を覚えたのです。それがどこから沸き立つものか、その時は分かりませんでした。
映画を見終えた帰りに、姫路駅のジュンク堂に立ち寄って、原作小説を探し、さらさらと頁をめくりました。そして二晩、考えました。
輪廻転生という概念があります。人は死ぬと別のものに生まれ変わるという概念です。ひとりの俳優が演じる命は、6つの時代を別の人物として転生し生き続けていたのです。そして最後に、安息地にたどり着いた。その遠い希望を感じて、私は安堵感を覚えたのだと理解しました。
この6つの物語には、共通のメッセージが込められています。
映画の監督を務めたウォシャウスキー姉弟がこれまでの作品に込めてきたメッセージとも共通します。
それは、「純然たる支配者への抵抗」です。
Matrix三部作では、仮想世界に捕らわれた人間の抵抗を描き、
V for Vendettaでは、全体主義国家と化したイングランドで抵抗者Vの活躍を描きました。そして、クラウドアトラスの6つの物語でも
「アダム・ユーイングの太平洋航海記」では、人種差別、拝金主義への抵抗を描き、
「セデルゲムからの手紙」では、階層社会、性差別への抵抗を描き、
「半減記 ルイサ・レイ最初の事件」では、保守主義と巨悪の暴力への抵抗を描き
「ティモシー・キャヴェンデッシュのおぞましい試練」では、社会的弱者の抵抗を描きます。
そして「ソンミ451のオリゾン」では、完全に統制された血も涙もない社会の到来を警報し、その先には、「ノルーシャの渡しとその後のすべて」が物語る、《すべての終わり》しかないと告げます。
でも最後に救済がありました。それは神の救済です。ノアの箱船です。純粋で素朴な心根の人間だけが救済され、新たな世界で文明を点すのです。
はたしてこの結末が、希望であるのか否かは分かりませんが・・・
最後に、
現状を良くしたい、幸せになりたいという意思や行動(抵抗?)は、その先に希望がなければ継続することは困難です。今の私たちに、(特に今の若者に)その様な希望が育まれているのかと、大いなる不安を感じます。
追伸。
ディヴィッド・ミッチェルさんの原作小説Cloud Atlasが、今年一月に、映画の上映に先立って邦訳本が出版されました。上下巻からなる長編小説でした。目方もたいそう重く、本に出会った当日は、歩きでしたので購入しませんでした。
いつか、行きつけの図書館で借りて、ゆっくりと読みたいと思います。
2013年3月21日木曜日
ロンドンの、はてなの茶碗
今朝の新聞に、枝雀落語でおなじみの「はてなの茶碗」をじでいく話が載っていましたな
見出しは、『3ドルが2億円!』です。
6年前に、ガレージセールで買った3ドル(約280円)の白磁器が、ロンドンの美術オークションで、なんと222万ドル(2億円)で落札されたというのです。なんでもこの白磁器、今から約1000年前の中国北宋時代の一品で、色、形、文様の同じ品物は、大英博物館にしかないという極めて貴重なお宝であると鑑定されました。
そしてこの白磁器、オークションでは20万ドルという高額で落札されると予想されていましたが、過熱な競売合戦の末、20万ドルを遥かに超える超高額なお宝に大化けしました。
さて、「はてなの茶碗」ですが、
ある若い油売りの男が、京都清水の音羽の滝のそばにある茶店で一服していたところ、側で同じく一服していた年配の紳士が、飲み終えた店の湯飲み茶碗をあれこれと眺めた末、
はてな?
と呟いたのを見て取って、その茶碗を、茶店の主人とすったもんだの末に、全財産の2両で茶店の主人から買い取ります。
先刻の紳士は、京の有名な茶道具屋の主人で、茶金さんと呼ばれる大変目利きの優れた御仁。この御仁のめがねに叶えば、500両、千両を手にできるとふんだ男は、さっそくこの茶碗を茶金さんの店に持ち込みます。
しかし、茶金さんから、はてな?の真相を聞かされます。
その茶碗はどこにでもある清水焼で、その上、水漏れする傷物でした。茶金さん、どこから水が漏れるのかと眺めてみますが、見た目にキズはなくうわぐすりも綺麗に塗られているので、はてな?と声を漏らしたというのです。
それを聞いた油売りは、すっかり狂信から冷めて、無礼を詫びて退散しかけたところ、茶金さんは、油売りの正直さと大胆さを面白がり、その茶碗を3両で買い取ります。
さてその後、茶の世界でこの話が大層面白がられ、ついには帝の知るところとなって、このはてなの茶碗は、千両の宝物に化けました。ある日、茶金さんの店の前を通りかかった油売りは、茶金さんに呼び止められて店に入ります。そして茶金さんから茶碗の顛末を聞かされ、そして500両という大金を手渡されます。
これで、めでたしめでたしであれば良かったのですが、すっかりお大尽となってしまった油売りは、今度は水の漏る大きな水壺を持って現れて、
「茶金さん~、十万両の金儲け持ってきた!」
でんでん
という噺です。
はてなの茶碗は、茶金さんの名声と帝の威光で、二束三文が千両に化けた。
白磁器は、いくら貴重なお宝であったとはいえ、3ドルが2億ドルに化けた。
洋の東西を問わず、狂騒はアホを生む、と可笑しさを覚えた噺でした。
でんでん
2013年3月18日月曜日
げんなりしています・・・
おはようございます。
今日は、春の嵐ですね・・・風が強いです。
寒暖の差の激しさに対応しきれず、体調の悪さが続きます。
花粉?アレルギーも酷い・・・
おまけに髭剃りで上唇を切って出血が止まらない・・・
朝というのに・・・げんなりしています。
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