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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2023年7月22日土曜日

宮崎駿監督作品を楽しんでいます。

 金曜ロードショーで久々に『もののけ姫』を観ました。冒頭で祟り神から死の呪いを受けた蝦夷の若者アシタカが、祟りの正体を求めて深遠な山野を越え旅をするシーンの、背景画と音楽が圧巻で、一気に宮崎駿監督が紡いだ叙事詩の世界に引き込まれてしまいました。

この『もののけ姫』のロードショーは1997年でした。ジブリの巧みなメディアミックス・プロモーションによって、『もののけ姫』はセンセーショナルな作品となり、封切りした映画館は、どこも軒並み立ち見が出る大盛況がロングランで続き、当時の日本の映画歴代興行収入記録を塗り替えました。

私もメディアミックス・プロモーションに大いに影響を受けたひとりで、書店で『もののけ姫』関連のムック本を購入し、大いに読みふけったものでした。

勿論、映画も観ました。立ち見でしたが、大いに感動した事を覚えています。


そして、先週から宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が公開されましたね。この作品は、一切のプロモーションが行われないばかりか、一切の情報が秘匿されたまま公開日を迎えました。

私は、公開初日の最初の上映で、この作品を観ました。まだ夏休み前の金曜日の朝でしたので、館内に子どもの姿はほとんどなく、宮崎作品を愛する大人の観衆が集った中で、上映は始まりました。

物語は、とても一回の視聴では受け止めきれない難解さがありました。でもこの難解さの中に、私はナルニア国物語の読後感に通ずるものを受け止めた様に思いました。

映像は、これまで見た事がないほどの疾走感と、印象派の絵画の様な静寂感の静と動に溢れていて、難解さと相まって、その美しさは際立っていました。

音楽も、ある意味非常に印象的でした。これまでの宮崎作品は双子の様に久石譲のサウンドトラックが存在していました。映像を見れば音楽が頭の中に流れ出し、音楽を聴けば映像が頭の中に流れ出すという具合にです。ですが今作品の久石譲のサウンドトラックは、まるでサウンドオブサイレンスの様でした。神秘的で緊張感を誘うサウンドで、見終わった後にメロディが残ることはありませんでした。

本編が終わって、米津玄師が歌う『地球儀』とエンドロールが流れる間、誰ひとり立ち上がる者はいませんでした。きっとみんな、同じ気持ちなんだろう、エンドロールから少しでも確固たる情報を拾おうと静かに躍起になっている、そんな雰囲気が漂っていた様に思います。

そして、公開から一週間、『君たちはどう生きるか』の公開第一週の興行収入は、ジブリ一の興行収入を記録した『千と千尋の神隠し』を超えたとニュースで読みました。


宮崎駿監督は、理屈や屁理屈が下地となって描かれるSFではなく、純粋な、古典的なファンタジー、夢想した世界を映像化して、私たちに届けてくれたのだと、今感じています。ファンタジーの世界は、無垢な心で堪能したいと思います。

これほどのファンタジーを描いて見せた宮崎駿監督には、死ぬまで筆を置かず、二度と引退は口にせず、新たな新ファンタジーを紡いでいってほしいと願うばかりです。