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差別の天秤

「愛を読む人」という約10年前公開の映画の、他の方が書いた映画評を読みました。 そこには私が考え及ばなかった、ハンナが隠し通した秘密についての考察が書かれいました。ハンナは文盲でした。そして、その事実を生涯隠し通しました。それは何故かです。 映画か原作小説の序章で、ハンナの...

2017年12月11日月曜日

オムライスの矜恃

日曜日、先日Facebook「播磨・はりまを食いつくし隊」グループに投稿された、たつの市のオムライス店に昼ご飯を食べに行きました。
昼をだいぶん回った頃です。それでも近くにあるマクドナルドの駐車場は満車状態で、ドライブスルーは数珠繋ぎの有様です。そこから県道5号線を一ブロック西に進んで、店を探す目印となるキリン堂に近づくと、すぐに見つかりました。プレハブ造りの小ぶりな店の白壁に「オムライス」と書いてありました。でも、なんというか人の気配というものをまったく感じない店でした。ドアを開けると中は暗く・・・、でも左側の厨房から一人のおっちゃんがすくっと現れて(様に見えて)、いらっしゃいと元気な声で迎えてくれました。
妻と二人、二つあるテーブルの奥に座り、目当ての500円オムライスを二つ注文しました。おっちゃんはプラスチックのコップに二つ水を運んでくれました。口を付けると、冷たくくっきりとした旨い水でした。先ほど紅葉谷を散策して汗をかいていましたので、体に心地よく浸みました。でも一つ気になることがありましたが、それも後で解決しました。
紅葉谷で撮った動画を妻に見せながら、しばし会話をして待っていると、カウンターに出来たてのオムライスが二つ並びます。そしておっちゃんがテーブルまで運んでくれました。写真で見た通りの、トロトロのオムライスです。デミグラスソースが掛かって、到底500円とは思えない、見た目も量の多さも食欲を満たしてくれるものに思えました。
トロトロのオムライスの卵を口に運びます。なんというか、洋ではなく和を感じる口当たりでした。あっさりというのでもない、ボリュームがあるのにさっぱりとした口当たりです。デミグラスソースも個性が強くなく、卵に丁度良い味加減です。
でも一つ気になることがありましたが、それも後で納得しました。
その辺りからです。おっちゃんの情熱大陸が始まりました。
おっちゃんは姫路で和の食に関係した仕事をしていたそうです。縁あって竜野でオムライスの店を開くことになり、周りの店がワンコインでランチが食べられることから、ワンコインのオムライス弁当店を標榜した店作りを考え、それでプレハブの小ぶりな店になったそうです。
そして500円オムライスの誕生秘話です。卵たくさん使ってますね、と話すと、卵たくさん使っていません、との意外な答えが返ってきました。だし巻きの様な出し汁も入っていない。当然ながら高い材料となるチーズも生クリームも入っていない。秘密は水、そして空気だと話します。だし巻きを上手に作るヒントは出し汁を多めに加えることだと話します。その要領で出し汁の代わりに水を加え、よくかき混ぜて空気をふんだんに含ませる。
そして鉄のフライパン(昨今のテフロン加工のフライパンは駄目というこだわりがあって)で卵が固まらないように焦がさないように半生の状態で焼き上げて、そしてあらかじめ皿に盛ったライスの上に被せるのでは無く、フライパンの中でライスに巻き付けてから皿に盛り付ける。ファーストフードの様に注文を受けてすぐにお出しするというまねはできないけれど、手間を掛けて美味しい料理をお出しする。
そいいうこだわりというか矜恃を持って9年間続けてきたと話します。

食べ終えて、おっちゃんがコップの水のおかわりをしてくれてからも情熱大陸は続きます。
この水は水差しに氷とカットしたレモンを入れている、と話します。一杯目にはレモンを感じなかったけれど、話を聞いた後の二杯目はレモンをしっかりと感じる事ができました。くっきりとした旨い水の正体が分かりました。そしてコップに浮いていたものの正体も判明しました。
ライスは少しべとついたものになっている。卵が焼けすぎずにフライパンの中でライスを巻き上げるためのアイデアだと話します。
そして自分が作るオムライスは、口に後味を残さないと話します。
お客さんの中には、もっと味の濃いものを好まれる方もおられます。でも迎合はしないと話します。昨今の店舗紹介サイトから出店の営業がきたけれど、頑張らない、迎合しないが信条で全部お断りをしています。それでもお客さんがSNSに投稿した写真を見てたずねてくれるお客さんがあることに本当に嬉しく思うとも話します。
帰り際、定休日を訪ねると、定休日は設けていないとの話します。お客さんがふらっと訪ねてくれたとき閉まっていたら、大切な縁をみすみす失うことに繋がってしまう。それが嫌だから定休日は設けていないと話します。そしたらおっちゃん、年中無休とたずねると、休むときは休むとはぐらかされてしまいました。どこまでも自由でおもろいおっちゃんでした。大盛りは700円でした。今度は持ち帰りしたいと思います。


p.s.
オムライスといえば、先日訪れた東大阪八戸ノ里の布施警察署近くにあったカフェ樫の木の事も書かなければなりません。
昼をすっかり回った時間、枚岡公園散策ですっかり腹ぺこになった腹を押さえながら歩いていて、店先の700円オムライス、珈琲付きが目に留まり、その店に入りました。
入ると長いカウンター席があって、その奥にテーブル席が見えました。店には私よりも年上の三人のマダムがいて、掃除や午後の準備をされていたように見えました。私はこの三人のマダムが三人の魔女に見え、邪魔としりながら、いつでも逃げられる様にと、入り口に一番近いカウンター席に着きました。
珈琲を先にお願いしました。珈琲はおしゃれな白いカップに淹れられていました。目の前で調理されるオムライスの進捗を見ながら珈琲を頂きました。珈琲は香りよくとても美味しかったです。先にカップに入ったスープが出ました。火傷しそうなほど熱々のスープでしたが、顔をしかめながら飲み続けました。さっぱりとした味付けのこれまたとても美味しいスープでした。そしてようやくメインのオムライスが目の前に置かれます。スプーンで卵とライスをすくい口の中に放り込むと無茶苦茶熱い、顔をくちゃくちゃにしながら、それでもどんどんと口の中に運び続けます。このオムライスも滅茶苦茶に美味しかったです。特にライスは、これまで食べたオムライスの中で一番ではないかと思うほど美味しかった。しっとりさ、しっかりさ、チーズとトマトの風味もふんだんに味わえました。
食べ終わって、ほんと感謝の気持ちでご馳走様と手を合わした次第です。
弁解しなれればいけません。三人のマダムを三人と魔女と喩えたことを・・・
要するに、店内が少し薄暗く、カウンター席がメインであったことからラウンジの様な雰囲気で、飯に入ったところは飲み屋だったと最初勘違いしたのです。三人のマダムは化粧も濃く、服装も派手でしたので、入る店を間違えたと思ったのです。でも食べ終わって、その思い全否定致しました。三人のマダムの頭と思われるマダム頭は、とても言葉が暖かく、料理とともに短い時間でありましたが、ちょっと疲れた体をしっかりと癒やしてくれました。また八戸ノ里に出向くことがあったたら、必ず寄ろうと思います。

2017年12月10日日曜日

侘び寂びの世界、紅葉谷

竜野の紅葉谷を訪れました。紅葉はすでに見頃を過ぎ、谷の小径は落ち葉で埋め尽くされていました。日曜日の昼間というのに、とても閑散としたその小径を、古い石灯籠のある峠まで登りました。落ち葉のじゅうたんは、踏み込む度にサクサクと心地よい音を発し、奥へ奥へと進んでいくほどに、風の音、枝のそよぐ音、そして鳥たちの鳴き声音が下界の喧噪をかき消してくれました。
心がどんどんと静かに、そして澄んでいく様な気持ちがしました。紅葉谷は侘び寂びの世界に思いました。素敵でした。