播磨の国ブログ検索

映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2022年11月5日土曜日

常福院露台から眺めた深秋の絶景

 義兄の満中陰法要で、瑠璃寺の常福院を訪問しました。法要後に、境内や露台から一望できる深秋の絶景をしばし堪能しました。そのパノラマは当然スマートフォンのカメラの画角に収められるものではありませんが、一部分だけ切り取り持ち帰りました。



2022年10月30日日曜日

アインシュタインの提起「人間を戦争の頸木から解き放つことはできるのか?」

「ひとはなぜ戦争をするのか」というタイトルの講談社学術文庫があります。

この本には、1932年に現在の国際連合(United Nations)の前身組織にあたる国際連盟(League of Nations)からの求めに応じ、アインシュタインが提起した「人間を戦争の頸木から解き放つことはできるのか?」という問題で、A.アインシュタインとS.フロイトという二十世紀の知の巨人が意見交換した書簡の文面が収められています。

当時を振り返ってみましょう。
現在、私たちが世界史で習う「第一次世界大戦」(1914-1918)の終結後、再びこの様な悲惨な大戦争が起こらぬように持続的な平和を模索する為の組織、国際連盟(1920-1946)が創設されました。しかし、大戦争で荒廃したヨーロッパの国々の中からファシズムやナチズムという狂信的なナショナリズムが現れ、ヨーロッパは再び大戦争に向かう暗雲が立ちこめ始めていました。
ドイツ人であるアインシュタインは、ナチスドイツが掲げるユダヤ人排斥(最終目的は絶滅)運動から逃れるために、この年、ドイツを離れました。
そして、国際連盟の求めに応じて、当時すでに心理学者として名声を博していた年長者で同じユダヤ人であるオーストリア人、フロイトを指名して、「人間を戦争の頸木から解き放つことはできるのか?」という命題で往復書簡を交わしました。

時代は繰り返されるのでしょうか。この往復書簡が交わされた時代背景と、現在、私たちが直面している時代の背景は、非常に近いものに感じられます。

ナチスドイツは、隣国オーストリアの併合を目指して、オーストリア国内のドイツ語圏の人々が迫害を受けている等々の様々な秘密工作を行い、1938年3月に遂にオーストリアを併合してしまいます。そして1939年9月にポーランドに軍事侵攻したことが発端となり、第二次世界大戦が始まりました。
2014年のクリミア併合に始まり、今年2月ウクライナ全土を併合しようと侵略戦争を始めたプーチンロシアが重なります。
また、事実上先進国となった中国には、先進国としての責任、世界の平和的安定に貢献するという責任を期待していましたが、指導者である習近平が独裁者に変貌し始め、隣国台湾を武力併合する構えであることを明らかにしました。習近平中国は、日本の沖縄も中国のものであると吹聴し始めています。海洋側への侵攻は、当然、日本全土も視野に入っているでしょう。

では私たち平和を望む者の現代の敵は、ロシアでしょうか。また、中国でしょうか。これには明確に否を唱えます。ロシア人も中国人も、家族、友人、隣人を大切にする私たちと同じ、平和を望む人たちです。
問題なのは、彼らの上に立つ独裁者の指導者です。独裁者は、外だけではなく内にも牙をむきます。刃向かう者、従わない者は非情に責められ、最悪の場合、殺されます。また、メディアをはじめ、学校や教会などを手中に収めて、妄言や偽りを国民にすり込んで洗脳します。つまり鞭と嘘で国民を無理矢理に従わすのです。

だからでしょうか。
アインシュタインとフロイトの深い考えは、心に沁みます。しかし、一度や二度読んだ程度で沁みるほど容易いものではありません。
私など、何十編も読み返していますが、それでも、深い考えの周辺を彷徨いているだけなのかもしれません。
だからでしょうか。
もし、この書簡を読んだことのない人がいるなら、是非手元に求めて、読んで欲しいと思います。そして、ともに考えて欲しいと思います。

返信にあたるフロイトの書簡には多くの意見が述べられています。
その中から二つ、ここに記したいと思います。

「人と人の間の感情と心の絆を創り上げるものは、すべて戦争を拒むはず」

感情の絆、一つは、愛するものへの絆のようなもの
宗教で言われる「汝、隣人を汝の如く愛せよ」
二つ目は、一体感や帰属意識によって生み出されるもの
人と人の間に大きな共通性や類似性があれば、感情レベルでの結びつきも得られる
こうした結びつきこそ、人間の社会を力強く支える。

「優れた指導者を作り上げる努力をこれまで以上に積み重ねていかねばならない」

自分の力で考え、威嚇にも怯えず、真実を求めて格闘する人間。
自立できない人間を、正しく導く人間。
そうした人たちを育成するために、多大な努力を払わなければならない。
政治家が力尽くで国民を支配したり、教会(学校)が国民に自分の力で考えることを禁止したりすれば、優れた指導層が育つ筈がない。

アインシュタインからフロイトへの手紙の一部朗読です。