今年、最初に買った本は、サルヴァドール・ダリ著『私の50の秘伝』です。
1月2日、妻の実家を訪問し、ご馳走を頂いた帰りに西飾磨にある楽学書館に立ち寄りました。入り口右側が私のお気に入りのコーナーです。コンピュータ関連書籍棚、カメラ・写真関連書籍棚そして絵画関連書籍棚があるからです。
昨年、BSのあるドキュメンタリーで、ダリ『十字架の聖ヨハネのキリスト』の制作秘話が語られました。それまでダリというえば、ヘンテコな髭を生やした怪しげな絵描きとしか思っていませんでしたが、量子物理学から宗教学までとても幅広く造詣の深い天才である事を知りました。そして、天上からキリストを見下ろすという大胆な構図の作品『十字架の聖ヨハネのキリスト』に魅せられました。それが頭に残っていたのでしょう、絵画関連書籍棚を探っていて、ダリの作品集と、この本『私の50の秘伝』に目が留まりました。
ダリはシュルレアリストの先鋒とされますが、このシュルレアリズム、日本語では超現実主義と訳されるようですが、なにやらよく分かりません。分からないからまた興味を引かれます。もう少し平たい説明がありました。
『一般的に、シュルレアリスムにおいては現実離れしているという印象を受けがちであるが、日本語訳からもわかるように「超現実」、すなわち現実の上位に存在している概念で、無意識における心象風景を捉えるところに重きを置いている。そのため、一見すると現実離れしている様に見られるのである。』これもまたとても難解な説明です。
ダリの絵画作品集を開いてみますと、なかなかの幻想的な絵ばかりです。しかし、どの作品も非現実的な描写なのですが、色鮮やかで躍動感があり、生命の宿りを感じます。ただ絵画作品集はあまりにも高く、あきらめて、『私の50の秘伝』のみ購入しました。
この『私の50の秘伝』は、1947年、ダリ43才の時に書いた11冊目の著書であり、画家を目指す者へのダリからの有名画家になるための心得が示されていると、本の扉に書かれています。因みに、まだ《まえがき》しか読んでいません。これから少しずつ読んでいこうと思っています。
そして本題に入ります。あまりに強引かもしれないので、先に謝っておきますね。
昨日の夜は、家族で金曜ロードショーを観ました。作品は宮崎駿監督作品『ハウルの動く城』でしたね。2004年の作品で、これまでも何度か鑑賞しているのですが、もう一つぴんときませんでした。第一次大戦時のヨーロッパ、特にドイツを彷彿させる異世界の国の物語です。そして宮崎作品によく登場する空の戦艦が登場し、美しい中世の町並みの中に不穏な空気が漂っています。そして何より特長的なのが魔法が世界を司っている事です。魔法使いが登場し、悪魔が登場し、悪魔と契約した悲しき人間が登場します。
そしてこの『ハウルの動く城』は、前作品『千と千尋の神隠し』同様に極彩色に描かれています。人の住む風景・建物はありそうなんだけど、その色彩はありえない。そう超現実的、シュルレアリズムに溢れているのです。そして、そのあり得ない世界で、悪魔と契約した魔法使いの弟子(ハウル)と、荒地の魔女の魔法によって老女に落とされた、本当はうら若き乙女(ソフィー)が恋に落ちます。ありえないやろう、ありえないやろう、と唱えながら観ていますと、ふと気づきます。ずっと前、ハウルがまだ少年だった頃に二人は出会い、ハウルはソフィーを守るために、悪魔と契約しておぞましい力を得たことに気づきます。でも一番あり得ないのが、ソフィーのバイタリティです。老婆に落とされてからのソフィーはバイタリティが溢れでて、ハウルもカルシファー(ハウルが契約した火の悪魔)、荒地の魔女、そして魔法使いのマスターサリマンまでも魅了してしまうのです。
もしかしたらうら若き乙女にこそ尊大な魔法が備わっていると、物語は主張しているのかなって思います。
そして、この『ハウルの動く城』を見終わって、すこしだけシュルレアリズムが分かったように感じます。
さあ、これからゆるゆると『私の50の秘伝』を楽しみたいと思います。