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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2013年3月21日木曜日

ロンドンの、はてなの茶碗


今朝の新聞に、枝雀落語でおなじみの「はてなの茶碗」をじでいく話が載っていましたな
見出しは、『3ドルが2億円!』です。
6年前に、ガレージセールで買った3ドル(約280円)の白磁器が、ロンドンの美術オークションで、なんと222万ドル(2億円)で落札されたというのです。なんでもこの白磁器、今から約1000年前の中国北宋時代の一品で、色、形、文様の同じ品物は、大英博物館にしかないという極めて貴重なお宝であると鑑定されました。
そしてこの白磁器、オークションでは20万ドルという高額で落札されると予想されていましたが、過熱な競売合戦の末、20万ドルを遥かに超える超高額なお宝に大化けしました。

さて、「はてなの茶碗」ですが、

ある若い油売りの男が、京都清水の音羽の滝のそばにある茶店で一服していたところ、側で同じく一服していた年配の紳士が、飲み終えた店の湯飲み茶碗をあれこれと眺めた末、
はてな?
と呟いたのを見て取って、その茶碗を、茶店の主人とすったもんだの末に、全財産の2両で茶店の主人から買い取ります。
先刻の紳士は、京の有名な茶道具屋の主人で、茶金さんと呼ばれる大変目利きの優れた御仁。この御仁のめがねに叶えば、500両、千両を手にできるとふんだ男は、さっそくこの茶碗を茶金さんの店に持ち込みます。
しかし、茶金さんから、はてな?の真相を聞かされます。
その茶碗はどこにでもある清水焼で、その上、水漏れする傷物でした。茶金さん、どこから水が漏れるのかと眺めてみますが、見た目にキズはなくうわぐすりも綺麗に塗られているので、はてな?と声を漏らしたというのです。
それを聞いた油売りは、すっかり狂信から冷めて、無礼を詫びて退散しかけたところ、茶金さんは、油売りの正直さと大胆さを面白がり、その茶碗を3両で買い取ります。

さてその後、茶の世界でこの話が大層面白がられ、ついには帝の知るところとなって、このはてなの茶碗は、千両の宝物に化けました。ある日、茶金さんの店の前を通りかかった油売りは、茶金さんに呼び止められて店に入ります。そして茶金さんから茶碗の顛末を聞かされ、そして500両という大金を手渡されます。
これで、めでたしめでたしであれば良かったのですが、すっかりお大尽となってしまった油売りは、今度は水の漏る大きな水壺を持って現れて、
「茶金さん~、十万両の金儲け持ってきた!」
でんでん

という噺です。

はてなの茶碗は、茶金さんの名声と帝の威光で、二束三文が千両に化けた。
白磁器は、いくら貴重なお宝であったとはいえ、3ドルが2億ドルに化けた。
洋の東西を問わず、狂騒はアホを生む、と可笑しさを覚えた噺でした。
でんでん

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