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不寛容にもほどがある!

現在の日本社会を支配する倫理観では不適切として烙印を押されてしまう、昭和ど真ん中の言動や行動で生きている中年の男性教師を主人公にして、現代にタイムスリップした主人公が、誰かが不適切だと呟けば社会全体が盲目的に不適切を糾弾する不寛容な現代の日本社会の有り様に喜劇で一石を投じる、宮藤...

2012年12月25日火曜日

とっておきの心温まる物語『十二番目の天使』


クリスマスに、とっておきの心温まる物語を紹介します。
オグ・マンディーノ作『十二番目の天使』(原題:The Twelfth Angel )です。

※朗読動画を作成しました(2017/1/31)


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ジョン・ハーディングは、死のうとしていました。最愛の妻アリーと最愛の息子リックを事故で突然に失ったからです。そして、コルト45に弾丸を詰め銃口をこめかみに当てて引き金を引こうとした時、窓の外からジョンを呼ぶ、自殺を押しとどめようとする声が聞こえます。声の主はリトルリーグ時代からの大切な親友ビルでした。

ビルは、家に引きこもるジョンをある場所に連れ出しました。そこは二人が野球と出会った場所、町の小さな野球場でした。そしてひと夏の間、リトルリーグのチームの監督を引き受けてくれないかと依頼をします。そのチームは、かつて二人が所属したことのあるエンジェルズでした。

土曜日、チームの選抜テストがありました。子供たちのほとんどは野球の心得がありました。でも一人だけ、体が小さく走りは遅く守る事も打つことも全くできない男の子がいます。11才のティモシー・ノーブルです。でもティモシーはどんなにできなくても全然へこたれません。そしてなによりボールを待つ姿が亡き7才の息子リックとそっくりなのです。そしてジョンは、ティモシーを含めた12名のエンジェルを預かることになりました。

夏休み、新生エンジェルズのスタートです。小さなティモシーは守る事も打つことも全く上手になりませんが、それでも誰よりも一生懸命に練習に取り組みます。
ジョンがティモシーに声をかけると思わぬ返事が返ってきました。
「でも、毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどんよくなっているんです!」
そしてこうも言います。
「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」
この二つの言葉(暗示)は、ティモシーとママにいつも親切にしてくれる医者のメッセンジャー先生がティモシーに教えてくれたものでした。

そしてリトルリーグが開幕しました。エンジェルズの初戦は、優勝候補筆頭のヤンキースです。エンジェルズは互角に戦いました。ティモシーの「絶対、あきらめるな!」のかけ声がチームに浸透していたからです。ですが試合は、ティモシーのタイムリーエラーで取られた1点が決勝点となり、エンジェルズは負けました。
試合の後、エースのトッドがティモシーに近づき「俺たちはあきらめない。だいたい、これはお前が言い出したことなんだぞ。そうだろう?(ティモシー)あきらめるな!いいか」
ティモシーは目に涙を一杯浮かべながらも静かに頷きました。
夕暮れ、皆が帰ったグラウンドの、ライトの定位置にティモシーがひとり座っていました。
ジョンは自分の経験から、もしやと思いグラウンドに引き返し、ティモシーを見つけたのでした。ジョンはティモシーのグローブを受け取りました。それは、傷んでボロボロのグローブでした。これではまともにボールをキャッチすることができません。
ジョンはティモシーに一つの提案をします。
「僕の家に、子どもが使っていたほとんど新品のグローブがある。使うといいよ。」
ティモシーは、ジョンの子どもが亡くなっていることを知っていました。でもジョンの提案を受け入れて「すごく嬉しいです。もっとうまくなります。」と応えます。

エンジェルズは快進撃を続けます。チームには最高のチームメイト、そして応援団長のティモシーがいたのです。ライトの守備はずいぶん上手くなりました。ですが今だヒットが一本も打てません。そして時折、ふらついたり、言葉がが不明瞭になったりします。
毎試合ティモシーの応援で試合観戦する老人がいました。メッセンジャー先生でした。
ジョンはメッセンジャー先生と挨拶を交わします。そしてティモシーについて聞きました。
メッセンジャー先生は、すこし言葉を濁しながらも
「特に心配はいらないでしょう。子どもに特有の些細な問題があるだけです」と応えます。

そしてエンジェルズはシーズンを2位で終え、王者ヤンキースと優勝決定戦を行う事になりました。
ジョンはビルに感謝します。
「なあビル。お前は、俺の人生の中に、これ以上ないというタイミングで戻ってきてくれたよな。それで、俺が関わり合うもの、思いを巡らすもの、生きる理由となるもの、あの天使たちを、俺に与えてくれた。お前は、あの子供たちと一緒に、俺がもういらないと思っていたのも、俺の命、俺の人生を、俺のもとに引き戻してくれたんだ。」
ビルが応えます。
「俺も含めて、チームの全員が、少しは力になれたかも知れないな。でも、一人だけ特別な人間がいないか?ジョン」
「・・・・」
「あの、ちっちゃな天使さ。お前が一番に感謝しなければならない相手は、あのちっちゃな天使だろうな。あの子は俺たちみんなに、人生とはこうやって関わるもんだということを、会うたびに教えてくれたよ」

そしてヤンキースとの優勝決定戦が始まりました。ティモシーの母ペギーが初めて試合を観戦しにきていました。隣にはメッセンジャー先生が座っています。
試合の後半、ヤンキース一点リードで迎えたエンジェルズの攻撃は、一打同点の場面でティモシーです。エンジェルズのチームメイトは皆ティモシーの初ヒットを願っています。
そしてその願いは果たされました。打球は一二塁間を抜けていきました。ティモシーの初ヒットは貴重な同点打となりました。エンジェルズの勢いは止まりません、次打者が続いてヒットを放ちティモシーが勝ち越しのホームをふみました。
優勝です。トロフィーを持ったティモシーがジョンに駆け寄ってきます。ジョンは両手を伸ばしてティモシーを持ち上げ、その小さな胸に思わず自分の顔を押し当てました。そして、「お前はずーっとチャンピオンだよ!ティモシーずっとだ」と話します。

ジョンは、ひと夏の癒やしの休暇を終えて、仕事に復帰しました。多忙で充実した日常が始まりました。そして三ヶ月があっという間に過ぎ去った頃、メッセ-ジャー医師から一本の電話がありました。
メッセンジャー医師が、ジョンの自宅を訪れました。そして悲しい知らせを話します。
「ティモシーのことだよ。(夏の前に)ティモシーの脳腫瘍を発見したんだ。それは手術で取り除くこともできないし、薬で小さくすることもできない。」
「そしてペギーとなんども話し合って決めたんだ。ティモシーに普通の生活をさせ続けると、同じ年頃の子供たちと同じようにして、可能な限り生きさせたい。それがペギーの願いだった。そして、ティモシーには知る権利があると結論をだしたんだ」
「(母の愛情は)ティモシーをとても喜ばせた。でもあの子は一つだけ条件をつきつけた。
(もうすぐ死ぬということを)誰にも知られたくない。友だちに同情されたり、特別扱いされたりは絶対したくない。ほかのあらゆる11才と同じように扱われたいと・・・」
ジョンは愕然とします。小さな天使は、自分が死ぬという事を知っていたのです。そしてひと夏の間、大好きだった野球を必死でプレーし続けたのです。

ジョンはティモシーに会いにいきます。ティモシーは車椅子に座って眠っていました。ジョンがティモシーに顔を近づけ愛しく見つめていた時、ティモシーは目を覚ましました。
「監督、来てくれたんだ!僕、分かってたんだ!絶対来てくれるって!」
ティモシーは続けます。
「僕は夢が叶ったんだよ。僕、神様に祈ったんだ。シーズンの終わりまで野球をさせてください。それからヒットを一本打たせて下さいって。」
別れ際、ティモシーがジョンに願います。
「リックのために祈ったりすること、あるんですか?」
「ああ、いつも祈っているよ」
「僕のためにも祈ってくれる?僕が死んだ後で・・・」
そして
「僕が生きているうちに、また会いに来てくれる?」

ジョンはその約束を守った。その日以降、週五,六回のペースで家を訪ね続けた。感謝祭の日も、クリスマスも、元旦も、バレンタインデーも。
そしてティモシーは、四月七日に他界した。
ティモシーの墓にはこんな碑文が刻まれた。
「僕は、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめなかった!」

end

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今回、何度目の読書となったのでしょう。何度読み返しても、後半部、メッセンジャー先生がジョンに悲しい告白をするくだりから涙無くして読み通すことはできませんでした。

オグ・マンディーノさんの作品は、自己を啓発し、成功への動機付けが与えられるとして、多くのファンを獲得していますが、この『十二番目の天使』も御多分に洩れず、とてもシンプルな自己暗示メッセージが基調にあります。
ティモシーが発する二つの言葉です。
「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどんよくなっているんです!」
そして
「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」

「毎日、毎日、あらゆる面で、僕はどんどんよくなっているんです!」
章でも紹介されていますが、この言葉は、1900年の始めに自己啓発のリーダーとなったエミール・クーエの言葉です。彼は医者であり心理学者であり、ポジティブ・シンキングの生みの親であり、自己暗示が病を治し、人生を成功に導くと提唱しました。そして残した名言が
『「日々、あらゆる面で、私はますます良くなってゆく」という言葉を、毎日自分に言い聞かせていれば、本当にあらゆることが良くなっていく。』です。

「絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめるな!」
第二次世界大戦の最中、ナチスドイツの攻撃に劣勢であったイギリスの時の宰相ウィンストン・チャーチルがオックスフォード大学を巣立つ卒業生に贈った言葉です。

しかし、この『十二番目の天使』には、もっと大きなメッセージが含まれているように思います。それは、まさしく主イエスを彷彿する犠牲愛です。
主イエスは、人間の罪を購うために、この世に使わされ、そして人の罪(くびき)を背負いゴルゴダの丘で十字架の刑に処せられます。
この物語では、生きる希望を失ったジョンの前に、亡き息子にそっくりな、でも貧しくひ弱な、しかし生気に溢れた少年が現れます。でも少年には重い病があり、命に限りがありました。少年の純粋な生気は、真夏の太陽のように周りの人々に降り注ぎ、勇気を元気を授けますが、それと引き替えに少年は、周りの人々が抱える悲しみを抱いて静かに死に向かいます。
美しい物語ですが、決してこの悲劇は起こしてはならないと思います。

私たち人間は、クリスマスの聖夜、愛する者とともに、主の誕生日を祝う喜びを覚えますが、でも主が被った本当の約束(主の贖いによって人の罪が許されたこと)に感謝する者は、キリスト教信者でない限り、そう多くはないと思います。
私は、主の約束、犠牲愛に感謝するとともに、この様な悲劇が二度と繰り返されないことを願います。

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