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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年2月7日月曜日

スーザン・バーレイさんの絵本『わすれられないおくりもの』の朗読ビデオをYouTubeにアップしました。

約二ヶ月ぶりの書き込みとなります。

一昨日から制作に取りかかり、今日出来上がった、絵本朗読ビデオ(絵本題名『わすれられないおくりもの』)、YouTubeにアップしました。


この絵本は昨年11月に中古書店で購入したものです。
作者であるスーザン・バーレイさんが美術学校の卒業制作として創作された作品で、1984年に刊行、日本では1986年に初版が刊行されています。現在でも、スーザンさんの代表作品となっています。

原題は、"BADGER'S PARTING GIFTS" 直訳すれば『アナグマの分かち与えた贈り物』とでもなるのでしょうか、物語は、森の賢者というべき年老いたアナグマの死から始まり、森の仲間達の悲しみ、そしてそれぞれが、アナグマとの思い出、アナグマから授かった知恵や工夫を語り合い、アナグマを失った悲しみの冬を乗り越えて、互いに助け合い、励まし合って、アナグマとの楽しかった思い出と共に歩み出す春を迎えるまでが綴られています。

西洋の童話の多くに見受けられる神秘的なお話しではなく、文明の継承という哲学を物語の主軸に置かれている点で、他の童話とは一線を画す物語です。

また、死は悲しみばかりではなく、共に過ごした楽しかった思い出や、与えて貰った様々な事柄、この物語の表現を借りれば、大切な贈り物、忘れられない贈り物によって、私達は思い出や記憶と共に豊かに歩むことができる、という作者スーザンさんのメッセージが心を癒してくれます。


昨年末に、古い友人が逝きました。新入社員として同期入社し、数年後、互いに紆余曲折な人生を歩むことになり、二十歳代の終わりから会ってはいませんが、ただ葉書や手紙で細々と便りは取っていました。
昨年春、腫瘍が見つかり手術を行ったことを手紙で伝えられました。その後、根治治療を続け9月の始めに届いた手紙には希望が書かれていました。しかし、10月の終わり、最後となった手紙には、転移の事実と、家族にこれまでの又、現在の苦しみを吐きだしたことなどが綴られていました。

年が明けてから、訃報を受け、腹を割って話せる大切な友人を失ったことに、思う以上に落胆してしまいました。
暫くしてから、もうひとりの古い友人にメールで知らせました。
共通の思い出を持つ友人に伝えた事で、楽しかった思い出が遠い記憶の淵から甦りました。
また、生と死についても、改めて身近な事象として考える切っ掛けとなりました。
この絵本はその貴重なテキストの一つとなりました。

昨年末から体調が優れなかった事もあって、呆けた期間が長くなりましたが、ここに来て体調も安定し、また弱々しいながらも前に歩み出すその証として、また亡き友人への感謝を込めて、この朗読ビデオを作成しました。

今の私には何の背景もありませんが、これまでに学んだ事、探した事、考えた事を、精一杯、絞って記したい、伝えたい・・・、改めて始めます。

閲覧してくださる方へ、またどうぞ宜しくお願い致します。



追伸。
不死について、私のバイブルと呼ぶべき司馬遼太郎著『竜馬がゆく』、文庫本第四巻、物情騒然の章、86頁に次の記述があります。

不穏になってきた京の都で活動する竜馬を案じるおりょうとのやりとりです。
以下本文を引用------
「死ぬ? おれは死なんよ」
竜馬は起きあがった。
「でも、人間はみな死ぬものでしょう?」
「いやおれもだんだんこのごろわかりかけてきたのだが、つまりこういうことではないか」
竜馬は自分に話しているらしい。
「大和の三上ヶ岳という山は千何百年か前に役ノ小角という男がひらいた山だそうだが、その上に蔵王権現をまつるお堂があって、そこに役ノ小角がともして以来、千数百年不滅という燈明がともりつづけている。人間、仕事の大小があっても、そういうものさ。たれかが灯を消さずに点しつづけてゆく、そういう仕事をするのが、不滅の人間ということになる。西洋では、シビリ、シビリゼ・・・・・・」
竜馬は、文明(シビリゼーション)という言葉をいおうとしているらしい。
以上------

司馬遼太郎は、竜馬の口を通じて、人が起こす不滅なるものを記しています。
『文明』という燈明は、常に点し続ける人が在って不滅・不死となる、司馬さんは、短文『洪庵のたいまつ』でも同じメッセージを記されてきます。
私達、人の在りよう、在り方の答えが、希望がここに在るのだと思います。

13 件のコメント:

  1. 本当に素敵な朗読でした。
    心がこもっていて、暖かくて、自然で
    昨日初めて聞き、今日も聞いています。
    ありがとうございました。

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    1. 聞いて下さって、有り難うございます。

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  2. 初めまして。
    とても素敵な朗読ですね。
    私にとっても思い入れのある絵本なので、感激いたしました。
    さて、わたしも、朗読を長年やっておりますが、
    動画投稿の場合、著作権等は、どういう仕組みになっているのですか?
    何を調べてみても、明確な答えが得られません。
    多くの方が、ストーリーテリングを始め、読み聞かせ・朗読をされていますが、私もぜひ挑戦してみたくて・・・
    なにとぞ良きお返事いただけたらと思います。

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    1. 匿名さん、はじめまして
      コメントを書き込んで下さり有り難うございます。

      さて、動画投稿に関わる著作権云々についてですが
      どこまで許されてどこから許されないのか厳密に確認したことはありません。そして動画投稿の際は、YouTubeのポリシーに委ねています。
      公の判断に委ねているというのが実情です。

      ただ自主的な規制は行っているつもりです。それは
      ・公序良俗に反しないこと
      ・作品(絵、音楽、写真、文章)に対する敬意があること
      ・全くのコピーでなく、新しい作品として自ら制作したもの
      そして一番は、私がそれぞれの作品からインスピレーションを受けた、また感動したことを伝えること
      です。

      著作権を厳密に解釈するなら、すべてについて許諾を受けなければいけないのだと思います。でも私用の際、どこまで許されてどこから許されないのか、それはやはり個々人の道徳心に委ねられているのだと思います。

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  3. このコメントは投稿者によって削除されました。

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  4. はじめまして。とても素敵な朗読に心打たれているところであります。声色から穴熊の穏やかな優しさが伝わってくるような。

    この『忘れられないおくりもの』は小学校の教科書に出てくるくらい、有名なものですね。私も聞いた経験、教えた経験があります。

    ぶしつけな話ですが、ぜひ機会があれば、子供達にこの朗読を聞かせてやりたいとおもうのです。製作者様はいかがお考えですか?

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    1. Tomさん、お早うございます
      朗読動画の感想コメント、嬉しく読ませて頂きました。

      この朗読動画を子供たちに聞かせたい、という事ですが
      ご利用して頂けるなら、とても嬉しいです

      朗読動画は、自分のために作ってきました。
      絵本や物語などから受けた感動や印象を、素敵な絵や写真、音楽で表現することで、それを見聞きすることで、何度も感動や印象を呼び起こしながら、朗読ができると思ったからです。
      そして二つ目は、自分が受けた感動や印象を、朗読を聴いてくださる方に、伝えられたらという思いです。私自身、語りが上手くありませんが、絵や写真や音楽の力は信じています。
      ただ、朗読動画で使わせて頂いた、絵本や物語、自分が撮影したものでない写真、音楽の使用許可は取っていません。使用させて頂く個々の作品にリスペクトを感じながら使わせて頂いています。方便ではありますが、習作だと思っています。
      この点も、どうぞ考慮して頂ければと思います。

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  5. ですから、子供たちが引き継いでくれたらと思います。

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    1. 製作者様、お返事ありがとうございます。

      著作権等、確認をとらなければならないこともあるかとは思いますが、可能な範囲で使わせていただこうかとおもっています。

      重ねて感謝申し上げます。

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    2. Tomさん、こちらこそ有り難うございます。

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  6. はじめまして
    動画を見て、感動し、また、深く考えさせられました。
    動画を作られた、とのことで、すごいなぁと尊敬いたします。
    動画で使われた楽曲もとても素敵だなと思いました。
    とてもすてきな曲なので、曲名を教えていただけたら、幸いです。

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  7. はじめまして
    少し落ち込んだ時や、なんだかなぁとモヤモヤする時など、何回かこの動画を見て、考えたり、感動したり…動画を作ってくださったことに感謝の気持ちでいっぱいです。
    ご友人が亡くなられた、とのこと…心を開いて話ができる人というのは人生において、本当にかけがえのない存在だと思います。
    人は支え、支えられているのだなと改めて痛感いたします。
    私も、あなぐまのように、死を穏やかに受け入れる最期に憧れます。
    大切な日々、穏やかに過ごしたいですね。
    話が長くなってしまいましたが、楽曲がとても良かったので、是非曲名を教えていただけたらなと、思い投稿いたしました。


    Ps.司馬遼太郎、私も読みたいなと思います。

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    1. お返事、大変遅くなりました。すいませんでした。
      BGMで使わせて頂いた曲は、
      ギタリストJohn Williamsさん(スターウィーズなどの映画音楽作曲家と同名ですが、別の方です)の演奏による

      1.Waly Waly/Shenandoah Medley スコットランドの古い民謡で、日本では「悲しみの水辺」として知られた歌曲です。
      2.Tu Ca'Nun Chiagne イタリアの歌曲でしょうか?日本では「泣かないでお前」というタイトルだそうです。

      3.Scarborough Fair 映画「卒業」の挿入歌、サイモン&ガーファンクルの歌曲です。

      4.Over the Sea to Skye

      です。

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