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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2014年10月25日土曜日

「42~世界を変えた男~」を観ました。

先日、TVで「42~世界を変えた男~」(2013年アメリカ映画)を観ました。
人種差別が甚だしかったアメリカで、黒人として初めてメジャーリーグベースボール(以下MLB)出場し、後年英雄として称えられることになるジャッキー・ロビンソン選手の物語です。

大学卒業後、ニグロリーグで活躍するジャッキー・ロビンソン選手(以下ロビンソン選手)に、MLBの名門チーム”ブルックリン・ドジャース”のGMブランチ・リッキー(以下リッキー)が白羽の矢を立てます。
リッキーには、黒人に対して強い思い入れがありました。
一つは、MLBのさらなる発展のための潜在的需要として
もう一つは、過去の悔いを改めるためにです。
リッキーも若い頃、野球選手でした。大学で野球に励みMLBを目指していました。そのチームに黒人選手がいました。その選手はとても良い奴で、野球が上手かった。でも黒人というだけでMLBの門戸は閉ざされ、リッキーもまたその選手に善意の手をさしのべる事ができなかった・・・それが彼の悔いとなっていました。

ロビンソン選手は、野球が上手いだけでなく、当時黒人が甘んじて受けていた様々な差別に対して抵抗する強い意志がありました。その才能がリッキーの目に留まったのです。
そしてリッキーは、オフィスに招いたロビンソン選手に二つの約束を強く求めます。
「立派な紳士であり続けること、そして
差別的な攻撃を受けても、決して仕返ししない勇気を持つこと」

そしてロビンソン選手の戦いが始まります。それは差別との戦いでありました。
当初はチームメートですらロビンソン選手にあからさまな嫌悪感を示します。
そして人種差別意識の根強い地方のチームやファンからは命の危険を感じるほどの悪辣な差別行為を受けますが、それでもやり返さずに、チームの勝利の為に全力でプレーするロビンソン選手の姿勢に、チームメートだけではく世間の風向きも変わっていきます。
そして1947年4月10日、ついにメジャーリーグへのデビューを果たしたロビンソン選手は、その年新人王を獲得し、名実共にMLBのスター選手の道を歩んでいきます。
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現在、MLBでは4月10日をジャッキー・ロビンソン・デーと制定し、その日の試合に出場する選手、コーチそして審判の全員がロビンソン選手の背番号”42”を付けてプレーし、彼の偉業を称えます。
ロビンソン選手とリッキーの二人の偉業とは、MLBに長く存在した『カラーバリヤー』(有色人種をMLBに加えないという制度)を撤廃させたことです。『カラーバリヤー』を撤廃したMLBはその後、大きく飛躍しました。人種や国籍に関係なく多くの若者に門戸を開き、世界中からスター選手を発掘し、MLBの人気を世界的なものに押し上げることに成功したのです。

この映画では、特に印象に残ったシーンが三箇所ありました。すべて子どもが登場するシーンです。
一つ目は、ドジャースからオファーを受けたロビンソン選手が、たった一人でニューヨーク行きの列車に飛び乗った時のシーンです。
動き始めた列車に黒人の少年達が駆け寄ると、ロビンソン選手はその少年達の一人に白球を投げ渡します。白球を受け取った少年は、線路に耳をあて遠ざかる列車の音を聞きながら、ロビンソン選手と共に夢に馳せます。
二つ目は、悪辣な差別に苦しみ自信を喪失しかかっていたロビンソン選手に、リッキーが町で見かけた光景を語り聞かせるシーンです。
リッキーは、白人の少年が君のバッテングファームを真似して野球をしていたことを話します。
そして三つ目は、人種差別意識の根深い地方の球場でのシーンです。
大人達はロビンソン選手へ容赦ないヘイトスピーチを投げ付けていました。一人の白人の少年は、そんな大人達の姿に、父の姿に最初戸惑っていましたが、いつか父を見習い、回りの大人達に交じってロビンソン選手を口汚く罵ります。

この三つのシーンは、少年の純粋さを描いています。
少年は、目にした者が素晴らしければ、素直にヒーローに祭り上げて憧れ、真似をし夢に馳せる事ができます。
また少年は、それがたとえ悪意のあるものと直感しても、父や回りの大人の行動であれば、それが正しいと思い込み、一生懸命に悪意に染まります。

子ども達の純粋さがどこに向かうか?それは私たち大人が鍵を握っていることを、あらためて突きつけられた様に思います。

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