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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2015年6月26日金曜日

本当の恐怖の話

浦沢尚樹さんの極上スリラー「Monster」に関連する内容で、もう一件投稿します。

先日、「最強文化系コロシアム 天下一文道会」という番組で、メンタリストDaiGoさんと堀江貴文さんのババ抜き対決を見ましたが、その結末には驚愕しました。

5枚の数字カードと1枚のジョーカーカードを並べて、引き手がジョーカーを引けば攻守交代、そしてジョーカーを最後まで手元に残した方が負けという3セット勝負、
第1セットはメンタリストDaiGoさんの引き手で始まりました。
DaiGoさんは、堀江さんがカードを並べた心理を語りながら、立て続けに5枚の数字カードを引いて第1セットを奪います。
そして、堀江さんの引き手で始まった第2セットは、開始早々堀江さんがジョーカーを引き攻守交代、その後は第1セット同様にDaiGoさんが5枚の数字カードを引いてゲームセットとなりました。
驚愕のもとは、DaiGoさんがカードを並べるときにカードを引く堀江さんの心理を語り、ジョーカーをある場所に置いたことです。そして堀江さんはDaiGoさんに魅入られたように、ジョーカーを引きました。ゲスト一同、たぶんテレビの視聴者も全員唖然とした事でしょう。でもただ一人、堀江さんだけは別の感情に心が支配されていたことと思います。
「本当の恐怖」を味わっていたことと思います。

DaiGoさんは、まるでサトリの様でした。
サトリとは、人の心の中を見透かして、人の心を恐怖で支配し、最後は食い殺してしまうと云う伝承の怪物です。
DaiGoさんは、本物のサトリではないでしょうから、日々人間の心理と行動について研究を重ね、またターゲットの周到なリサーチと心理の誘導というテクニックを駆使して、堀江貴文という人物にサトリのマジックを仕掛けたものと思います。
でもDaiGoさんは、堀江さんが選ぶカードだけを見透かしただけでした。これがもし、堀江さんの心の中のすべて、決して表に出せない記憶、情報、感情、心の機微まで、晒されていたとしたら、堀江さんは生きた心地がしなかった事でしょうね。これこそ「本当の恐怖」だと思います。

そして、思い出したのが浦沢尚樹さんの極上のスリラー漫画「Monster」です。
金髪の美男子ヨハンは、人の心の中にある記憶や葛藤を見透かしては、心の奥深くまで進入し、人の逃げ場所を完全に奪って、最後には心まで完全に支配して操り人形に仕立てます。そして用済みになれば、その人が存在した証まで全て抹消し地上から消し去ります。ヨハンの悪行の手口は
①天使の様にして人々に近づき、記憶を奪い殺害する
②ターゲットを知る人々を①の手口で殺害し、ターゲットを孤独に陥れる
③周辺の人々から奪った記憶で、ターゲットに取り憑く
④ターゲットの心の中を見透かして、完全に支配する
⑤ターゲットを本当の恐怖に陥れて殺害する
であろうと思われますが、ヨハンは一切の痕跡を残さぬ為に本当のことは分かりません。
でも唯一一人、ヨハンの本当の姿を語った者がいました。
それは、ヨハンが完全なる自殺のために選んだユーヘンハイムに住むアルコール中毒の男です。男はヨハンの中に黙示録で語られる獣の姿を見ました。

そして、浦沢尚樹さんが描いた「本当の恐怖」を地で行く事件も、本当にありました。
オウム事件がそうですし、最近では尼崎連続変死事件です。この事件では首謀者と見られる女が留置場の中で自殺し、事件の真相は永久に分からなくなりました。この女の写真を見たとき背筋がぞっとしたのを覚えています。「完全なる悪」を見た思いがしました。

p.s.
何故に浦沢尚樹さんの「Monster」がこうも気になり出したかと云いますと、映画サイトで「Monster」のハリウッドでの映画化、もしくはテレビドラマ化というニュース記事を読んだ事からです。東欧が舞台の、とてつもない悪意が蠢く物語、絶対に日本では映画化できないと思っていた物語が、実写化される、かもしれないという期待が膨らみ、頭から離れなくなったのです。「Monster」のすべての物語を辿るためには最低三部作は必要です。もしも実現したら、数年間は「Monster」漬けになりそうです。

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