花摘む野辺に 陽は落ちて
みんなで肩を 組みながら
歌を歌った 帰り道
幼なじみの あの友この友
ああ誰か故郷を 想わざる
ひとりの姉が 嫁ぐ夜に
小川の岸で 淋しさに
泣いた涙の 懐かしさ
幼なじみの あの山この川
ああ誰か故郷を 想わざる
都に雨の 降る夜は
涙に胸も 湿りがち
遠く呼ぶのは 誰の声
幼なじみの あの夢この夢
ああ誰か故郷を 想わざる
母が寝たきり状態になってからは、毎朝 母の枕元で般若心経と曹洞宗の経典修証義、そして新約聖書マタイの福音書第4章から第6章を諷誦しました。その後に歌を歌いました。母は歌が好きでしたので、私に取っては懐メロ、母にとっては青春時代の流行歌であったであろう歌を歌いました。特に母に思いを込めて歌った歌があります。それが「誰か故郷を想わざる」でした。
この歌は昭和15年の流行歌です。日本から遠く離れた戦地の兵士の間で、望郷の念に刺さる歌として大ヒットしたそうです。母は15歳でした。飾磨という海ベに近い町で、三男五女の兄弟姉妹の五女として大家族に囲まれ、生涯の友となる女友だちとともに青春時代を過ごしていたのだと思います。その大好きな家族も大好きな友だちも、みんな既に彼岸の向こうに旅立って、母はひとり残されていました。そんな母に、この歌が少しでも慰めになればと思ったのです。
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