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「はだしのゲン」削除問題が私を突き動かします

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2012年9月27日木曜日

『かもめのジョナサン』、今も読んでいます。


以前のブログで、私のリックサックには古い一冊の本が入っている事を話しましたが、
『かもめのジョナサン』、今も読んでいます。

買って初めて読んだ頃は、何が何やらさっぱり分かりませんでした。
十代の中頃です。それまであまり本など読まなかったのですが、映画に夢中になり始めた頃で、映画雑誌や映画原作本等を読み始めていました。この『かもめのジョナサン』も映画化された原作本という理由で購入したものと思います。

モノトーンの、かもめが飛行する写真が多く配置され、写真集かとみまがうほどです。
物語は三部構成なのですが、全体でも100頁に満たない短編です。
それでも当時はまったく読み進める事が至難でした。その理由は私が余りにも淡泊に日常を過ごしていたからだと思います。汗をかいて努力して何かに熱中することも無く、何事もすぐに諦めて過ごしていました。ですからジョナサンの情熱に共鳴することが出来なかったのです。もう一つは知識の無さです。何故にこの本が欧米でベストセラーとなったか、当時の知識層の人々に支持されたか、その理由に共感するための知識も感性もまったく持ち合わせていませんでした。
今なら一つの説を唱えることが出来ます。それはジョナサンが聖書に書かれている救世主を模しているということです。
聖書の救世主は、人の子として生まれ、時の体制に疎まれながらも預言者として人々を導き、多くの弟子を育みます。そして人が持つ生来の悪を購うために一度殉じはしますが、復活を果たし、以後私たちの希望となって天の御座につかれます。
救世主を模したジョナサンは、情熱を傾けて生きる人たちの、心地よい希望なのだと思います。そして何度も挫折を経験した私にとってもジョナサンはかすかな希望となっています。


物語の要約です。
第一部、
かもめ族、彼らは食う為に飛び、日一日を生きながらえるというかもめの営みを、何千年何万年と繰り返していました。そのかもめ族の中に、風変わりな若きかもめが現れます。
ジョナサンです。彼は喰う事よりも飛ぶこと自体に喜びを見出しました。アクロバット飛行に熱中し、ハヤブサよりも速く飛び、渡り鳥よりも遠くに飛ぶ術を求めました。
ジョナサンには、《飛ぶことが我々かもめ族を自由にする》という信仰がありました。そしてその術を会得した時、偉大なかもめとして仲間達に迎えられると信じていました。ですがそれは間違いでした。ジョナサンはかもめ族の尊厳と伝統を汚した罪で追放されてしまいます。
ジョナサンは流刑の地《遥かなる崖》を越え、ひとり遥かな世界を目指します。
そして一生を掛けて飛行術の探求、そして飛ぶことの意味の探求に励みます。
ジョナサンは多くの発見を得、実に長く素晴らしい生涯を送ることが出来ました。

第二部、
ある日の夕方、二羽の光り輝くかもめが現れて、ジョナサンをもっと気高い世界、本当のふるさとへの導きます。
その世界にはジョナサンと志を同じくするかもめ達がいて、飛ぶこと、その意味の探求に励んでします。ジョナサンはサリバンという友人を得、そしてチャンという師を得ます。
ジョナサンは、最初、天国と思っていたその世界にも限界があることを知ります。時間と空間の壁です。しかしチャンの導きによって、時間と空間の壁を越える瞬間移動の術を会得します。それは信じるという強い思念の成せる技でありました。
チャンはさらなる気高き世界へと旅立ちました。そしてジョナサンは、地上に置き去りにしてきた思いを巡ります。それは仲間達をもっと豊かに出来るのではという優しさと、そしてジョナサンと同じく飛ぶことの意味を知ろうと苦闘している者の導き手になりたいという愛でした。そしてジョナサンは地上に戻ることを決心します。

第三部、
ジョナサンは、《遥かなる崖》に向かう若き追放かもめフレッチャー・リンドを認めます。
ジョナサンはフレッチャーを一番弟子として、《遥かなる崖》の追放かもめ達の導き手となって希望を与え、探求を促します。
そしてジョナサンは、彼ら弟子を伴って群れに帰る事を決断します。
群れの中の次なるフレッチャーに手をさしのべる為です。
群れの中に戻ったジョナサンは、さらに良き導き手となって弟子達を指導しました。その様子を遠巻きに見ていた群れの中の若きかもめ達もジョナサンの話に耳を傾け、やがて一羽一羽と群れの境界線を越えてジョナサンのもとへと集まってきました。
ある日、一羽のかもめカーク・メイナードがやって来ました。カークは傷ついた翼の為に飛ぶことが叶わなかったのです。ジョナサンは『君は自由だ』と告げます。その一言でカークは大空に舞うことが出来たのです。その奇跡を見た群れのかもめ達に《群れの掟》はなきものとなりました。ジョナサンはかもめ達に告げます。
『正しい掟というのは、自由へ導いてくれるものだけなのだ』と。

ジョナサンは、この世界から旅立つことをフレッシャーに告げます。
そしてジョナサンは、フレッチャーに導き手となることを命じます。
それはジョナサンが悠久の時間の中で学んだ愛の伝達でした。

ジョナサンは、他の世界のフレッチャーの導き手となる為に旅立ちました。
フレッチャーは、ジョナサンと過ごした時間の中で学んだ事柄の意味をかみしめながら、愛についてさらに深く学んでいきました。

end

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