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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年10月21日金曜日

スマートフォン・クライシス


昔、私達は一本の電話線で繋がる大切な人に、受話器を通して思いを伝えた。。。
15年以前に青春時代を過ごした方ならばこのニュアンスを受け止めてくださるだろう

この15年で電話は進化した。
携帯電話が普及し、次は多機能携帯電話、音楽が聴け、写真が撮れて、メールもできる。お財布としても利用できる。
そしてこの3年余りで劇的に普及しつつあるのがスマートフォンだ。
画面をタッチするだけで、インターネットが利用でき、様々な便利アプリやゲームアプリを利用することができる。

そして電話のある生活スタイルも様変わりした。
電話はもはや人を固定してつなぎ止めるものではなく、移動しながら利用することができる。しかしそれは、耳と口を主に使う道具から、目と頭もフル回転しなければ使えない高度な道具となった。

現在主流となったスマートフォンへの変遷である。

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この1ヶ月で、スマートフォン絡みの問題提起記事に3つ触れた。

一つ目は、
朝日新聞10月5日朝刊36面『[社会]アプリの陰で情報収集』である。

Apple社のiPhone以外のスマートフォンで主流となっているOS『アンドロイド』上で動く、個々のアプリに組み込まれた『アップログ』という隠し機能によって、スマートフォンの端末固有番号、スマートフォンで利用できるすべてのアプリの名前、アプリを利用した時間帯などのデータが1日1回、『アップログ』機能を作成した会社「ミログ」に送信される。
「ミログ」は、『アップログ』機能を組み込んだアプリ開発者にスマートフォン(端末)1台当たり月1円を報酬として支払い、そして受信した個人データから個人の年齢・性別・好きなアプリ等を推定した後、KDDI子会社で携帯電話向け広告を手がける「メディーバ」がスマートフォンの個人利用者毎に最適な広告を配信する。

問題視されているのは、利用者に存在が見えにくいうえ、どんな情報を集めて何に使っているか、わかりにくいこと。利用開始時には、端末の情報を送信して「広告配信の最適化などに利用」するという説明が表示され、拒否もできる。だが、すべてのアプリに関する情報を取得することや、性向の分析に利用されることはわかりにくい。

と記事は結んでいる。

ここで私達が理解しなければならないことは、
アプリは、プログラミング知識とアプリ開発環境がそろえば、だれでも作成でき、そのアプリによって、利用者が意図しないところで、スマートフォン内に保存されている個人データ・重要データを抜き取り、またスマートフォン自体を勝手にコントロール(この場合、データを特定先に送信する)することができる、ということだ。
テレビのニュースで遠隔操作の脅威に触れていたが、遠隔操作の子機とも呼べるアプリをスマートフォンに忍び込ませることによって、遠隔操作でスマートフォンに海外の有料番号に電話を掛けさせて高額な利用料を請求したり、またカメラ機能で盗撮するのである。これはまさに『今ここにある危機』なのである。
そしてもっとも大事は、スマートフォンは電話の進化でなく、パーソナルコンピュータの一形態である、ということだ。スマートフォンの音声通話機能も1つのアプリがその機能を担っていて、個々のスマートフォンは簡単に安易にネットワーク接続できるパーソナルコンピュータであるということである。

そして二つ目は、
『コンピュータウィルスの蔓延、そしてセキュリティの脆弱さ』である。

先に述べた様に、スマートフォンはパーソナルコンピュータの一形態である。
Microsoftの共同創業者であり現会長、そして現在世界でもっとも大金持ちであるビル・ゲイツ氏が16年前に書いた本『THE ROAD AHEAD (邦題:ビル・ゲイツ未来を語る)』で、ウォレットパソコン(財布サイズの手軽なパソコン)としてその出現を予言していた。

パーソナルコンピュータを利用される方であれば、コンピュータウィルスの脅威と、またウィルスを検知し駆除するセキュリティソフトが必須であることはご存じであろう。
セキュリティソフトはウィルス対策以外にも、インターネット上の悪質なサイトのアクセス禁止や、様々な分野の中から管理者(例えば親が)が利用者(例えば子に)に不適切と考える分野のサイトのアクセスを禁止することができる。
但し、ウィルス対策もセキュリティ機能も、侵略の進化と防人の進化がイタチごっこで、100%の安全はあり得ないのが実情である。

では、スマートフォンというパーソナルコンピュータを利用されている方で、セキュリティソフトをインストールされている方はどれくらいおられようか。
大方のスマートフォン利用者は電話の進化系との錯覚からセキュリティを考慮されていないのが現状ではないかと思う。

スマートフォンはさくさく動く。ユーザインターフェース(利用者の使いやすさ)機能に特化しているからである。それ以外の大切な機能は脆弱である。
それに比べて従来型のパーソナルコンピュータは、その起動やアプリケーションの実行に時間が掛かる。それはOS(Windows等)が、ユーザインターフェース機能以外にも、様々なハードウェア制御、ソフトウェア制御、ネットワーク通信制御そしてデータ保全機能、一部のセキュリティ機能を担っているがためである。これだけの機能があってもセキュリティは万全ではないのが実情である。

この様にセキュリティが非常に脆弱なスマートフォンには個人情報が山盛り詰まっている。利用者個人を特定する情報から、電話帳データ(氏名から電話番号、メールアドレス)そして通話・通信履歴、お財布携帯機能を利用しておればクレジットカード情報までが外部にさらされているのである。
この秋、携帯電話(無線通信)会社は、新型携帯電話として8割方スマートフォンをラインナップし、また次世代高速無線通信3.9G(100Mbps以下)で、動画もゲームもインターネットもさくさく使える、をうたい文句にいっそうの普及を図ろうとしている。その広告からはセキュリティの重要さを唱える文言は一文もないのである。

携帯電話(無線通信)会社は、従来型のパーソナルコンピュータで顕在化した問題に対して、なんら対策を講ずることなく、携帯電話利用者を無法地帯に送り込んでしまったのである。

三つ目は、
『スマートフォン利用者が引き起こす接触事故多発』である。

駅のホームで、スマートフォンの画面を見入りながら歩く大人に、児童が蹴飛ばされて怪我を負ったという事件である。いずれ本人が、もしくは巻き添えを食らってホームから落下、等という取り返しがつかない事故、事件に繋がりかねない事態である。

最近、交通法規が改正され、悪質な自転車ドライバーにも法の網が掛かるようになった。近い将来、もしかしたら悪質な歩行者にも法の網が掛かる事態になるかもしれない。

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私達は、『便利だから』、『楽しいから』があらゆる事に優先されるべきでないことを知っている。しかし知ってはいるが、企業もそして個人も『効率さ』『速さ』という『安易さ』『容易さ』で決断し行動する風潮にすっかり毒された感がある。
企業のそれは、人という資産を工場の流れるラインの一装置程度と見なし、ラインが止まれば仕事を奪い、また業績の悪化は即工場閉鎖で、地域の雇用喪失や経済沈下などお構いなしだ。
個人においても、自己中心的で、そのくせに回りとの関係をつなぎ止めておかなければ不安で仕方がないのである。

手のひらにのるスマートフォンは、現在の私達が生きる世界の様々な問題の上に鎮座している。

smartphone、否
a smell of rotten phone
として、問題を喚起すべきではないか、と思う。

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