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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年10月22日土曜日

スティーブ・ジョブスのセンス


1990年代、私はMicrosoftの若きCEOビル・ゲイツのウォッチャーでした。
1993年、日本のWindowsパソコン黎明期(Windows3.1J発売)に当時最高性能のパソコンNEC-Mateを購入、以後日経パソコン、日経ネットワーク、日経ビジネス、日経Windows?等々の雑誌を読みあさっては、新しいハードウェアやソフトウェアの出現にワクワクしたものです。
その中心にあったのがWindowsであり、Microsoftであり、新しいWindowsが発表される度に基調講演で未来を語る希代のセールスマン、ビル・ゲイツその人でした。

私は1996年6月、Windows95の発表に合わせて、千葉・幕張メッセで開催されたWindows World Expo 96 Tokyoを視察しました。名目は、サーバ機で稼働する業務ソフトウェア製品の情報収集だったと思います。しかし本当の目的は、ショーの初日に予定された大ホールでのビル・ゲイツ基調講演を見ることでした。
これに先だって数週間前にラスベガスで開催された本家Windows World Expo 96 で演じられたゲイツ主演のライブが日本でもそのまま上演されました。
司会は、当時日本ヤフーCEOであった孫正義、本当に興奮したのを覚えています。
実は、誰よりも早く会場入りして、一番前の真ん中の席に陣取っていましたところ、係員が来て、前方エリアは招待客の席であるので、後方エリアの一般客席に移るよう促されました。

このショーで、私は運命的なソフトを手にすることになりました。
それは、Corel Photopaintです。静止画(写真)の加工・編集を行うソフトで、カナダに本社のあるCorel社がWindows上で動くDTP(印刷物を作成するソフト群)として開発・販売を始めたソフトです。

当時のDTPといえば、Apple社のMacintoshでしか動かないAdobe社のIllustrator、Photoshop、PageMaker?が市場を席巻していました。そして、これらはとても高額なソフトで、趣味で買えるようなソフトではありませんでした。

Corel社の製品ブースで、Corel社のDTP製品 Corel Draw(Adobe Illustratorに相当)、Photopaint(Adobe Photoshopに相当)等のプレゼンテーションを視聴した後、最後に行われたくじ引きで、なんとPhotopaintが当たったのです。Corel社の椀飯振る舞いでした。

1995年に民生品として世に出たデジタルカメラ初代機CASIO QV-10を持っていましたので、すっかりパソコンによるフォトレタッチにはまってしまいました。その後、Corel Drawを購入、イラストやレイアウトも学びました。
その後、長男が小学生の間の4年間、PTAの会報誌をWindowsDTPで制作し、WindowsDTPで入稿できる印刷所にE_mailで送り、Digital publishingを実践しました。当時まだWindowsDTPが完成されていない時期に、書籍を買いあさって、方法を調べての試みでしたが、仕上がった会報誌を見て、充実感を覚えたことを思い出します。

その反対に、一分野(この場合、DTP)に置いて市場を独占し、またとても閉鎖的に思えたApple(Apple社は、OSもコンピュータ本体も自社のみで販売)が好きではなく、クリエイティブな仕事をされるプロ御用達のAppleパソコンはこれまで使用したことがありません。(ちょっと触れたことはありますが。。。)


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スティーブ・ジョブスが逝去した後、彼を偉大なクリエーター、イノベーター、或いはエンターテイナーとして賞賛する声が止みません。
私もにわか信奉者となって、ジョブスが2005年スタンフォード大学卒業式で行ったスピーチをYouTubeで視聴しました。
そして、スピーチの主旨である3つの提言以外の、ある話にとても興味を引かれました。
それは、彼が入学したリード大学で学費滞納により最終的に退学するまでの半年間、カリグラフィー(西洋書道、美しく文字を装飾する技術)を学んだこと、そしてそれが後のMacintoshで世界で初めて美しい文字・フォントを搭載することに繋がったという話です。

当時、コンピューターは産業界に置いては、効率的なシステムを実現する道具でありました。学術分野においては高速演算装置です。ただ、XEROX社のパルアルト研究所には夢の技術が満載でした。Windowシステムしかり電子ペーパーしかりです。ですが、やはり効率的なシステムの対極にある芸術的な発想が基となった『美しく見せる』という技術の実現に思い至ったのはジョブスをおいて他にはいなかったと思います。

ジョブスのセンスが、その後の、クリエイティブな仕事においてコンピューターを欠かせない道具に押し上げました。
この実現こそが、ジョブスの第一の、そして最大の歴史的功績だと思います。

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