Amazonプライムで公開された今年上半期の話題作「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(原題:CIVIL WAR 2024年アメリカ映画)を観ました。
あまりにも真に迫った戦闘シーンの映像の連続で、これはドキュメンタリーではないのかと錯覚を覚えるほどでした。特にラストの大統領拘束のための首都ワシントンでの戦闘シーンの爆音と銃撃音は、きっと映画史に残る戦争の究極のリアリズム表現であったのではと感じています。
しかし、この映画のユニークなところは、アメリカ次期大統領のトランプを彷彿とする、憲法を無視して三期目に突入し、FBIを解体して独裁化に踏み切った大統領に対して、この大統領を排除するために幾つかの州が連邦政府から脱退して反逆軍を立ち上げ、連邦政府と戦争を始めた、南北戦争以来二度目となる内戦にフォーカスを当てたものではなく、学校を出たばかりの戦場カメラマンに憧れるうら若き女性カメラマンが、戦場経験の豊富な記者やカメラマンに随行しながら、いわゆる真の戦争カメラマンへと覚醒するまでが描かれた物語であったことです。
真の戦争カメラマン、私がすぐに連想するその人はロバート・キャパです。22歳のキャパはスペイン内戦に身を投じ、手持ちカメラのライカで、その後のキャパを決定づける一枚の写真を撮りました。「崩れ落ちる兵士」(Falling Soldier)と名付けられたその写真は、頭を撃ち抜かれて後方に崩れ落ちる兵士の、その一瞬を、至近距離にいたキャパがライカのファインダーで捉えシャッターを切り、その一瞬をフィルムの一コマに永遠に封じ込めたものです。キャパはその後も戦場を渡り歩き、戦場のスナップ写真を撮り続けました。そして1954年5月25日に戦場で地雷に接触し爆死しました。
この映画のラストシーンは、まさにキャパの誕生と死がモチーフになっていたのではと私は想像を巡らしました。
カメラのファインダーの魔力なのだと思います。どんな場所にいても、それがどんなに騒々しい場所でも、厳しい山岳の上でも、そして戦場でも、ファインダーを覗いた瞬間、ファインダーの向こうに映る被写体に全集中して、騒音も、寒さ暑さも、そして恐怖さえも消し飛んでしまうんです。そして考えることは、もっと迫りたい、だれも観たことのない角度で迫りたい、描きたい、一瞬を掴みたいと、一線を越えた冒険に身を委ねてしまうんですね。そう神のようになりたいと思ってしまうんですね。その究極が戦場カメラマンなのだと思います。一歩、その道に踏み込んだら最後、我に返った時の恐怖や後悔などで心が押しつぶされながら、病みながら、それでも麻薬のようにファインダーの魔力に抗えずに戻ってしまうんですね。
この映画は、そういうファインダーの魔力に取り憑かれた人間が描かれた、珠玉の映画だと私は思います。
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