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デモクラシーの国の、リーダーの有るべき姿

新型コロナウィルスのパンデミックは、私たちに一つ、とても重要な事を気づかせてくれました。それは「リーダーの有るべき姿」です。 デモクラシーを標榜する国家において 平時にリーダーに求めるものは、誰もが活躍することができる社会を作り、それが維持出来るように見守ることです。それに...

2024年8月10日土曜日

人間はこれでいいのか?

 8月6日夜に放送された「NHKスペシャル 原爆 いのちの塔」を観ました。

数十万の人間が生活する都市の頭上に、人類史上初めて投下された原子爆弾が炸裂して地上数キロメートルを一瞬で廃墟にした直後から、爆心地から1.5キロメートルの辛うじて全壊を免れた広島赤十字病院の医療従事者たちは、自らも大いに傷つきながら、次から次と運び込まれる原子爆弾によって重傷を負った人々の救急救命活動を開始しました。

このドキュメンタリーは、今年新たに見つかった、当時の病院長竹内釼軍医が書き記した手帳と601名の病床日誌を丹念に調べて、当時この病院で何があったのかを再現ドラマを交えて、時系列で辿るものでした。


これまでも、原爆を題材にした文学・絵本、長田新先生が編纂された作文集「原爆の子 広島の少年少女のうったえ」を読み込み、また映画「ヒロシマ」や数々の調査ドキュメンタリーを見てきて、原爆によって未曾有の被害を被った広島の人々が、その後も、アメリカから原爆の効果を調べるためのモルモットの様な扱いを受けたこと、同じ日本人から様々な差別を受けたこと等々を、学んで知っている気になっていました。

しかし、このドキュメンタリーを見て、広島赤十字病院で起こった出来事に戦慄を覚えました。

医療器具も物資も無いに等しい窮状を院長が世界赤十字に訴えたことがアメリカに利用されました。世界赤十字から医療物資を継続的に送ることを依頼された占領軍のアメリカは、「残留放射線や原爆の効果を調査する」という第一目的を広島の人々に悟られぬ為に、調査団を救済用の医療品を配布する名目で広島に送り込むことに成功しました。以後アメリカは自国の利益のためだけに広島をモルモットにして残留放射線と原爆の効果を調査し、その調査内容は、広島の原爆罹災者のために一切役立てられることはありませんでした。また、以後、約束されたはずの、継続的な支援は行われることもありませんでした。ここにはヒューマニズム、人間尊重という、彼らアメリカの建国の理念を、ひとかけらも感じる事が出来ませんでした。

そして、原爆投下から44日後の9月19日、GHQがプレスコードで原爆批判を規制してからは、日本政府は以後10年間、そして日本国内からの、諸外国からの、支援は一切広島に届かなくなりました。


広島赤十字病院には医療従事者として、原爆が投下される前、医師や看護婦、看護女学生など総勢501名が働いていました。原爆投下直後、250名が重傷を負い、その内の51名が死亡しました。そして一時も休む事の出来ない救急救命活動の中で、ひとつき後には、6名が過労入院し、262名が帰郷療養し、広島の医療従事者の不足は深刻な事態に陥りました。

病床日誌の記録によれば、原爆が発した放射能によって、医師たちは経験したことのない未知の症状に直面することになり、手も足も出ないまま、人々が次々と死んでいくのを見送り続けました。

そして原爆投下から63日後の10月8日、若い医師が病室で自殺しました。彼は以前に赤十字病院が広島の人々の希望となっていることを誇らしそうに院長に話していました。しかし亡くなる直前、彼は同僚に、「人間はこれでいいのか?人生とはなんなのか?」と打ち明けていたと云います。この言葉から、若い医師の絶望感が痛烈な痛みとなって伝わってきました。孤立無援、そして未知の脅威を前に無力であることの絶望、また自らも原爆罹災者であることから目の前の施しようのない患者を自分に置き換えたのかもしれない恐怖、想像しても、今の私では決して想像しきれない絶望に蝕まれたのだろうと思います。


そして、ドキュメンタリーの最後で、

今年6月24日、ウクライナ赤十字の医師たちが、「核兵器が使われた時、何が起きるかを知りたい」と、現在の広島赤十字原爆病院の知見を求めて訪問したことが記されていました。長崎を最後に、現実の戦争で79年間使われることの無かった核兵器が、ロシアのウクライナ軍事侵略により始まった戦争で、ロシアによる核兵器の使用が現実の脅威となったことが背景にあります。

日本が核兵器を保有していない国の中で、また唯一の原爆の被爆国として、原爆が引き起こす災いとその治療の知見を79年間積み重ねてきたことが、ウクライナに役立てられることには大いに意義を感じるとともに、核兵器の使用が現実の脅威となったことに落胆を覚えました。考えれば分かることですが、核兵器保有国は、決して公にはしませんが、日本よりもずっと進んだ知見を保有しているだろうと想像できます。しかしそういう知見は決して他国に明かされることはないでしょう。その理由でも、これは日本しか果たせない、悲しくも、他国を救う一助となる意義のある行為であると思いました。


日本は、いまはまだ戦時ではありませんが、ヒューマニズム、人権が非常に軽んじられる国への陥っています。日々、「人間はこれでいいのか」と思わずにはいられない、残酷、残忍な事件や問題が噴出しています。人権が尊重されない個人主義、自由主義、拝金主義が世の中に罷り通っています。その反動として、私たちが国家による厳しい規制や統制を強く求める事態が来るならば、100年前と同じです。国家権力が絶大なものとなり、国民の人権は奪われ、為政者の利益のための戦争が始まって、国民は戦争ゲームの捨て駒に成り果ててしまうでしょう。現在のロシアやイスラエルの様にです。


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