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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年6月15日金曜日

浄土寺で紫陽花、鑑賞してきました。


昨日は、小野市にある国宝浄土寺で紫陽花を観賞してきました。

浄土寺を訪ねたのは初めてでしたが、約800年前に創建された寺院は、簡素な美を留めた緑多き静かな寺院でした。
境内には蓮池があり、蓮の花が咲いていました。
浄土寺、その名の通り、浄土の世界が閉じられた空間に描かれていました。

そして寺院の裏手にある森に紫陽花が観賞できる回路がありました。

紫陽花はまだこれからが見頃という状態でしたが、木漏れ日の下に続く回廊には、光が描く陰影と、そして苔むした緑の路が続き、林の中からは鈴のねに似た軽やかな鳥の鳴き声が響いてきます。そこは現世を離れた世界、美しい世界でした。
紫陽花が咲き乱れる頃、そして雨の日に、またこの回廊を彷徨いたい、そう思いました。

しかし浄土を目指す道のりは、とても大変でした。
浄土にたやすくたどり着けるとは思いませんでしたが、いやぁ、心に迷いが生じ、時間以上に長い道のりとなりました。

徒歩ルートは、山電大塩駅-浜国(国道250号線)-山電曽根駅
-松陽中学-竜山-宝殿中学-加古川橋西詰左折
-加古川河川敷マラソンコース-塩尻橋東詰左折
-県道18号線-県道23号線-県道75号線
-浄土寺(約27㎞)

しかし、小野市に入ってからのルートで思い切り迷いました。
後で判ったことですが、県道23号線に見事に騙されました。なんと県道18号線と23号戦が交差する交差点が2カ所あったのです。一つが本来右折するはずの敷地町南交差点、そこまで到達すれば後は県道23号線を東に歩けば浄土寺でした。
ですが、随分前の市場交差点にも東に県道23号線が続いていました。これで錯覚し、浄土寺は近しと信じ東に歩を進めました。

国道175号線(小野バイパス)手前に消防署がありました。丁度消防士達が訓練中で、一団に道を尋ねますと、バイパスには歩道がないので歩くのは危険と言われました。そしてどうしても歩くのならバイパスに沿って2㎞ほど?北に歩くと天下一品が角にある交差点にでるので、そこを右折して歩くと浄土寺です、とアドバイスを頂きました。その時、一人の消防士が、以前MBSちちんぷいぷいのクルーも同じように歩いて浄土寺を目指していたが、どうして175号を渡ったのか?と不思議そうに話されました。私はその最後の言葉で、その道を進もうと判断しました。

バイパスの交差点の両角に、自動車では渡れない側道がありました。ああこの道や、と判断して側道に入り、そしてすぐにバイパスの下を抜けるトンネルがあって、そのトンネルを抜けて東にでました。
丘陵地帯、そして田畑がずっと向こうまで続いています。
バイパスの側道を上り下りしながら北に歩き続けました。いやぁこの時はホント、人気の無い山道で、ほんまにこの道でおおとるんかいな?と不安を抱きながらの歩でした。
そして漸く天下一品が見えました。それが本来左折するはずだった敷地町南交差点から続く道であったのです。

交差点を左折して県道75号線をしばらく歩きますと、浄谷町中交差点に
『浄土寺北へ1㎞』

という案内板がありました。
そして自宅を出てから5時間半、昼過ぎにようやく国宝浄土寺に到着できました。

何故に浄土寺を目指そうと思ったか、それは早朝のテレビ番組でした。浄土寺では丁度紫陽花がみごろという地元観光のニュースを見て、今日は浄土寺を目指そうと決めたのです。
でも北播磨は車で出かけることはあっても徒歩の道には暗いのです。もっとしっかりとルートを確認すべきでした。

でも本当の恐怖は帰り道でした。
”行きはよいよい帰りは怖い”
あれホンマでした。

歩き始めには、昼までに浄土寺を訪ねて、その後は加西周りで姫路に抜けて、そして夕方海を望んでから自宅に戻ろう、などと遠大な空想にふけっていました。でもそれは浄土寺までの道のりで見事に砕け、帰りはJRに乗って帰ろうと心変わりして、駅に向かいました。そして23号線を西にあるけば駅にたどり着くとふんで歩きましたが、小野市立図書館を過ぎても駅を案内してくれる標識がありません。
辻辻で、通り行く町人に駅を訊ねますと、めいめいが同じ方向を指して次のように話されました。
『歩くの、遠いよぉ』
『その道をずーつ真っ直ぐ歩くと駅にたどり着く』
『2~4㎞ほどかなぁ』
そしてこのアドバイスに実は錯覚してしまったのです、小野市には、加古川流域の東側を神戸電鉄粟生線が走り、西側をJR加古川線が走ります。そしてJR加古川線だけでも粟生、小野町、市場と駅が三つあります。だだっ広い丘陵地帯で、道は縦横に走ります。何本も同じ目的地を指す道があるのです。歩けども歩けども目的とする駅が見えないのです、そしてまた町人に訊ねると
『真っ直ぐです』
『2~4㎞ほどかなぁ』
との返事。

暑くて頭はボーッとしてくるし、そしてどんどん目の前が白く眩しく輝き始めました。
アカン、熱中症になりかけよう・・・
でも、そんな時、遠くまで見渡せる道にはひとっこ一人いませんでした。
立ち止まる事もできず、ただ歩き続けました。
そうしてふと気付けば、先に県道18号線との合流地点が見えました。小野の南外れまで歩いていたのでした。
手前に加古川を渡る橋があり、渡りますと、ようやくJR市場駅にたどり着きました。

5月の滝野行軍時は、両足裏にどでかいマメができて一歩歩く度に声なき悲鳴を上げていましたが、今回は全くマメができませんでした。それはそれで良かったのですが、市場駅にたどり着いた時は、もう疲労困憊で、目はチカチカして、目の前が真っ白く輝きます。目を閉じてじっと電車がくるのを待ちました。
待つこと30分、ようやく電車に乗り込みますと、一両編成のワンマンカーは満員で、休むことも叶わず、帽子を脱いでつり革に掴まっていますと全身から汗が噴き出してきました、また吐き気ももよおしてきました。
前には賢そうな少年が座席に座って算数ドリルを開いています。
その彼のかむる白い通学帽が受け皿に見えてきました。必死で我慢しました、当たり前ですが・・・

加古川駅に着き、神戸線に乗り換えて停車中の快速電車に乗り込み、ようやくゆっくりと座席に身を埋めました。車中は冷房がよく効いてとても涼しく、体は一気に休まりました。
このままずっと座っていたい、そうも思いましたが、二駅目、曽根駅で下車し、そして40分を掛けて家に帰り着きました。

道中、帰ったら冷たいビールを一気のみするんだ!そればかりを考えていましたが、
家に帰って、妻が湧かしてくれた風呂に入り、食べ残した昼の握り飯を食すと、そのまま崩れるように寝てしまいました。
あ~っ、しんどかったです。

しかし、梅雨の晴れ間の一日を楽しみ尽くした充実感に今、浸っています。


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