小・中・高そして大と全く勉強が好きではありませんでした。本を読まず、覚える事が苦手、自分は『読解力』『理解力』そして『記憶力』が劣っているという、何故かその様な劣等感を持っていました。
ただ、『算数』や『数学』だけは好きでした。『解く』という行為が面白かったのです。中学で覚える方程式であれば、万一公式を忘れてしまっても、数式を自分なりに崩して、また再構築して、答えを導く事が出来ました。
また、数学に関する出来事にもとても興味を引かれます。今朝もそうでした…
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今日の朝日新聞朝刊2面の『ひと』で紹介されている東京学芸大准教授の溝口紀子さん(Wow!、同い年です)が女性科学者に贈られる猿橋賞を受賞される事になったと伝えています。
以下、記事引用-----
数学者の仕事は二つある。誰もが知っている難問に挑戦することと、未知の興味深い問題を開拓すること。後者の業績で、28日に第31回の猿橋賞を受ける。
解析学の新興分野の一つで、劇的な変化を示す「爆発現象」を研究する。「不完全な爆発」に着目し成果を上げた。研究が進めば、「局所的な異常がやがて正常に戻るような現象について、数学的な法則を見つけられる可能性もある」。例えば集中豪雨を数式で描ける日がくるかも知れない。
その構想力に、「爆発」を45年前に発見した藤田宏・東大名誉教授(82)も「まれに見る数学センスと強靱な計算力」と舌を巻く。
研究者志望、ではなかった。お茶の水女子大の数学科は「暗記物が嫌い」だから選んだ。大学院は「就職はまだいいな」と考えて進んだ。今のテーマとの出会いは30歳代も半ば。「めちゃくちゃ遅いスタート。今、どんどん数学を好きになっている途中です」
授業で安易な「分かりません」は許さないが、挙手が多いと息抜きにジャンケンで順番を決める。サービス精神には自負がある。
趣味は子供のころたしなんだピアノと油絵。芸術も数学も、実利抜きで普遍的な価値を持つ点が似ていると思う。スポーツもそう。熱狂的なサッカーファンで、日本代表の岩政大樹選手はゼミの卒業生。ちょっと自慢だ。
(文・吉田晋、写真・河合博司)
以上、記事引用-----
GoogleやWikipediaで『猿橋賞』を調べてみました。
Wikipedia 猿橋賞についての記述
猿橋賞(さるはししょう)は、第一線で活躍する女性科学者を表彰する賞である。
地球化学者の猿橋勝子によって創設された。「女性科学者に明るい未来をの会」(1980年創立)から毎年、顕著な研究業績をおさめた50歳未満の自然科学の分野の女性科学者に「女性自然科学者研究支援基金」をもとに贈られる。賞金額は30万円。
と記されています。
猿橋勝子さんは既に没せられていますが、専門は「地球化学」で、1954年のビキニ事件(1954年(昭和29年)3月1日、マーシャル諸島近海ビキニ環礁で行われた水爆実験時、同海域で操業していた第五福竜丸の船体・船員・捕獲した魚類が放射性降下物に被爆した事件)におけるいわゆる「死の灰」による大気・海洋汚染の研究以後、三宅と大気及び海洋の放射能汚染の調査研究を行い評価されたと記されています。
数学のノーベル賞と言われるのが『フィールズ賞』です。
「フォールス賞は、ノーベル賞に数学賞がないことから、カナダ人数学者ジョン・チャールズ・フィールズ (John Charles Fields) の提唱によって1936年に作られた賞のことである。
4年に一度開催される国際数学者会議 (ICM) において、顕著な業績をあげた40歳以下の若手の数学者(4名まで)に授与される。
数学のノーベル賞といわれることもあり、数学に関する賞では最高の権威を有する。しかし、「4年に一度」「40歳以下」「4名まで」といった制限がついていることから、賞としての性格は異なる。すなわち、ノーベル賞は功成り名遂げたその分野の権威が受賞することが多いが、フィールズ賞はいままさに活躍中の数学者が受賞している。実際、ほとんどのフィールズ賞受賞者は受賞後にも著しい成果をあげている。なお、ノーベル賞は業績に対して贈られるので、一人で複数回受賞することも可能だが、フィールズ賞は人に対して贈られるため、複数回受賞することはできない。」と記されています。
『フィールズ賞』について、最近の興味深いエピソードとしては、アメリカのクレイ数学研究所が2000年に「ミレニアム賞問題」として発表した近代数学の中でも選りすぐられた7難問の一つ『ポアンカレ予想』を、ユダヤ系ロシア人数学者グリゴリー・ペレルマンが2002年から2003年にかけ証明した論文について、2006年の夏までに複数の数学者チームによる検証が行われた結果、証明に誤りがないと判断され、ペレルマンは、この業績により2006年にフィールズ賞を贈られましたが辞退、その後、隠遁生活に入ってしまいました。2010年クレイ数学研究所も7難問の一つ『ポアンカレ予想』を証明したと認定し100万ドルの賞金を授与すると発表したが、ペレルマンはこれも辞退しています。彼は現在、母親の年金で細々と暮らしているといわれていますが、これも定かではありません。
このエピソードについては、2007年に放映されたNHKスペシャル『100年の難問はなぜ解けたのか ~天才数学者 失踪の謎~』を観て知りました。
世界の名立たる数学者が挑戦し、それぞれが正気と狂気の狭間まで自らを追い込んで証明に挑み、ついには人生を狂わされていく『ポアンカレ予想』問題。その難問を当時30歳半ばで証明してしまったペレルマンの、その後の奇異な行動までを追ったドキュメンタリー。数学者達のインタビューで綴られていくこの物語には、得体の知れない存在が見え隠れし、その得体の知れない存在に恐怖と魅力を感じました。
1904年にフランスの数学者アンリ・ポアンカレによって提出された『ポアンカレ予想』。問題自体、何のことやらで、紹介する事すら不可能なのですが、番組の中で、ある数学者が言った『宇宙の成り立ちを証明ことになる』という人知を越えた神の領域に迫る、とても恐ろしく根源的な証明問題で、これは悪魔の誘いか?、とさえ思いました。
この証明問題が解かれたとして(解かれたわけですが)、私たちの生活が一変するわけではありません。いいかえれば、これは遠大なゲームなのです。
ゲームである『数学』には、この様に、人を虜にする魅惑があります。
『フィールズ賞』ではなく1994年『ノーベル経済学賞』を受賞された数学者ジョン・ナッシュ。2001年公開のハリウッド映画『ビューティフル・マインド』は、彼の数学者としての偉業と成功、そしてその裏で統合失調症に苦しむ人生を妻と共に歩み続けた、という彼の半生を描いた作品でした。数学にのめり込むうちに、精神が冒され、存在しない人物を作り出して、それが生活に介入し、いつしか現実と架空の世界をさ迷う錯乱に陥る男ナッシュを、今だ『グラディエーター』の剣闘士イメージが強い偉丈夫ラッセル・クロウが、見事に演じきりました。また、そんな彼を献身的に支える妻アリシアをジェニファー・コネリーが演じ、彼女は2001年、この役でアカデミー賞助演賞を受賞しました。
日本の小説(後映画化された)にも数学者を主人公(助演?)にした優れた小説があります。事故によって記憶が数時間しか保てない元数学者と家政婦(そしてその子供)との交流を描いた、小川洋子さんの代表作『博士の愛した数学』です。
素数や完全数、ルート等の数学用語が小説の重要な場面で使われています。また、小川洋子さんが大の阪神タイガースファンという事もあって、小説にはそれも投影されています。
家政婦の一人息子がタイガースファンの野球少年で頭の形が平である事から元数学者からルートと呼ばれたり、江夏のタイガース時代の背番号『28』が完全数である事など、面白く数学とタイガースがコラボレーションしてエピソードとして挿入されています。
随分、横道に逸れてしまいました。戻りましょう。
『ひと』の記事で、「数学者の仕事は二つある。『誰もが知っている(?)難問に挑戦する』ことと、『未知の興味深い問題を開拓する』こと」と記され、溝口さんは後者、劇的な変化を示す『爆発現象』から数学的な法則を見いだす研究をされています。
私は(大変厚かましい意見です)、『数学』は、『ゲーム的要素が高い』ものと、そして『私たちの生活を劇的に変化させる』ものとに分類されると考えます。
樋口さんの追い求められる数学は、記事の通りとすれば後者です。
気候温暖化の影響か、この数年、大規模被害をもたらす気象現象(台風、竜巻、高温、低温、降雪等々)が世界各地を襲っています。3.11の大地震、そして津波も大規模エネルギーの『爆発現象』が引き起こした自然現象です。
それらの数学的な法則が発見され、現在よりも、一秒でも早い予知、精度の向上が図られる事によって、警報ネットワークシステムがさらに高度化され、現在よりも近未来において、それらのシステムが、尊い人命を救う究極の『命綱』となる事を期待します。
p.s.
2000年にアメリカのクレイ(スーパーコンピューターの代名詞となるコンピュータ会社です)数学研究所が、「ミレニアム賞問題」7問を発表、それぞれの難問を証明した者に100万ドルの賞金を与えると発表している。その7つの難問ですが、
1.P=NP?問題
2.ホッジ予想
3.ポアンカレ予想
4.リーマン予想
5.ヤン・ミルズ理論とmass gap
6.ナヴィエ・ストークス方程式とsmoothess
7.バーチとスウィナートン・ダイアーの予想
です。
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