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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年8月13日月曜日

映画『ダークナイトライジング』の感想


『ダークナイトライジング』を観た感動を子供らに伝えますと、次の日早速遼太郎も観に行った様子で、その数日後、二人で映画談義を楽しむ事ができました。
息子と同じ感動を共有できたこと、この映画に感謝したいと思います。

ではあらすじですが、

~プロローグ~
前章『ダークナイト』で、ゴッサムのホワイトナイト(白騎士)として登場したハービー・デントは、しかしジョーカーの罠に落ちて、人を陥れ命を奪う醜い怪物トゥーフェイスと化しました。バットマンによってジョーカーもトゥーフェイスも葬られますが、しかし、犯罪の温床となったゴッサムの治安を立て直す為には、ゴッサムに強力な正義の御旗が必要と考えたバットマンとゴードン警部は、二人だけである計略を遂行します。
それは、バットマンがトゥーフェイスの悪行を被ってダークナイト(汚れた騎士)となり、ゴードン警部がハービー・デントを正義の殉職者に仕立て上げて、その偽りの偉功でゴッサムに強力な犯罪取り締まり法(デント法)を制定することでした。
バットマンは追われる立場となってもゴッサムの犯罪者撲滅に協力し、やがてゴッサムの治安は粛粛と回復します。そしてバットマンは汚名を着たまま姿を消しました。

8年後、ゴッサムに『本当の恐怖』が訪れます。それはバットマン伝説が終わりを告げる序曲とともなりました。

ひとりの、素性が全く分からない傭兵ペインがいました。
ペインは、CIAが飛行機で護送する高名な物理学者を、あり得ない手口で奪還します。
それは空中で護送する飛行機を襲い、物理学者以外の全員を殺害し、飛行機まで墜落させてしまうという悪辣な手口でした。

そのペインがゴッサムに現れます。ペインは、ゴッサムに『本当の恐怖』を与える為に来たのです。
※ゴッサムのモデルはニューヨークのマンハッタン島です。
ペインは、ゴッサムと本島を繋ぐ吊り橋やトンネル、そして地下鉄のすべてに爆弾を仕掛けます。そしてもう一つ、ブルース・ウェインとルーシャス・フォックスが密かに開発した次世代原子力発電装置の核を奪います。核と共にウェイン社の上級役員でウェインの恋人ミランダ・テイトも連れ去ります。

そして、多くの警察官が、地下に下って爆弾捜査を行っていた最中に、爆弾は一斉に爆破され、本島へと通じる道はすべて破壊されました。そして多くの警察官は地下に閉じ込められました。

ゴッサムは孤立無援の島と化し、そこに住む1200万人の市民はペインの人質になりました。
ペインは市民の前に姿を現して、ゴッサムに移動式原子爆弾を放ったことを告げます。そして市民の前に物理学者を引き摺り出して、この原爆は時間と共に安定を失っていつか自然爆発する時限爆弾である事を告げ、その原爆を唯一解除できる物理学者を市民の前で躊躇なく殺害します。そして最後に、ひとりでもゴッサムから逃げだそうとすれば、市民のひとりに持たせた原爆の起爆ボタンを押すと告げます。
1200万人の市民は、ゴッサムの周囲に陣を張る、援軍であるはずの国軍に脱出を阻止されます。そして市民の間には焦燥と猜疑心が広がり、『助かる』という希望は徐々に失われてゆきました。

ペインには、もう一つやり遂げなければならない目的がありました。それは、バットマンであるブルース・ウェインを最上の苦しみを味あわせて抹殺する事でした。
ペインは、ハイテクを駆使して盗みを行う盗賊セリーナ・アイル(通称キャット・ウーマン)を雇い入れ、邸宅に閉じこもるウェインの指紋を奪います。
その奪った指紋でハイテク機器を欺き、ウェインのすべての財産を証券の不正取引につぎ込んで、ウェインは一夜にして名声を金も、すべてを失うことになりました。
ウェインはルーシャス・フォックスの力を借りて、もう一度バットマンになって、ペインに戦いを挑みます。そしてペインが、かつてウェインが師と仰いだ”影の同盟”率いるラーズ・アル・グールの一人子であることを知りました。そしてペインは、あまりの無法故に”影の同盟”を破門されていたことも知りました。
強靱な体躯と冷徹な心で死まで克服したペインは、腕力だけでバットマンをねじ伏せ、そのマスクをはぎ取りました。そして、ペインが生まれ落ちた地獄といわれる大きな縦坑の底にウィエンを落とします。

ペインがウェインに告げます。
決して死なせない
お前が全霊で守ろうとしたゴッサムが葬られるのを見て、お前が一分の希望さえ失った時、
死を与えてやる
と告げました。

ウェインは縦坑の底に落とされた他の囚人から、この地獄の縦坑からたった一人、地上へ這い上がった者がいることを聞きます。それがペインでした。
その昔、この中東のとある王国に一人の屈強な傭兵が雇われました。
しかし傭兵は、王の娘との許されない恋に落ちます。
傭兵は国外追放ですみましたが、娘は、この地獄の縦坑に落とされました。
娘は子を宿していました。そしてこの地獄で子を産み落としました。
やがて子が少年へと成長した頃、娘の素性がばれて、娘は囚人達に弄ばれ殺害されます。
この地獄の縦坑から逃げ出すには、縦坑の壁を這い上がるしかありません。これまでも屈強な男達が試みましたが、一人として成功した者はいませんでした。
しかし少年は、その地獄の恐怖を骨の髄まで知り、その恐れから逃げ出したい一心で縦坑を這い上がりきりました。少年には父であるラーズ・アル・グールの力が宿っていたのです。

ウェインは、痛んだ体を治し、そしてこれまでの様な恐怖をただ克服する精神修養ではなく、少年と同じく、恐怖を感じて、尚もその向こうに希望を一心に見いだして、縦坑からの脱出を試みました。

ゴッサムに冬が訪れます。町は白く凍り付いています。
でもその中で、救出という希望を抱いてレジスタンスとなって戦う者がいました。
ゴードンと、警邏巡査からゴードンに見いだされ刑事となったジョン・ブレイクです。
ブレイクは、生き埋めにされた仲間の警察官達に食料を運び、希望を運び続けていました。

そんな二人も、外部から侵入した国軍の兵士と偽って近づいてきたペインの手下に騙されて掴まり、薄氷が張るハドソン川を歩いて渡る死刑を言い渡されます。
二人が銃を突きつけられて川に踏み出そうとしたその時、ペインの手下達が次々と倒れます。そして暗闇の中から近づいてくる影、そうバットマンです。
バットマン、ウェインは、見事に縦坑から脱出し、ゴッサムを救済するために戻ってきたのです。

ウェインは、もう一人、これほどの大罪に手を貸すことになり罪の意識に苛まれるセリーナ・アイルに近づいて、彼女が欲する、彼女が再び陽の光の下で生き直す為の、世界中のコンピュータから彼女の前歴をすべて抹消してくれるアプリケーションの提供を条件に、一緒に戦ってくれることを依頼します。

バットマンとゴードン、ブレイク達の作戦はこうです。
フォックスが開発した電波をかくらんする装置を用いて、リモコンの起爆装置を無効にしてから、トレーラーに積み込まれた移動式原子爆弾の核を、原子力発電装置に戻す事でした。原子力発電装置に戻す事によって、核は安定し爆発が避けられるのです。
そして、地下に閉じ込められた警察官達の救出です。ブレイクがその任務を負いますが、ふさがれたトンネルの手前でペインの手下に捕まり、殺され掛ける直前に、キャット・ウーマンとなったセリーナ・アイルに助けられます。キャット・ウーマンはバットマンから借り受けたバットポッドに備えられたミサイルを放って、トンネルを塞ぐがれきを吹き飛ばします。そして地下に閉じ込められていた警官達は解放されました。

警官達の一群は正義の一矢となって、ウェイン社から奪った戦車や重火器で武装したペインの軍隊に肉弾戦で勝負を挑みます。ウォール街は古戦場と化しました。
そしてバットマンも警官達に混じって、ペインに再戦を挑みます。両者はラーズ・アル・グールから学んだ武道を駆使して互角に渡り合いますが、バットマンには光り輝く希望があります。それはしなやかにペインを撃ち、バットマンはペインを叩きのめします。

建物に逃げ込んだペインを追うと、そこには連れ去られたミランダ・テイトがいました。
バットマンは安堵とともに、最後の鉄槌をペインに振るおうとした瞬間、バットマンの脇腹に短剣が突き刺さりました。振り返るとミランダが短剣を握りしめています。短剣は深くバットマンの内蔵をえぐってゆきます。
『何故っ』と言葉がこぼれます

ミランダが話します。
ラーズ・アル・グールの一人子は私なの
私は、地獄に落とした父を怨んだ
でも、父が貴方に殺され思ったの
貴方が憎いと
そして父が退廃した文明故に葬ろうとしたゴッサムとともに
貴方も一緒に葬ろうと誓ったの
ペインは地獄にいた時の私の庇護者だったの
私を守り、私を脱出させてくれた
ペインはその報いを受け、醜い怪物にさせられたの

ペインは、ミランダに名誉の死を言い渡され、最後の力でバットマンを羽交い締めにします。ミランダはゴードンに奪還された原爆を爆発させるために、バットモービルに乗って出て行きました。

バットマンがペインに殺され掛けた時、キャット・ウーマンが現れてバットポッドに備えられた銃でペインを吹き飛ばします。

原爆が自然爆発する時間が刻々と迫ってきます。
再びミランダに奪還された原爆を追って、バットマンはバットに乗って空から、そしてキャット・ウーマンは地上からミランダが奪還した原爆を積むトレーラーを追いました。
華々しいカーチェース、そしてミサイルによる空中戦の末に、ミランダが乗るトレーラーは高架橋から落ち、ミランダは虫の息となります。
ミランダは、バットマンに見つめられながら、最後の力で、原子力発電装置にある指令を送ります。それは、原子力発電装置に異常がある場合、メルトダウンを避ける為に水没させるという指令でした。
もはや原子力発電装置に核を戻すという選択はなくなりました。そして原爆の爆発は刻一刻と迫ってきます。
バットマンは自動操縦できないバットに核を繋いで、一人バットを操縦して飛び立ちます。
陸地から遥か遠くを目指して飛び続けます。
そしてタイムアップ

原爆は、海上遠くで爆発しました。

~エピローグ~
バットマンの贖いによってゴッサムは、そして1200万人の市民の命が救われました。
ただその犠牲は公にはされませんでした。
バットマンとともにゴッサムの救済に尽くしたブレイクは、それが許せず、警察を辞職します。ブレイクはウェインから託されたものがありました。
それを公証人のところに譲り受けにいった時、彼の本名が明らかになります。
彼が少年養護施設に預けられる以前の名前です。
それはロビンでした。

ロビンは、ウェインから託された地図を頼りに、深い森にある大滝の裏に続く洞窟に足を踏み入れます。新たなるバットマン伝説の始まりです。

END


三時間近い遠大でかつ深淵な物語を、私は大いに楽しみました。
ドラマチックが全編にちりばめられていました。物語は何度も予想を超える方向に展開し、私の全霊は物語世界にグイグイと引き込まれました。

特にクライマックスの
警官隊が一矢となって、丸腰のままで大群に向かってゆくシーン、音楽も荘厳で、映画『ラストサムライ』で勝元の士族軍が近代兵器で武装した明治政府軍の前に命を散らすシーンが重なり、私は涙を抑えるができませんでした。
そして、傷ついた生身のバットマンが、犠牲心を纏ってバットに飛び乗り飛び立つシーンでは、心が締め付けられました。
クリストファー・ノーランは、魂の救済を求めて彷徨い、そしてその救済の希望を見いだした、そしてその希望に殉じた一人の男の物語を描きました。
それはまさにゴルゴタの丘で昇天したキリストを彷彿さえしました。

でもノーランはただ者ではありません、
この物語は、娯楽のバットマン映画なのだと、最後にそっと付け加えているのです。
『ロビン』
新たなるバットマン物語を想像して、とても嬉しい気持ちとなりました。

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