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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年4月17日火曜日

全編を振り返る、『ハリー・ポッター』の物語


『キングス・クロス駅”9と3/4番線”に、二組の幸せな家族がいました。
二組の子供たちは、父母の容姿を受け継ぎ、そしてその子らの名には、大切な人の名、そして恩人の名が継がれていました。』
著者J.K.ローリングさんは、この終章の場面から、『ハリー・ポッターサーガ』が紐解かれたと、語っています。
本当かと、七巻から一巻へと読み辿ってみますと、まるで大河の源流を辿るが如く、小さなエピソード一つにさえ、終わりがあり始まりがあって、模様によどみがありませんでした。全ての登場人物がローリングさんの分身、そしてこれは鮮明な回想録なのだ、と感じました。

この『ハリー・ポッター』の物語は、
21世紀の始まりから、活字で、そして映像で、世界中の子供たちを、ファンタジーファンを魅了し、そして昨年初夏に公開された映画『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』がフィナーレとなりました。フィナーレに立ち会い、その感動のままに記念詩を残したいと思いましたが、当時成せませんでした。
そして今日、ふと思い立ち、つらつらと書き始めています。

始まりの頃、
私は近々公開される児童向け映画『ハリー・ポッターと賢者の石』の原作として本書を求め読みました。
あとがきで訳者松岡佑子さんは、
欧米で大ヒットとなった原書”Harry Potter and the Philosopher's Stone”を読み感動、是非日本の子供たちにも感動を伝えたいとして、初めての翻訳を決意、そして一年という長き格闘の末、1999年のクリスマスに出版されました。
たとえどんなに面白くても、活字の多い500頁近くにもなる大著は、日本では受け入れなれない、との懸念は杞憂となって、訳書は大ヒットしました。

第一巻『ハリー・ポッターと賢者の石』、10歳まで伯父さんの家で虐げられながら暮らしてきたハリーに、ホグワーツ魔法魔術学校からの『入学通知』が届きます。彼の両親は偉大な魔法使いだったのです。そして”9と3/4番線”から紅色の蒸気機関車”ホグワーツ特急”に乗って、ハリーのファンタジー、そして少年から青年へと成長する物語が始まります。

ハリー・ポッター第一巻そして第二巻『秘密の部屋』、第三巻『アズカバンの囚人』は、多感な少年の冒険物語です。
初めて心を通わせる友が出来、またハリーを愛してくれる大人に出会います。そして両親を死に貶めた生涯の敵とも出会います。
第四巻『炎のゴブレット』そして第五巻『不死鳥の騎士団』は、思春期になったハリーの成長物語です。
ハリーは様々な人と出会い、友情深め、恋をします。と同時に物語の基軸となる宿敵ヴォルデモートの復活と、ハリーの『死の予言』が明らかになります。物語はゆっくりと『明朗さ』が失われ、『陰鬱さ』が広がります。
第六巻『謎のプリンセス』では、ハリーの決意が描かれます。
ハリーは、裏切りによって最大の庇護者ダンブルドアを失います。そして自由と善の象徴であったホグワーツが陥落します。そしてハリーは、宿敵ヴォルデモートを倒す鍵にたどり着きます。
第七巻『死の秘宝』で、ハリーの物語の全ての謎が明らかになります。
ハリーは、愛する者を残して、友と共に宿敵ヴォルデモートを倒す鍵を求めて旅をします。そして悪の枢軸ヴォルデモートの軍団”死食い人”と自由と解放の為に立ち上がったダンブルドア軍団”不死鳥の騎士団”との戦争、そしてヴォルデモートとハリーの一騎打ちが描かれます。

ハリーの物語は、『冒険活劇』、そして『大河ドラマ』であると同時に、『家族の回帰』物語であると強く感じています。
この物語の登場人物にはさまざまな家族背景があります。
ハリーの様に、母が魔法使いと結婚し生を授かった子であったために、人である伯父の家庭の中で忌み嫌われながら育った者。
ハーマイオニーの様に、人の子でありながら魔法を授かり、そして家族の愛を一心に受けて育った者。
ロンの様に、魔法使いの伝統的な家系で生まれ、大家族の中でおおらかに育った者。
ドラコの様に、厳格な魔法使いの家系に生まれ、純血主義で幼き時から驕り高ぶる心を宿した者。
そして、
人と魔法使いの間に生まれた混血児(Half-Blood)であったが為に、嘲りと蔑視に毒され、ついには憎しみと崇高な魔法力に傾倒していく者。ヴォルデモートであり、ハリーのもう一人の庇護者セブルスがそうでした。
そして厳格な魔法使いの家系に生まれながらも、自由と冒険、そして友情、博愛に生きた者がダンブルドアでした。
ハーマイオニー、ロン、ドラコ以外は家族の崩壊を経験しています。ただハリーが特別であったのは、両親の、特に母リリーの愛が衣となってハリーの身を守っていた事でした。

『家族の回帰』、
家族が元の状態に戻る、という本来の意味ではなく、
新しい家族を求め、築いてゆく、ということです。そしてハリーは最後、素晴らしい家族を得ました。
そしてもう一つの『家族の回帰』が、
『愛した者を生涯愛し続け、守り抜く』です。
最終巻、第七巻まで全て読破した方なら、第33章『プリンスの物語』にきっと涙したはずです。
セブルスは幼き頃に、ハリーの母リリーと出会い、恋をします。そしてリリーもセブルスに好意を抱きます。
しかしホグワーツに入ってから二人は袂を分かちます。
リリーはのちハリーの父となるジェームスと恋に落ちます。ジェームスは、勇猛果敢な者が集う寮『グリフィンドール』の英雄でした。
そしてセブルスは、狡猾な者が集う寮『スリザリン』に組み分けされ、強力な闇の魔法を操って選民主義者を先導するトム・リドル(のちのヴォルデモート)に心酔し、闇の結社『死食い人』となっていきます。
それでも、セブルスのリリーへの愛情の火が消えることはありませんでした。
そして最初の『死食い人』と『不死鳥の騎士団』との戦争が始まります。
ヴァルデモートは、『死の予言』を知ります。それは、『リリーの子がヴァルデモートを破滅する』というものでした。
リリーが死の標的となったことで、セブルスはダンブルドアに助けを乞い、そしてダンブルドアのスパイとなります。それでもリリーを救えませんでした。ダンブルドア側にもヴォルデモートのスパイがいたのでした。ワームテールです。
ワームテールはジェームスやリリーと友達であったにも関わらず、ヴァルデモートに変心し、リリーの隠れ家をヴォルデモートに告げたのでした。
そしてリリーは死に、でもハリーは生き残りました。
そして意外にも、ヴォルデモートの恐怖が去ったのです。
でも真の恐怖が去っていないことを、ダンブルドアもセブルスも感じていました。そして、ダンブルドアは表の庇護者となり、ハリーの瞳にリリーが宿っていることを感じたセブルスは、身分を隠して裏の庇護者となったのです。
セブルスは一途にリリーを愛し、その子ハリーを愛したのでした。これほどに深い愛、そして苦しみを伴う愛を、私は初めて知りました。

そして最後、
この物語には史上最悪の”闇の帝王”が登場します。
ヴォルデモートです。
ヴォルデモートに、もしも心があるならば、それは猜疑心と欺瞞で満ち溢れています。
ヴォルデモートは自らの魂を七つに裂き、裂いた六つの”魂の欠片”を宝物に隠します。分霊箱です。
ですから、『死の予言』を誰にも悟られることなく、ひとりでリリーとその一人子ハリーを葬ろうとした際に、リリーが命と引き替えにハリーに施した愛の呪文が盾となり、ハリーに投じた死の呪文が跳ね返されて、七つ目の分霊箱となったヴォルデモート自身の肉体が破壊されても、それでもヴォルデモートは存在しえたのでした。
これほどの悪行を、私は他に知りません。


私の子供達の中では、唯一遼太郎が、私と同じく全巻を読破し、たぶん映画もすべて観たのではないかと思います。
さくらは、本は『秘密の部屋』まで、そして映画はすべて観たと思います。
耕太郎、耕太郎は恐がりなので、映画も後半作品は観ていないと思います。
家には一応、本も全巻、そして映画のDVDも揃っています。
いつか子供たちには、しっかりと『ハリー・ポッターの物語』を堪能してくれたらと思います。

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