この秋、NHKの金曜時代劇で始まった「赤ひげ」、重厚な筋立てに、毎回一時間ドラマとは思えないほど感慨を覚えます。特に第三話「最後の告白」では、衝撃的な結末にしばらく言葉が出ませんでした。
山本周五郎といえば時代劇には切り離せない作家です。そして、これまで山本周五郎原作の時代劇は星の数ほど見てきました。でも原作本は一冊も読んだことありませんでした。私にとっては時代劇=山本周五郎であり、きっと近松門左衛門と同じく江戸時代の人の様に思っていました。そんな話を妻としていると、妻は学生時代にゼミの先生が山本周五郎のファンで、それがきっかけで何冊か読んだことがある。そして赤ひげの原作小説も持っていると話します。それで年季の入った「赤ひげ診療譚」を手にすることになりました。
「赤ひげ診療譚」は、山本周五郎55才、昭和33年の作品でした。今から60年前です。当時から見ても江戸の時代は90年も昔です。でも、お祖父さんたちは江戸時代を生きた人もまだいたんでしょうね。ですから、山本周五郎にとって江戸時代は、素描できるほどに身近な時代であった様に想像します。
そして最終章「氷の下の芽」に、この連続小説の骨子であろう文を見つけました。
赤ひげこと新出去定のもとで医者の本分を学ぶ保本登が心の中で聞いた声です。
罪を知らぬ者だけが人を裁く
罪を知った者は決して人を裁かない
罪を憎んで人を憎まず、そして人を許し助けることは、とても難しく、その行為はほとんど徒労に終わってしまう。それでも仁に尽くすことで、世界が少しでもよくなると信じよう。宮沢賢治の「雨ニモマケズ」に通じる感慨を覚えました。
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