巷で話題になっている歌、美輪明宏さんが紅白歌合戦で披露された『ヨイトマケの唄』を、今日はじめてしっかりと聴きました。
年末年始は仕事のため、テレビの特番はほとんど観ていません。そして夜は明日の仕事のために早く寝ていました。もちろん、紅白歌合戦も観ず終いです。
今日の午後、散歩から帰ってきてテレビをつけると、ミヤネ屋で『ヨイトマケの唄』が大反響となっている美輪明宏さんのインタビューが流れました。
17才で歌手デビューを果たした美輪さんは、その容姿、振る舞いからシスターボーイと評されて絶大な人気を博します。美少年が絹の衣装を纏い美声を披露するのです。今から60年も前の事、それは魅惑的であり妖しい魔力に溢れていたと思います。そんな美輪さんでも、煌びやかなステージだけではなく、貧しい炭坑の町でも歌われました。そしてシミと泥にまみれた貧しい労働者の観客を前にしたとき、自分の身なりが恥ずかしく思えたそうです。そして、彼らのための歌を作ろう、彼らのための歌を歌おうと思い立ち、出来上がった歌が、『ヨイトマケの唄』です。
『ヨイトマケの唄』は、美輪さんの原体験から生まれたそうです。
美輪さんは少年期、長崎は丸山遊郭にあったカフェ(現在でいうキャバレー)の御曹司でした。そんな小学生の頃の友だちに、ヨイトマケの母を持つひとりの少年がいました。
ヨイトマケとは、土木作業で土壌を打ち固める仕事のこと、またその仕事に従事する労働者をさす言葉だそうです。当時はすべて人力です。頑強な男でも、とても辛く厳しい仕事です。少年は学校でいじめられ蔑まれ、泣いて母をたよって仕事場に向かいます。でも、母もまた仕事場で男たちにいじめられ蔑まれる姿を目撃します。でも母は、少年を認めると、笑顔を作り大丈夫だよと話します。そんな母を見て、少年も大丈夫だよと応えて、学校に戻るのです。少年の母は、いつも少年に、身分が偉いを作るんじゃない。お天道様の下で一所懸命に働く者が一番偉いんだ、と話していたそうです。
美輪明宏さんが歌われる、演じられる『ヨイトマケの唄』には、物語が溢れています。母を思う子の物語。子を思う母の物語。一生懸命生きる者を賛歌する物語です。そして気づかされたのは、人が人を育てるという普遍です。
現在、もっとも近しい家族の中でも、陰湿ないじめや度を過ぎた体罰が明るみに出て、世間を騒がします。それは学校の中、会社の中、社会の中でも起こります。そして私たちは、身を委ねたり、また人を預かることに恐れをなして、責任のない場所に逃れます。それが人間関係を一層希薄にします。それでも私たちは、優秀な人を求め、優秀な人になりたいと乞い願います。そして人の評価を、人情や眼力ではなく、テストやシステムに委ねてしまい、人は冷淡に選別され、無表情な愛を持たないマニュアル人間が生み出されてしまうのです。
私たちが、本当に立ち返らなければならないのは、人が人を育てるという普遍です。ですから親は、師は、あくまでも真摯でなければならないし、子は、生徒は、あくまでも素直でなければならないと思います。そしてテストやシステムではなく、人情と眼力で導かれた者は、次代の親、師となるわきまえがきっと備わると思うのです。
作詞作曲 美輪明宏
”とうちゃんのためなら エンっやこら”
”かあちゃんのためなら エンっやこら”
もひとつおまけに エンっやこら
今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守唄
工事現場の ひるやすみ
たばこふかして 目を閉じりゃ
聞こえてくるよ あの唄が
働く土方の あの唄が
貧しい土方の あの唄が
子供の頃に 小学校で
ヨイトマケの子供 汚い子供と
いじめぬかれて はやされて
悔し涙に くれながら
泣いて帰った 道すがら
かあちゃんの働く とこを見た
かあちゃんの働く とこを見た
あねさんかむりで 泥にまみれて
日に灼けながら 汗を流して
男にまじって 綱を引き
天にむかって 声をあげて
力の限りに うたってた
かあちゃんの働く とこを見た
かあちゃんの働く とこを見た
慰めてもらおう 抱いてもらおうと
息をはずませ 帰ってはきたが
かあちゃんの姿 見たときに
泣いた涙も 忘れはて
帰って行ったよ 学校へ
勉強するよと 云いながら
勉強するよと 云いながら
あれから何年 たった事だろ
高校も出たし 大学も出た
今じゃ機械の 世の中で
おまけに僕は エンジニア
苦労 苦労で 死んでった
かあちゃん見てくれ この姿
かあちゃん見てくれ この姿
何度か僕も グレかけたけど
やくざな道は ふまずにすんだ
どんなきれいな 唄よりも
どんなきれいな 声よりも
僕をはげまし 慰めた
かあちゃんの唄こそ 世界一
かあちゃんの唄こそ 世界一
今も聞こえる ヨイトマケの唄
今も聞こえる あの子守唄
”とうちゃんのためなら エンっやこら”
”こどものためなら エンっやこら”
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