播磨の国ブログ検索

映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年1月27日金曜日

私たちの『選択』~巣立つ者へのエール~


それは一枚の絵を見たのがきっかけでした。
30センチ四方の額に納められた小さな絵、
絵筆から絵の具を一滴一滴垂らして描かれた絵、
青い鳥が赤や緑の実が稔る野で戯れる様子が描かれた絵です。

『青い鳥』といえば、メーテルリンクの童話が浮かびます。
幼いチルチルとミチルの兄妹が、夢の世界を訪れて『幸せの青い鳥』探します。
でも夢の世界では『青い鳥』を見つけることはできませんでした。そして目が覚めると兄妹の鳥かごの中に『青い鳥の羽根』があった。幸せはいつもそこにあるのだよ、と私たちに気づきを促す物語です。

ここで感じた暗示的なキーワードは、
『鳥かごの中の青い鳥の羽根』→『幸せ』→『保護された持続的な幸せ』です。

そしてもう一つ、『青色』から連想したのは『自由』です。
フランスの三色旗の俗説、青は『自由』、白は『平等』、赤は『博愛』、からの連想です。

『持続的な幸せ』と『自由』、
私たちが求めてやまない二大の代名詞です。

鳥で例えましょう。
『籠の鳥』は、庇護者によって、水を与えられ餌も与えられます。もっとも慈悲深い庇護者であれば、昼間は鳥籠を軒先にでも出して、心地よい風と陽の暖を与えてくれるでしょうし、夜は暗幕をかけて静かな眠りも与えてくれるでしょう。生きながらえるという点で、これは与えられた『持続的な幸せ』もしくは『持続的な安心』です。
では『自由の鳥』はどうでしょうか、
『自由の鳥』は拘束されず、思うままに飛んでゆき、生きることができます。しかしそのフロンティアは脅威に満ちあふれています。天にも地にも彼らを狙うハンターがいて、自然は容赦なく彼らを危険にさらします。そんな中で彼らは水を求め餌を求め伴侶を求めてゆくのです。『自由』とは一瞬の油断も許されない、『獲得し続けなければならない』ものなのです。

ナオミ・クライン著『ショック・ドクトリン』に、
『グリーン・ゾーン』そして『レッド・ゾーン』という表現がありました。
イラク戦争後の米国主導で行われたイラク復興最中に、米国はバグダッドに要塞都市を築きました。それは長期滞在する米国市民のための町、リトルアメリカです。マクドナルドも映画館もショッピングセンターもあります。その町は強固なセキュリティで守られた『グリーン・ゾーン』です。そしてその『ゾーン』から一歩外に出れば、破壊尽くされた町があり、そこは『無秩序』と『死』が渦巻く『レッド・ゾーン』と化しています。

『グリーン・ゾーン』、これがタイトルとなった社会派スリラー映画がマット・デイモン主演で2010年に公開されました。いま振り返れば、イラク復興の内幕を暴露する内容でありました。

イラクの例は非常に特化したものですが、でも私たちが歩む道、生きる場所の選択には常に『グリーン(安全)』と『レッド(危険)』が存在します。
言い換えれば、『規律』『規則』『義務』を受け入れて『安心』や『幸せ』を得るか、自由競争という危険の中に身を置いて、『夢』や『富』を追い求めるかという選択です。

20世紀は『ナショナリズム』の時代でした。国家の威勢が地球規模の均衡を左右する時代でした。そして21世紀、経済が独歩する『グローバルリズム』の時代となりました。
日本の旗艦であった企業は多国籍化し、インターネットの世界、そしてビジネスの世界は英語でなければ務まらない時代となりました。
私たちは『職』だけでなく、『固有の言語』、『固有の文化』を失いかねない時代にも直面しているのです。

ただこの10年、『グローバルリズム』の強風が吹き荒れる中で、世界各地で国家よりももって小さな単位の『ローカリズム』、『固有の言語』『固有の民族』そして『固有の文化』を尊重し、その土地を守っていこうとする運動が起こっています。その運動の基は『アイデンティティの尊重』です。そしてそれは、『共有』『交換』『助け合い』そして『絆』で成り立つものであります。
私たちには『グローバル』に生きるか、土地にしっかりと根を張って『ローカル』に生きるという選択肢もあるのです。

私たちは今、学ぶ権利を有しています。様々な情報を目にする権利を有しています。そしてそれによって、私たちは自分自身にとって、家族にとって、社会にとって、『是』となる『良し』となる道を選択することができます。
何事も盲目的に信仰するのではなく、『智』と『良心』と『勇気』を持って選択し、歩んでゆかなければいけない、と思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿