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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年1月28日土曜日

「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと

TFA代表ウィンディ・コップ著『いつか、すべての子供たちに ~「ティーチ・フォー・アメリカ」とそこで私が学んだこと』
2009年春に刊行された翻訳本です。手元にありますが、いっぱいラインが引かれ、付箋がそこいらじゅうに張ってあります。

1989年、プリンストン大学を卒業したウィンディ・コップは米国社会における教育の不平等を実感し、『すべての子供たちに優れた教育を受ける機会を与えたい』という理想を掲げて非営利団体TFA(Teach For America)を設立しました。
アイデアはこうです。

『トップクラスの大学を卒業したばかりの人たち-専攻もめざす職業もさまざまな人たち-を集めて、都市や地方の公立学校で二年間教師をしてもらう。その後も生涯を通じて、「すべての子供たちに教育の機会を与える」という目標に向かって、率先して取り組んでもらう。』

そして
・教師の確保
・派遣先の確保
・運営資金の調達
等々の都度の試練を克服し、1995年、ついに黒字を計上、ウェンディ・コップの理想は米国社会に認められます。

本では、TFAの設立から1995年までの活動の黎明期において、数々の試練をどのように乗り越えていったかが綴られています。そこには若者の無知や軽薄さが招いた問題もありました。しかし、それ以上に『変化を起こす、起こしたい』という強烈な意思、熱意、行動がありました。

そしてもう一つは、米国社会がなぜにFTAを必要としているかも綴られています。それは、米国社会における公立の教育システムの脆弱さです。
米国は広大な国土を有していますが、辺境の町では正規の教師がおらず、高校を卒業した若者が教師を務めています。
また、大都会のインナーシティ(低開発地域)は社会の吹きだまりとなっていました。
貧しい地域に住む子供たちは、どんどん置き去りにされていたのです。

現在、TFAは米国大学生の『理想の就職先』となっています。そしてGoogleやApple、その他名だたる大企業がTFAでキャリアを積んだ若者を雇用するプログラムを実践しています。

TFAの理念は世界中に広がりつつあります。日本でもTFAの理念を実践しようとするNPO『Teach For Japan』が2009年に設立されました。
しかし、自由主義を貫く米国とは違い、日本の教育は社会民主主義のもとに構築されたシステムです。それは大きな一枚岩です。また教育の背景も抱える問題も米国とは異なります。ですから、TFJは日本の実情に向き合ったプログラムを開発しなければならないと思います。
また、TFJメンバーの『キャリア』評価についても懸念します。 現状ではTFJが派遣できるメンバーは、指導補助員、もしくはボランティアです。現場においてステータスもなく権限もなければ、モチベーションを維持することはできないと思います。そして何よりキャリアアップの問題です。『キャリア』の考え方が米国と全く異なる日本では、TFJでのキャリアは次の就職へのアドバンテージにならないと思います。魅力的な就職先を目指すならば、先の二つの懸念を払拭しなければいけないと思います。

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私が本書で学んだことは、私たちは『希望』を描き、その芽を発芽し育てる力を合わせ持っているという事です。それは苦難であるが大きな喜びでもあります。
巷には進学を目指す受験生があふれていますが、彼ら一人一人が、その先に『希望』を描き、自らを肥沃な土壌に育て、そしてしっかりと『希望』の芽を育てる者となってほしいと願います。

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