NHKで今朝放送された海外ニュース番組の中で、香港のニュース番組が伝える内容には、笑いが込み上げてくるほどの驚愕を覚えました。
香港のニュースは、 11月7日に衆議院予算委員会の質疑の中で、高市早苗首相が岡田克也立憲民主党衆議院議員からの質問に答えた答弁の内容の中で、高市首相がまだ首相ではなかった一年前の総裁選選挙で述べた『中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われて、存立危機事態になるかもしれないと発言された』ことについて、「(当時)どういう場合に存立危機事態になるとお考えだったんですか」という質疑に対する答弁内容を、歪曲するだけでなく日本を貶める虚偽を交えて伝えていました。そして中国の情報戦に対して鈍重な日本政府を尻目に、中国政府は中国国民に対して、また国連加盟国に対して矢継ぎ早に日本を貶める行動を行う様子を知りました。
中国政府は、十億の中国人に対して、日本では中国人が暴力を受けているなどというデマを報道し、渡航を中止するように勧告を行うと同事に、日本との貿易を停止する措置を執り始めています。また世界に向けては、中国の国連大使が国連加盟国に対して「日本が再び軍国化に動き出した」と80年前の映像を利用しながら日本の暴力性・残虐性を訴えていました。
ニュースの中では、日本は国連(正確にはUN)に軍事力を持つことも集団的自衛権も禁止されている(これは敗戦後のアメリカ軍を中心とするUNに占領されていた時代の話です。日本は1952年4月28日にサンフランシスコ講和条約が発効したことで主権を取り戻し独立国家となりました。)と伝えられ、また『日本の軍国化』を脅威と感じるかという国連加盟国に対して行ったとされるアンケートで90%を超える同意があったとも伝えていました。この様な虚偽のニュースを、香港の公共メディアが香港人に報道していたのです。
私は日本のメディアが切り取って報道した高市首相の『台湾有事は日本の存立危機事態になり得る』という発言には、どちらかと云えば賛同していました。というか、『存立危機事態』を勝手に、小松左京が「日本沈没」で描いた様な、大災害を含めて、当然に侵略戦争も含めて、日本が一国として立ち行かなくなる事態、一国ではなす術もなくなった事態と解釈をしていました。しかし、存続危機事態を設定した『武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律』が《定義》第二条で定義した存立危機事態は、
『我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。』
と書かれています。最初の一節の文と、その後の文の間に、とてつもない空白があるように感じます。いや、あります。その空白を埋める文は、それぞれの思想や信条によって大きく異なるだとうと想像します。
そしてそれに続く、《武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処に関する基本理念》第三条では、
『存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。』
こちらも、武力行使に対する制限があるのかないのか、あるとしてもそれはどこなのか、これも、それぞれの思想や信条によって大きく異なるだとうと想像します。
私が、11月7日の質疑・答弁の中で特に気になった箇所を下記に書き出してみます。
※参照したWEBページです。
武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000079
11/7 予算委員会質疑(総理の外交基本姿勢、存立危機事態、在日米軍基地からの直接出撃、川崎重工事件)
https://www.katsuya.net/topics/article-10543.html
〇岡田委員
『高市総理、一年前の総裁選挙でこう述べておられるんですよ。中国による台湾の海上封鎖が発生した場合を問われて、存立危機事態になるかもしれないと発言されました。
私も、絶対ないと言うつもりはないんです。だけれども、これはどういう場合に存立危機事態になるというふうにお考えだったんですか。』
〇高市内閣総理大臣
『台湾をめぐる問題というのは、対話により平和的に解決することを期待するというのが従来からの一貫した立場でございます。
その上で、一般論として申し上げますけれども、今、岡田委員も、絶対にないとは言えないとおっしゃっておられました。いかなる事態が存立危機 事態に該当するかというのは、実際にその発生した事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して判断しなければならないと考えております。』
〇岡田委員
『どういう場合に存立危機事態になるのかということをお聞きしたいんですが』
〇高市内閣総理大臣
『これはやはり他国に、台湾でしたら他の地域と申し上げた方がいいかもしれませんが、あのときはたしか台湾有事に関する議論であったと思います。台湾に対して武力攻撃が発生する。海上封鎖というのも、戦艦で行い、そしてまた他の手段も合わせて対応した場合には武力行使が生じ得る話でございます。
例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする、それを防ぐために何らかのほかの武力行使が行われる、こういった事態も想定されることでございますので、そのときに生じた事態、いかなる事態が生じたかということの情報を総合的に判断しなければならないと思っております。』
〇岡田委員
『台湾有事は日本有事。ここで有事ということの意味がよく分かりませんけれども、何か非常に軽々しく私は問題を扱っているんじゃないかというふうに思うんですね。』
〇高市内閣総理大臣
『最悪の事態を想定しておくということは非常に重要だと思います。
先ほど有事という言葉がございました。それはいろいろな形がありましょう。例えば、台湾を完全に中国北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか。それは単なるシーレーンの封鎖であるかもしれないし、武力行使であるかもしれないし、それから偽情報、サイバープロパガンダであるかもしれないし、それはいろいろなケースが考えられると思いますよ。だけれども、それが戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースであると私は考えます。』
高市首相は、ただの一介の政治家であればよかったと思います。この日本では、どんな信条でも、自由に述べる権利を有しているからです。ただ、今は首相です。首相は、外から見れば一国の元首です。元首の言葉は、日本の意志と取られます。自分の信条など心の内に収めて、決して表に出してはいけないと思います。それが、国民の国益に反するならば尚更です。日本の首相、日本の政府が取るべき行動は、ただ一つです。この東アジアで紛争を起こさないことです。それが、日本国民の利益に繋がり、近隣諸国の国民の利益にも繋がります。何より、命を失う危機は、絶対に避けるべきです。そして、仮に想像のもとに脅威を国民に訴えるにしても、固有の国名を出すのは、絶対にしてはならないと思います。この中国を例えた発言は、誠意を持って撤回すべきだと思います。
そして、私が一番同意したのは、それは岡田議員の次の発言です。
『有事がもし発生した場合に、例えば近隣の国々、非常に私たちにとって大事な国々です、あるいは地域も含めてですね、そういうときに大量の避難民が発生する、恐らく数十万、数百万の単位で発生するということになります。それを無事に移動させて日本が引き取るということも極めて重要だと思うんですね。ウクライナ危機のときに、ドイツを始めとするヨーロッパの国々が避難民をしっかりと受け止めたということですが、同じようなことが起こる可能性がある。そのとき に日本自身が武力行使をしていたら、そういう活動にも極めて差し障りが出てくる可能性が高いですよね。
そういうこともトータル含めて、やはり存立危機事態の認定、武力の行使ということは慎重に考えていかなければいけないと私は思うんです』
以下は、私自身の考えです。
私は、台湾を一つの独立したデモクラシー国家であると認識しています。朝鮮半島にある韓国と同様、沖縄諸島から目と鼻の先にある台湾は、日本にとって歴史的にも深い繋がりがあって、現在では同じ東アジアのデモクラシー国家として、あらゆる面で助け合い協力し合える真の友人の様な国家同士になれればとても嬉しいなと思っています。それは安全保障の面でも同様です。しかし、安全保障の面を考えるなら、現在の東アジアで最大の軍事力と経済力を保持しているのは中国です。中国を抜きにして、この東アジアの安定も平和もそして発展も考えることなど出来ません。この地球上で最大の軍事力と経済力を保持しているのはアメリカです。日本、韓国は安全保障の条約でアメリカと深く結びついているために、中国は日本、韓国を脅かす事は出来ても、現在のところは武力を使って日本、韓国を攻撃することは、想像しても、現実には起こらないと思います。では台湾はといえば、台湾(中華民国)はそもそも国連の創設メンバーであり、国連安保理の常任理事国の座についていました。それが、1971年10月25日に中華人民共和国が長年訴えてきた中国代表権問題の議決が行われ、中華人民共和国が国連安保理の常任理事国と見なされた。そして蒋介石が国連から追放され、これに抗議する形で、中華民国は国連を脱退したと事典には書かれています。台湾(中華民国)も、国連(UN)に翻弄された歴史を持っているんですね。まだ何も学んでいないので明確な考えを述べることはできませんが、当時の時代を想像し、小国の軍事政権国家で最貧国の一つでしかなかった中華民国と、最貧国ではあるが広大な国土を有し人口も多い共産主義国家である中華人民共和国の方が、欧米にとってビジネスを開拓するフロンティアに思えたのではないかと想像します。それが為に、一つの中国を主張する中華人民共和国を、国連のメンバーとして残したのではないかと想像します。それに中華人民共和国はソ連と繋がりがあって、その頃にはもう原爆を手にしていたのかもしれません。原爆は、今も昔も、人類滅亡の最大の脅威であり、それを持つ者は、この地球上で特権が与えられるのかもしれませんね。
そして中華人民共和国(以後、中国と記述します。)、中国は最古の文明発祥の地であり、何千年も前からユーラシア大陸の諸国諸地域に、様々な影響を与え続けてきましたね。日本は、伝来した仏教、道教、等々から智慧を学び、伝来した最先端技術などを礎にして日本文化を開花させていきました。日本にとっても、中国は脅威であると同事に憧れの地であり続けました。丁度150年前、日本は近代の西欧文明に触れ、急速に西欧化を図りました。それとは反対に中国、当時の清は欧米のビジネスの食い物にされていました。西欧化を果たした日本は、東アジアの安定を図るという使命を抱きながら、同事に欧米に負けマジと欧米のように傲慢な態度で東アジアの国々に接し、遂には侵略行為に走ってしまった。それが第二次世界大戦の敗戦に繋がり、東アジアの国々に汚名を残すことになってしまったのだと思います。しかし、日本の、というか、市井の日本人の本音は、東アジアの安定と、平和の享受、そして文化や商業の発展により、心も財布も豊かになることではなかったかと思います。日本人は、森羅万象に対して畏怖の念を抱く民族であるとともに、聖徳太子の時代から『和を以て為す』を信条としてきた民族です。ですから、他民族を理由なく無慈悲に蹂躙する民族では決してありません。ただ、『和を以て為す』という信条が『長いものには巻かれろ』という様な従臣意識に抗えないという欠点も有しています。それが、近代、現代の日本の停滞のそもそもの原因を為しているのかもしれません。
中国は、共産主義の看板を下ろしてはいませんが、実質的には日本と同じ、ポピュリズムの国家です。権力者は権力を維持するために民衆に迎合します。但し、中国はあまりも国土が広く、十億を超える様々な人種、宗教、背景を持つ人民を擁する為に、本来、共産主義では有り得ない強固なヒエラルキーが存在する国家でもあります。そしてすべての人民が享受できる利益を説くことなどできないために、国家の敵を創り出し、不満を外敵に仕向ける国策を常に採り続けてきました。それが、東アジアでは、日本であり、台湾です。
そして、もっと大きな敵はアメリカです。アメリカも日本も台湾も、いわば中国政府が創り出した、存在しない脅威です。
中国人は、現代においても偉大な人々だと思います。中国政府も同様です。途方もない国土と人民を有しながら、この30年でアメリカに次ぐ、大国へと成長しました。
中国政府が、もっと中国人民を信じて、中国人民の人権と自由を保障するような国家に変貌すれば、そして近隣の諸国とも和を以て為すという王の気風で接してくれれば、東アジアの安定の基軸となるだけでなく、この地球上で一番称賛される国家となり得ることも可能ではないかと思います。
今こそ、アジアの諸国に対して、脅しではなく、和で迎え入れ、アジアの、更にはこの地球上の平和と安定、更には国連を主導し、他地域の紛争の解決を図ると共に、地球温暖化などの人類全体に影響する危機に対して、率先して行動するリーダーへと変貌してくれたらと願います。
追伸。
妻と、神戸森林植物園に出かけました。紅葉が真っ盛りでとても美しかったです。
園内では、韓国語や中国語を話す若い人たちや家族連れを見かけました。皆さん、とても穏やかな笑顔で紅葉を楽しまれていました。これこそ、私たち人が、望んでいるものではないかと思います。互いに笑顔で、美しい自然の風景を眺め楽しむという至福の時間を持つことです。
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