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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2015年5月10日日曜日

戦争についての話をしよう! その一 「戦争のやり方が、どうやら変わり始めた様子です。」

兵士は国内の基地から兵器型ドローン(遠隔操作の無人爆撃機やミサイル)を操作して、GPSやムービーカメラで捕捉できるターゲットを破壊、もしくは殺害しに行くのです。オペレーターは、アーケードゲーム場にあるゲーム機のコックピットと変わらぬブースに入って、モニターを見ながらジョイスティックを操作して、作戦を遂行するのです。

私は、戦争がどんどんとバーチャル化すれば、兵士は命がけで戦っているという緊迫感や、そして人を殺すという嫌悪感や罪悪感を持たなくなるのでは?という恐れを抱いていました。でも兵器型ドローンのオペレーターとなった兵士を待ち受けていたのは、もっと悲劇的な現実でした。

あるオペレーターは、朝自宅を出て、子どもを学校に送ってから職場(基地)に出勤します。そして本日の作戦指示を受け、無人爆撃機のコックピットに座ります。
本日の作戦は、地球の裏側にいるターゲットとなった人物の殺害です。オペレーターは、無人爆撃機にターゲットの捕捉をプログラミングし、基地からドローンを離陸させます。目的地まではオートパイロットです。オペレーターは数時間のフライトをモニターで監視します。やがてターゲットがモニターに映し出されます。爆撃の開始です。追跡装置付きのミサイルを発射します。ミサイルからの映像がモニターに映ります。ターゲットがぐんぐんと近づいて、そしてタッチダウン、ターゲットが木っ端微塵になる瞬間がモニターに映し出されます。作戦成功です。そして、無人爆撃機を基地まで帰還させ、本日の作戦は終了です。オペレーターは職場(基地)を退出し、子どもを学校に迎えに行って、そして自宅に帰ります。

戦場体験をした兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が、まだまだ控えめですが社会の問題として取り上げられてきました。人道復興支援活動でイラクに派遣された日本の自衛隊員も、帰還後にPTSDを発症し、日常生活に戻ることが出来ずに自殺をされた方が少なからずおられると云います。米国では元兵士の自殺者が日に20名もいるという報告もありました。このことからも、戦場は人間の精神や肉体を蝕んでしまう苛烈な場所だということが分かります。
しかし、兵器型ドローンのオペレーターは、日常生活の中に戦場があるのです。毎日、日常の中の人を殺す戦場と平和な家庭を行き来するのです。それが新たなPTSDを引き起こしているというのです。当たり前です、人間は殺人マシーンではないからです。作戦の中で子どもを巻き沿いにすることもあるでしょう。その後で、我が子に平静に接することなど出来るはずがありません。

戦争は、どんなにやり方が変わろうと、人間の精神や肉体をボロボロにすることを、私たちは肝に銘じ続けなければいけないと思います。

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