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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2013年7月1日月曜日

子猫のカムイ

4月、二匹の子猫が家族の一員になりました。ノルンとカムイ、2月生まれでノルンが一日違いの姉さんです。
私にとっても子供たちにとっても、初めて飼う哺乳動物です。赤ちゃん子猫というので、手の平に乗るほど小さい子猫を想像していましたが、成獣とみまがうほどに大きいのです。猫は生まれて数ヶ月で体長が倍ほどに大きくなる事を知りました。

親として子猫を飼う事になった娘は、引っ掻かれても噛まれても甲斐甲斐しく世話をして、二匹の子猫は一番に馴れていました。息子達も、その可愛らしさ無邪気さに、ただ子猫を見守る時間を楽しんでいました。
私と言えば、最初はおっかなびっくりで、二匹の子猫もなかなか警戒を解きません。ですが、触れ合う時間が進むほどに、私は二匹の子猫の中に知性を感じ、また二匹の子猫も最後に遅れて私を受け入れてくれました。
姉さんのノルンは、茶サビの毛並み、目元が真ん丸で、とても好奇心旺盛です。ですが、用心深くもあり、気性も荒く、最初の頃は、家族みんなよく爪で引っ掻かれました。
弟のカムイは、キジトラの毛並み、目元は穏やかで、温和しい性格です。私が抱き上げても爪を立てる事なくいつまでもじっとしています。ですが、雄の性分で、よく食事をとりどんどんと体も大きくなって、気が付くとタンスの上に上がっている。とても敏捷で、ノルンとじゃれ合っても必ず押さえ込むほどに力もありました。

6月、カムイは風邪を引きました。目やにが出て鼻水もでています。とても息が苦しそうで、近くのツバキノ動物病院に連れて行きました。診察室に入って最初に熱を測りますと43度もありました。でも先生のお話では、猫の平温は39度で、人間に換算すると38度程度の熱、という事で少し安堵しました。
でもこれも人間の感覚であって、猫の発熱は、命を危なくするとても危険な症状であると先生は話されました。そして脱水症状を起こすとさらに危険となるので、その様な症状になった場合は、猫の場合点滴ができない為、直接背中に水分や栄養分を注射するとも話されました。猫ってラクダと同様に背中に水分をためる事ができる事を初めて知りました。
猫の脱水症状は、背中の皮をつまんでみて、張りがない、皮がだるんとして戻らない、が判断の目安とも教えて頂きました。

先生に薬を処方してもらい、一週間ほどでカムイは元気に動ける様になりました。そして、また食欲も戻って、骨格がわかるほどに痩せこけていた体も、艶やかにふっくらとなって、みんな、もう大丈夫と安心しました。

それから数日の事です。夕方、家族が帰ってくると、カムイはじっとして動きません。お腹のあたりを大きく膨らませて、荒い息をしています。娘が、以前先生にもらった点眼薬を与えようと抱きかかえますと、異常に興奮して、指をガブリとひと噛みし、抱きかかえた手を振り払って部屋の隅に逃げていきました。
そして、もう誰の側にも近づく事なく、警戒し、そして荒く息をしています。一緒にいるノルンはまったく普通です。カムイをすぐにツバキノ動物病院に連れて行きました。
先生は、とても深刻な事態と話され、レントゲンを撮る事になりましたが、カムイは暴れ、先生の手を噛みました。猫の場合、興奮するとぽっくりと死んでしまう危険があるため、仰向けに押さえつけて撮るレントゲンは最初の一枚だけとなりました。

その日から、カムイはまったく食事を取れず、水も飲めなくなりました。そして体を始終大きく震わせて、眠る事もできず、痩せ細っていく足で体を支え、部屋の隅でじっとしています。
妻が毎日カムイを連れて病院に通いました。そして土曜日、先生は、最初に撮った一枚のレントゲン写真を様々に検証された結果の診断結果を話されました。気管が狭まり、また異様に歪曲しているのです。この様な症状は、事故に遭った猫に見られる症状で、強い衝撃にあたって横隔膜が損傷し、肺を正常に動かす事ができなくなっているのです。内臓も上に上がって肺を圧迫しています。そして、この子は、ほとんど息が出来ない状態になっている、と話されました。そしてカムイは、あまりに体力が落ちている為に手術もできない状態になっていました。背中に直接、水と栄養分を注射して頂きました。

土曜日日曜日と、それでもカムイは、家族みんなに優しさを振りまいてくれました。

そして今日の夕方、仕事から帰ってから、妻と二人でカムイをツバキノ動物病院に連れて行きました。妻の話では、移動の箱に入れようとした時、とても嫌がったと言います。
箱の中で、カムイは痩せ細った体で懸命に立っていました。時々漏らす鳴き声は、可愛らしい子猫のそれではなく、とても沈んだ音でした。
ツバキノ病院は、子犬連れの方が数名いて、待合室は混んでいました。妻が受付の為病院の中に入り、私はカムイと車の中で待機しました。
極力カムイを自由に振る舞える様にしましたが、助手席の下に潜ろうとしたので、抱きかかえ、箱の中に戻しました。箱の中に一滴の水滴がこぼれていました。どきっとしました。カムイはまた座席の下に潜ろうとしますので、抱きかかえました。手がよだれで濡れました。箱の中に戻しました。
カムイは、この数日で初めて横になりました。ゆっくりと横になりました。とても静かな時間でした。カムイの深い息遣いが聞こえました。ゆっくりと大きな息遣いが数度聞こえ、そしてあれほど震えていた体が動かなくなりました。もう息遣いは聞こえません。

病院に入り、猫が死にかけていると伝えました。すぐに診察室に入り、先生は懸命に蘇生をされました。心臓マッサージをし、小さく開いた口に息を吹き入れます。それでもカムイは再び息を吹き返す事はありませんでした。
2月10日に生まれた子猫カムイは、7月1日18時30分、亡くなりました。

6月15日朝、一度だけカムイを海に連れて行った時の写真です。

1 件のコメント:

  1. 短い命でしたね。でもきっと幸せでした。家があったのですから。

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