最近、『地獄』という絵本が大人気になっているといいます。
悪いことをしたら地獄に落ちる、地獄とはこんなに恐ろしい世界なのだ、
そう小さな子供たちに諭すのです。
でもこのような戒めは、私の子供の頃は常識でした。でも現在のようにビジュアルで訴えるわけではありません。押し殺した肉声と、暗闇、音、薄光、それが心の内に芽生えた恐れを否応なく増幅しました。
でも、心の内に芽生えた恐怖よりも、もっと恐ろしく、もっと深く悲しい事実を、私は絵本を通じて学んだことがあります。
丸木俊さん作『ひろしまのピカ』と
早乙女勝元さん作『猫は生きている』です。
『ひろしまのピカ』は、広島に生きる健気な家族を通じて原爆のむごたらしさが描かれています。
『猫は生きている』は、東京大空襲で、火焔地獄と化した町でむごたらしく焼き殺される命が描かれています。
怒り狂うどう猛な炎が、命を頂いていたモノを小さな墨に変える様が描かれます。
ページをめくる度、涙がこぼれました。
でも描かれている世界は『地獄』ではありません。現実の世の世界です。
そこに登場する人々は何一つ悪いことなどしていないのです。
そこに描かれているのは、戦争が招く理不尽さです。冷徹さです。人が成した恐ろしさ、おぞましさです。
私は、広島にも長崎にいったことがありますが、ともに美しい町です。
ですが67年前、二つの町は原爆によって一瞬にして焦土となりました。
多くの命が一瞬で焼き殺され、そして命はなんとか長らえたものの、その後死ぬまで原爆の火に苦しめられた人々も大勢います。
戦争が、そして原爆がどれほどに醜くおぞましいものか、そしてそこに生まれた深い悲しみは決して繰り返してはならない事を、
私達ひとり一人がしっかりと心の内に育み続けなければならない、そう思います。
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