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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年6月8日金曜日

Facebookの盛衰


水曜日、仕事から帰って、ふと携帯電話の画面を見ると、着信履歴にウェルネスパーク図書館からの着信が記録されていました。
あれ?最近本など借りていないのに・・・と思いながら電話を掛けて尋ねると、昨年末に貸し出し予約していた本が準備できた旨の連絡でした。

この、用意頂いた本は、
ウォルター・アイザックソン著『ステーブ・ジョブズ』です。
昨年10月に、ジョブズが亡くなった数週間後に全世界で同時発売となった、ジョブズの自伝、遺書、もしくは赤裸々な告白本というべき本で、ベストセラーとなりました。
ステーブ・ジョブズは同世代の人で、私もIT業界に一時身を置いていたことから、業界誌に載る彼の逸話などにも触れてはいました。
でも当時のジョブズの印象は、ガレージからAppleを興したシリコンバレーの寵児という事くらいで、Macintoshの以後の彼の年代記、そして歴史的な功績についての詳報は、Newsweek誌のジョブズ追悼の特集記事を読んで初めて体系的に知りました。
ジョブズは商売を成功させるためにマスコミを利用する才に非常に長けた人でありましたが、自分の事は話さない、人付き合いがあまり上手でない人であったようであります。
そんなジョブズが、著者を自宅に招き入れ、長々とインタビューに応じた。また彼の家族もインタビューに応じた。それが本になったのが『ステーブ・ジョブズ』です。私は、この本を読み、人間ジョブズに触れたいと思いました。

あれから9ヶ月、書店に平積みされていた本は、もやは表で見ることはありません。そしてジョブズ本人も過去の人となりました。

ただAppleは堅調ですね、ジョブズが残した遺産は非常に大きかった。ジョブズはApple製品を、コアなAppleファンだけのものから、現代のコミュニケーターとしてコモディティ、いわゆる生活必需品に押し上げたのです。

ただ、21世紀に新しく生まれたコミュニケーターは、今年に入って急速にその成長が鈍化しています。

Facebook、人類史上最大の9億人を超える利用者を誇るコミュニケーターです。
昨年上半期に、アラブの春、虐げられていた民から沸き上がった民主化運動の輪を広げたコミュニケーターとしてTwitterとともに一躍注目を浴びました。
そして今年5月、ついに上場し、IT業界の歴史を塗り替える1000億ドルという巨額の資金調達を果たしました。
しかしFacebookのバブルに懐疑的な声は当初からありました。そして上場に前後して、それはFacebookへの失望に変わりました。

Facebookには二面性があります。
ひとつは、9億人以上の利用者を繋ぐコミュニケーター
そしてもう一つが、Facebookに金をもたらす顧客、広告主に、9億人以上の集めに集めた個人情報をマーケットに即した集客データに加工して提供する、いわゆる情報屋
です。
コミュニケーター利用者には、実名主義を押しつけてどんどん個人情報を引き出させます。
そして、匿名利用者や個人情報提供を拒む利用者は、Facebookワールドに放たれた『実名ポリス』プログラムによって、無慈悲に追放されるのです。
Facebookに依存した生活、もしくはビジネスをする人にとって、コミュニケーションが人質にされたのです。そしてここにきて利用者増が鈍化し始めました。
また広告主側も、広告メディアとしてのFacebookの誇張に気付きました。実際にFacebookの広告を見て商品購入に繋がるのは二割程度という報告があります。そして現在、そして今後、コミュニケーター利用のベースとなるモバイル端末(iPhone、スマートフォン、タブレット等)においては、現状まったく広告効果が見いだせないという報告もされています。そして広告主はFacebookを見切り始めたのです。
ハーバード大学学生寮の一室で生まれた、仲間との赤裸々なコミュニケーションを楽しむツールは、宗旨替えして個人情報から金を生む錬金術になり、やがては金の亡者の餌食となりました。
Facebookの頭領マーク・ザッカーバーグは、
Facebookにビジネスアプリケーションを投入する、だとか
Facebookに特化した新たなモバイル端末を開発する、
というアドバルーンを上げて、顧客の引き留めに躍起になっていますが、ビジネス分野しかりモバイル分野しかり、先行するIT企業の独断場であり、また高度に成熟した分野であります。
大金をせしめたザッカーバーグの盟友達は、新たな冒険に挑むためFacebookから去り始めています。

そしてこの度のFacebookの上場、新規株式公開、IPO(Initial Public Offering) で、現在のIT企業銘柄のバブルを示す?指標、株価収益率(株価/一株当たりの収益)、P/E(Price Earnings Ratio)なるものを知りました。
アメリカでは業態によって異なりますが、P/Eは14~20が適正とされています。
そして現在の著名IT企業のP/Eは
MicrosoftのP/E 10.71
AppleのP/E 13.93
GoogleのP/E 17.52
FacebookのP/E IPOまでは100を超える値で推移、しかし本日はそれでも67.29
で、FacebookのP/Eがとしゅつしているのがわかります。

P/Eの最新数値は、Yahoo!FINANCEで参照しました。
http://finance.yahoo.com/q?s=FB

マーク・ザッカーバーグは、ジョブズを讃え、また次代のジョブズを継ぐ者と評されることもありますが、どうやら真の顧客が誰かをはき違えたようです。ジョブズであれば、こんな間違いはしでかさなかったでしょう。
利用者にとって素晴らしい商品やサービスは、文化となって、黙っていても利用者がそれにお金を払います。
Facebookは、結局は、利用者にノリの良いブームは生んでも、文化にまで昇華できなかったという事でしょうね。

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