播磨の国ブログ検索

映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年5月14日土曜日

辻 信一著『スローライフ 100 のキーワード』読後感想

文化人類学者であり環境運動家の辻 信一さん著『スローライフ100のキーワード』は、辻さんが世界中の同士と『スロー』或いは『シンプル』をコンセプトに進められているライフスタイルプロジェクトを100のキーワードによって説明されたものです。

それは、
『今日を楽しもう』、
『足元を見直そう』
『フェアに生きよう』
という、
これまでの経済至上主義、ビジネス(忙しくする)、大量生産大量消費を良しとした、消費・浪費サイクルで成り立っていた生活を見直し、人々が互いに融通し合って、共生するライフスタイルに立ち戻ろうと訴えられています。

『今日を楽しもう』は、キリギリスになろうというのではありません。
それぞれの心の中にある欲求や楽しみを押し殺してまで、仕事にかまける、忙しくすることを止めようという事です。

『足元を見直そう』は、私たちが生まれ育った土地の素晴らしさ、伝統、知恵を見直し、守っていこうとする事です。

『フェアに生きよう』は、共生で一番大切な、不正な取引に手を出さず、公正さに準じて互助の精神を持って生活しようとする事です。

----------

私たちは、一度の食事にもグローバル経済の影響を受ける時代の中に生きています。子どもたちは、見た目は質素だけれど、十分に愛情と時間を掛け作られた総菜で食事を取るよりも、ファーストフードを好みます。

教育は、個々の個性よりも、効率化と統計結果によって推し進められ、本来大切な要素であるユニークさは非効率として排除されています。

グローバル企業(ほとんどの先進国の企業)は、途上国から資源や労働力を不正に安く手に入れて、仕上がった商品を先進諸国に高額で売りさばき暴利を貪ります。

インターネットが世界を周る時代、またSNS(社会的な発言が気軽に行えるツール)が簡単に利用できる時代の到来が、先に挙げた不正、不誠実な事柄を、無策な政治や公正取引の役人に代わって、直ちに糾弾する様になりました。

民衆のパワーは強大で、政治も経済も身勝手な振る舞いは、許されない時代が到来したのです。

----------

『スロー』或いは『シンプル』な生活スタイルに込められたものは、人間を含めたこの世界全体への深い敬意と愛情です。

1986年イタリアのブラという小さな町で始まった『スロー・フード運動』は、辻さんが提唱される『スロー・ライフ』と同じ志、愛情溢れた運動です。

標準化された時間ではなく、それぞれの個人のリズムが尊重され生きていければどんなに素晴らしいでしょう。母の作った手料理に家族一同が席に着き、感謝して食事を頂く、本来、これ以上の幸せな時間は無いと思います。

私たちがすっかり染まってしまった『ビジー・ライフ』は、もう私たちに何も与えてくれません。
ならば、それぞれが生活スタイルの舵を180度切り返し『スロー・ライフ』を目指してはどうでしょう。
これまでの購入・消費によって持続的な乾きと折り合いを付けていた生活から決別し、持続的な幸福感、精神的な安定・安心を得るために、まずは『スロー・ライフ』運動とはどういうものか、『知る』事から始めましょう。


■書籍情報
タイトル: スローライフ 100 のキーワード
平成15年7月30日 初版1刷発行
平成17年2月15日 4刷発行
著者  : 辻 信一
発行書 : 株式会社弘文堂
            〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台1-7
            TEL 033-294-4801
            http://www.koubundou.co.jp
編集協力: 有限会社ゆっくり堂

■辻 信一 経歴
文化人類学者、環境運動家、明治学院大学国際学部教員。
「スロー」というコンセプトを軸に環境=文化運動を進める。
1999年、NGO「ナマケモノ倶楽部」( http://sloth.gr.jp )を設立、その世話人を務める。
「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーター・カフェ」、「ゆっくり堂」などの会社設立に参画、環境共生型ビジネスに取り組む他、数々のNPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)にも参画している。

0 件のコメント:

コメントを投稿