播磨の国ブログ検索

映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2011年5月12日木曜日

司馬遼太郎著『21世紀に生きる君たちへ』

『21世紀に生きる君たちへ』は、司馬遼太郎さんが小学6年生の国語教科書(大阪書籍)掲載のために書かれた随筆です。

高砂市では、7年前、小学校6年生の国語教科書は大阪書籍発行版を使用していたため、長男が6年生で、この司馬さんの随筆に出会うことが出来ました。
大阪書籍発行国語教科書に司馬さんのこの随筆がはじめて掲載されたのは、平成元年(1989年)の事です。

80年代は、欧米では冷戦の終結と、社会主義諸国の崩壊、そして新しい民主主義の風や、新芽が緩やかに、しかし、しっかりと成長を見せ始めました。もうソ連に求心力はなく、ソ連自体も内部崩壊が始まっていました。

アジアを見ると、中国は、文化大革命の粛正・強権の嵐が招いた疲弊のためか共産党は、高等教育に身を置く学者や学生を重宝し、暫し間、自由の風が吹いていました。

日本では、高度成長期の段階を経て、仕事も遊びも楽しみ尽くすという風潮が、どんどん若い世代にも拡がってきました。当時は、仕事は常に待ち行列をおこすほどにあり、私はコンピュータSEでしたが、『2000年にはプログラマーが足らなくなる』という予測から、どの大手コンピュータ会社も、毎年数百人規模で人材を確保し続けていました。

太平洋戦争敗戦からの復興、60年安保、70年代の高度成長をつぶさに見られてきた司馬さんの眼に、80年代は、21世に向けての新たな時代の幕開けとなる展開期として映ったのではないかと思います。

しかし、このエッセーがはじめて教科書に載った、1989年は、欧米では、ベルリンの壁が崩れ、一気に社会主義体制が崩壊し、東側の民は一気に西側諸国に流れ込み、お祭りムードは一変し、西側諸国は、旧社会主義体制をどの様に民主主義国家、自由経済国家へ導くか、また難民の扱いについて財政的にも大きな負担・問題を抱えることになります。
また、中国では、つかの間の自由の風も、天安門事件の殺戮という剛風で吹き飛ばされてしまいます。

日本にも得体の知れない経済の膨張(バブル) に国も経済界も国民も乱舞し始めました。
そして、その膨張ははじけ、日本経済は、破裂した風船のカス同様に、深い闇に落ちていきます。

また、90年代初頭にはイラクがクエートに侵攻したことが発端で起こった湾岸戦争が勃発、20世紀は多くの新たな問題を残したまま終えました。

司馬さんが、この世を去られたのが1996年。実際には、近未来に対して、重い憂慮を感じられながらの他界であったのではないかと思います。

司馬遼太郎さんの『21世紀に生きる君たちへ』は、先にも書きましたが、7年前、長男の教科書で初めて読みました。

そして、その後暫くして、朝日出版社発行 対訳『21世紀に生きる君たちへ』の新刊発行のニュースを知って、購入しました。
本書には、3つの随筆が日本語(左ページ)、そして対訳として英語(ドナルド・キーンさん監修、ロバート・ミンツァーさん訳)(右ページ)に掲載されています。
収録作品は、

人間の荘厳さ … The Magnificence of Humanity

21世紀に生きる君たちへ … To You Who Will Live in the 21st Century

洪庵のたいまつ … The Torch of Koan

です。

どの随筆も平易な文体ながら重厚なメッセージがしっかりと込められていて、語りかけられる様に、心に染み入ってきます。

私は、昨年3月13日に、この『21世紀に生きる君たちへ』の朗読ビデオを作成して、YouTubeに投稿しました。
昨年投稿当時は、1動画ファイルにつき再生時間10分以内という制約があり、2つに分割してアップしました。
何故か、後半部の動画が著作権違反で削除されました。
理由が分からず、YouTubeに異議申し立てを行いましたが、未だ回当なし、という経緯を持ちます。

今回、昨年とは違った感情、21世紀を10年余り過ごし、様々な不安な経験をし、そしてこの度の大震災と未曾有の被害…、21世紀としてはまだ緒についたばかりなのでしょうが、日本ばかりでなく、世界中が暗中模索状態にある今、私たちは己の足下を見直し、『いたわり』『他人の痛みを感じること』『やさしさ』の心を思い出すと同時に、『たのもしさ』という人間力を身につける事が、これからの時代を歩んでゆく原動力になると思い、
全文朗読をし直し、現在の投降動画ファイルの再生時間15分以内をクリアしたので、1ファイルとして、Youtubeにアップロードしました。



崩壊した日本を、これまでのような経済偏重、効率化偏重ではなく、それぞれの人間の持つ時間の流れを、個別性を重視し、学びも遊びも、そして仕事もすべての国民の今日の幸福、明日の幸福の為に行う。そんな風に日本を導くことは、、日本人皆の力を結集すれば、必ずや、成せると考えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿