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信仰心について

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2024年12月1日日曜日

リトルプリンス 星の王子さまと私

 12月になりました。都会では華やかなクリスマスイルミネーションが夜に輝き、クリスチャンではない大勢の人々にも、人恋しさを誘い、家族や友人、恋人との時間へと誘います。

恒例ではないですが、クリスマスに向けてとっておきの映画を一本ご紹介したいと思います。それは邦題『リトルプリンス 星の王子さまと私』(2015年フランス制作アニメーション)。原題は、サン=テグジュベリの原作と同じ英語題『The Little Prince』です。


舞台は現代、主人公は小学六年生の女の子です。

女の子の母親は、物語の中では多くは語られていませんが、大人になって苦い経験を続けてきたのでしょう、夫婦関係も同様にです。それが理由かは分かりませんが、女の子には、誰に支配されること無く明るい人生を歩ませるために、まずは超有名な進学校に進ませるために、進学に有利な校区に住まいを変え、受験日までの一年間のタイムスケジュールを設計して、その通りに受験勉強中心の生活を女の子に強いりました。女の子も母親の思いに応えるために、一生懸命に毎日を過ごしていましたが、ある日起こった事件が、女の子の心に小さな変化をもたらしました。

その事件は、隣家の住人が引き起こしたものでした。隣家にはとても高齢な老人が一人で住んでいました。この町は、まるで集積回路の様な画一化した町並みでしたが、老人の住む隣家だけは骨董の如く古ぼけた家で、庭の草木は伸び放題、その草木に埋もれるように、骨董品の壊れた一人乗り用プロペラ機が置かれていました。この町の住民は、この老人をこの町には馴染まないもうろくした変人と見なし、関わらないようにしていました。

ある日、いつもの様に女の子が勉強をしていると、突然家の壁を突き破りプロペラが入ってきました。その事故は、老人が壊れた飛行機をどうにか修理して飛び立とうとエンジンを回したことにより、先端に取り付けられたプロペラが回転しながら外れて、女の子の家の壁を突き破って起こりました。女の子の母親が仕事先から急いで家に帰り、警察の仲介のもと老人の謝罪と保険での修理を了承して一応落着を見ましたが、でも、女の子は、これまで出会ったことのない行動をする老人にとても強い興味を抱きました。

そして女の子は母親に内緒で老人の家を訪問することにしました。老人は当初、とてもおどおどしながら女の子に接しましたが、女の子が老人が書いたある物語に興味を示したことから、その物語を通じて二人は心を通わせます。

その物語は、老人がずっと若い頃、沙漠を横断して郵便物を運ぶ一人乗りプロペラ機のパイロットであったころに、不時着した沙漠の真ん中で出会った幼い少年との交流の物語でした。

沙漠に不時着したパイロットは、水を求めオアシスの井戸を探して歩いていると、一人の幼い少年に出会いました。少年は、とても小さな星にひとりで住む王子だと名乗ります。

ある日、その小さな星にとても美しい真っ赤な花が一輪咲きました。王子は、その花を心から愛して、花が望むどんなことにも従いましたが、花はどんどんと傲慢になっていき、遂に王子は花に絶えられなくなって花を残し、小さな星から風船に乗って飛び立ちました。

そして王子は夜空に輝く星々を訪ね歩きました。しかし、自惚れ屋の星、年老いて尚ふんぞり返る王の星、夜空の星を全部自分のものとするために金儲けに邁進するビジネスマンの星等々、訪ね歩いた星々は王子を少しも慰めてはくれませんでした。

そして王子は、最後に地球に降り立ちました。この地球で王子は、初めとなる友だちが出来ました。それは一匹の狐でした。王子は狐の「大切なことは目に見えないんだよ」という言葉で、とても大切な事柄を悟ります。それは、自分が愛されたいから他者に尽くすのではなく、心から他者を大切にし愛することで自らが満たされるという真理です。

そして王子は、星に残してきた花が、地球で出会った沢山の薔薇の花と同じものであることを知り、ひとり星に残した一輪の薔薇の事を思い、星に帰ることを決心します。そして、星に帰るためにサハラ砂漠に来たのでした。

女の子は、ここまでの物語にとても感動し、物語が教えてくれる大切なことに惹かれていきます。そして老人への思慕の念を深めていきます。

しかし王子の物語は、女の子をとても悲しませる結末でした。

王子は、パイロットを水が満たされた井戸に導き、パイロットが飛行機を修理して飛び立てる準備が出来たことを見守ってから、パイロットに星に帰るための別れを告げます。

それは、沙漠に棲む毒蛇に噛まれて死ぬ事でした。死ぬ事で王子は地球で得た肉体を離れ、自由になって星に帰るというものでした。

王子の死は、女の子にとって、老人との別れを象徴していました。女の子は、その物語の結末を受け入れられず、老人に憤りをぶつけてしまいます。

母親は、ずっと女の子が老人と親しくなるのを苦々しく思っていましたが、女の子が老人から貰って読んでいた「星の王子さま」の物語を見つけて読んで、母親も「とても大切なこと」に気づかされることになりました。そんな時、老人が自宅で倒れ、救急車で病院に運ばれることになりました。

女の子は、とても憔悴しました。そして深い眠りに落ちたとき、老人がずっと気に掛けていた星の王子さまの消息を訊ねようと思い立ち、狐とともに、老人の庭のプロペラ機に飛び乗って夜空に飛び立ちました。

しかし、夜空には星が一つも輝いていませんでした。実は、夜空中の星々全てをビジネスマンが金にものを言わせて自分のものにして、スノードームに閉じ込めてしまっていたのです。女の子は、ビジネスマンが作り上げた帝国の星に降り立ちました。そこで働く人たちは、規則に縛られ、ビジネスマンの金を稼ぐ道具に成り果てていました。子供たちは、机に括られ、昼夜、勉強すること、そしてビジネスマンに従うことを身に染み込ませられていました。女の子はその大都会のビルの屋上で、煙突掃除を任じられて働いている気の抜けた青年が、あの星の王子さまだと察して、パイロットが長らく王子さまのことを気に病んでいたことを伝え、この星から脱出して、王子さまの星に戻って薔薇に会うことを求めます。女の子と狐と青年は、ビジネスマンのスノードームを破壊して、夜空に星々を返し、そしてプロペラ機に乗って、王子さまの星に辿りつきます。

しかし、薔薇の花は、すっかり枯れてしまっていました。嘆く青年の前に朝焼けが広がります。真っ赤な朝焼けは、薔薇の花の復活を明示していました。見ると青年は、もとの純粋な幼い少年の姿に変わっていました。そして、女の子は笑顔で星の王子さまと別れ、地球を目指します。

女の子は、入院している老人の病室を訪れます。そして、女の子が体験した物語を老人に話します。

女の子は無事、希望した中学校に入学します。でも女の子は、損得で物事を見るのではなく、本当に大切なことに心で感じることを、自分だけでなく、クラスメイトにも伝えられるよう学校生活を励もうと、学生生活の一歩を踏み出します。


拙いあらすじでは伝えきらない、この映画の美しい映像には、心が真から洗われます。

実際のサン=テグジュベリは、ヒトラーがヨーロッパに暗黒をもたらしている最中、自由フランス空軍に志願し、偵察飛行の最中に消息不明となり、ついに帰らぬ人となりました。が、この物語では、サン=テグジュベリはどこかで生き延び、現代まで生き延びて、どんなに時代が移り変わっても、どんなに時代の要請で価値観が変わろうとも、人にとって本当に大切なことを守り通して生きていました。そんな生き様に、私はどんなに年齢を重ねようと、たとえもうろくしようとも、憧れていたいと思っています。

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