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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2015年4月17日金曜日

利他主義的な精神科医「Dr.倫太郎」

先日始まったドラマ「Dr.倫太郎」、個性派でかつ演技派の堺雅人さんと蒼井優さんが主演されるドラマということで、始まるのを楽しみにしていました。

どんなドラマなのかといえば、ミステリーでしたね。登場人物はそれぞれが闇を抱えて生きている。伏線も沢山張り巡らされていて、今後の展開や紐解きに興味津々となりました。

キャラクターの造形も深かったですね。
堺さん演ずる日野倫太郎は、彼の代表的なキャラクターの一人である古美門研介と真逆のキャラクターでした。利己主義(エゴイズムegoism)の権化が古美門研介であるならば日野倫太郎はさしずめ利他主義、愛他主義(アルトルイズムaltruism)の権化ではないかと思います。利己主義者は裏を返せばサディストといえるかと思います。また利他主義・愛他主義者はマゾヒストです。
どちらも過ぎれば恐ろしいキャラクターです。
蒼井優さん演じる新橋の売れっ子芸者夢乃は一目見て、龍馬伝で同じく蒼井優さんが演じられた長崎は丸山妓楼の売れっ子芸者お元を思い浮かべました。抗う事が出来ぬ力に翻弄されながら、時には狡猾に振る舞い、でも本心にはただならぬ愛を秘めている。
こちらも、可愛らしくも恐ろしいキャラクターだと思います。


そして今朝の朝日新聞天声人語には、ドラマの今後を予見させる様な事件について書かれていました。
引用させて頂きます。
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付き添いで病院の精神科に何度か行ったことがある。驚いたことに担当の男性医師は患者の顔をほとんど見なかった。パソコンの画面とにらめっこだ。これで患者の状態がわかるのかと不安になった。
通院先を小さな医院に変えることにした。診察ぶりは一転、女性医師は時間をかけて丁寧に患者の反応を見ていた。薬の処方も慎重になった。状態は明らかに改善した。医師によってこれほど対応が違うのかと感じ入った次第だ。
心の中をのぞくことは難しい。精神科医の大野裕さんはうつ病について、その原因や仕組みが完全に解明できているわけではないと語っている。「患者の数だけ治療法があるといってよい」。医師は患者の生まれや育ち、生活の背景まで知る必要があるという。
そんな細心な臨床をこの人たちに期待できるだろうか。川崎市の聖マリアンナ医大病院で重大な不正が発覚した。精神科医11人が、自分では診察していないのに診察したかのように偽った症例リポートを提出していたそうだ。
「精神保健指定医」になるためである。重度の患者を強制的に入院させるかどうかを判定できる重い資格だ。先輩医師のリポートの内容を引き写すことが常態化していたというから驚く。指導医を含む20人の資格が取り消されるのは当然だ。
誤診や失敗をしたことのない名医などこの地上には一人もいなかった。精神科医の故なだいなださんはかつてそう書いた。名医でなくていいから、せめて誠実な医師に診てもらいたい。
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天声人語が触れた、聖マリアンナ医大病院の「精神保健指定医」資格の不正取得は常態化していたと云います。そして不正に関わったとされる医師が強制的に入院させた患者は100名を上回ると云います。
病院側は謝罪の席で、強制入院の判定が妥当だったかどうか、専門家による検証を行いたいと答弁していますが、憤懣やるかたない思いです。
病院が何よりも先に遣らなければならない事は、不正に関わった医師の診断や判定など顧みる事無く、不幸な目に遭った患者や家族全員に誠心誠意の謝罪を行い、かつ一人一人の患者に対して、最善の診療、治療を行う事です。
そして、不正に関わった医師にはもっと重い処分を下すべきであり、また病院にはさらに重い代償を負わさなければならないと思います。そうでもしないとこの様な不正は、いつになっても止むことはありません。


ドラマの主人公であるDr.倫太郎がそうである様に、また天声人語で触れられた患者に向き合う医師がそうである様に、精神科医というものは、患者の心の深部まで入り込んで病の原因を探り、そして患者と二人三脚になって快方を手助けする存在であるのが理想だと思います。ですが、他人の心の深部を探査するという行為はとても危険な行為だと思います。患者の心の闇が余りにも深く大きい時、その闇に取り込まれてしまわないかを心配します。尚且つ医師には守秘義務があります。こうなればミステリーを通り越し、スリラーです。

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