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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2015年4月22日水曜日

「明日は休日」か?それとも悪夢の始まりか?

星新一のショートショートに「明日は休日」という話があります。
N氏は、朝目覚まし装置で叩き起こされ、朝食を摂り、薬を一錠飲んでから職場に向かいます。職場では、上司にガミガミ怒鳴られながら沢山の仕事をこなし、そしてぐったり疲れて帰宅する毎日を過ごします。だから週末が来るのが楽しみです。
N氏の飲んでいた薬は一種の幻覚剤です。N氏の生きる世界は、何もかもが完全にオートメーション化されて、人間はもう働く必要がなくなりました。でもそれだと人間は手持ち無沙汰になって不安が広がります。その不安を解消するために幻覚剤が開発されました。幻覚剤を飲めば一日仕事をした気分になります。そして何より週末、薬を飲まない日を楽しく過ごすことが出来るのです。
と、こんな話であったと思います。

今週号のニューズウィーク日本版に「ドイツが推進する新・産業革命」という記事がありました。「インダストリー4.0」という産官学を揚げて取り組む第4次産業革命プロジェクトの取材記事です。
25年前、ある産業用オートオーション機械の電子頭脳を生産する工場の自動化率は25%でした。それが現在では75%に達し、その工場で製造された製品の不良率は100万個当たり550個から11.5個に激減しました。そして生産高は8.5倍に増加しました。
電子頭脳の不良は、それを制御装置として稼働する製造ラインを止めるという事態を招きます。それは顧客企業に多大な損失を与えることに繋がります。そこで工場の専門家チームは、製品の品質を確保するために工場の更なる自動化を推進しました。
米国では、この新・産業革命の取り組みは「インダストリアル・インターネット」と呼ばれています。

「インダストリー4.0」の更なる進化のテーマは、生産システムの完全オートメーション化、そして異なる生産システムとの完全ネットワーク化、ならびにビックデータの活用です。でもそれが成った時、人間はどうなるのかという疑問を覚えます。

半世紀前、星新一は完全なオートメーション化が実現した世界で生きざる得なくなった人間の悲喜こもごもをショートショートで描きました。
そこから遡ること四半世紀前、チャップリンは映画「モダンタイムス」で、オートメーション化が進めば人間は機械の奴隷になりさがると皮肉たっぷりに描きました。

しかし、希代の予言者も想像だにしなかった事が起こり始めています。それは雇用機会の喪失です。
人間はどんなに優秀な人であっても、100万回の仕事(聞くこと、話すこと、書くこと、調べること、また運ぶことetc)を遂行する事に500~1000回のミスをするという研究結果があります。ですから単純労働であっても知的労働であっても、効率化、生産性向上、そしてミスの0化を追い求められれば、いずれコンピュータ化やオートメーション化によって対象の仕事は人間の仕事では無くなります。雇用機会の喪失です。
そうなれば「明日は悪夢」の始まりです。

過ぎたるは猶及ばざるが如し
「明日は何のためにあるのか?」
それは、人間の幸せの為、そして人間の技量を継承する為だと思います。
私達は、それを決して忘れてはならないと思います。

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