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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2012年11月13日火曜日

今一番読みたい本は『あるロマ家族の遍歴』です。


読売新聞日曜版の書評を読んで、とても興味を引いた本がありました。
ミショ・ニコリッチ著『あるロマ家族の遍歴』です。

10月25日の新聞記事『ドイツ、ロマ人犠牲者追悼の碑建立』で、ヨーロッパにおいてユダヤ人と同様に厳しく辛い歴史を歩んできたロマ人を初めて知ったわけですが、この本には、そのロマ人として生まれ、差別と排除を受けながら20世紀を逞しく生き抜いた著者と家族の物語が語られているとの事です。
書評を書かれた星野博美さんの文が秀逸で、特に次の文章で、この本を是非読みたいと思いました。
『ミショは自分や家族が生きる為に犯した徴兵拒否、密出入国、不法滞在、無免許運転、窃盗、嘘八百を並べた占い、ぼったくり商売などの違反行為を、すべて赤裸々に告白する。迫害も放浪も、ロマ同士の抗争も美しい妻との出会いも、すべてが同じ距離感で淡々と。
そのあまりに静かな語り口に最初は戸惑い、やがて気づく。それだけ日常が過酷で、いちいち立ち止まっていられなかったということだ。』
そして
『かつてナチス体制下の人種優生学者がロマ社会に潜入して文化を研究し、その結果が迫害と殲滅計画に利用された苦い経験がある為、ロマは集団内部の話を非ロマに打ち明ける事を極端に嫌うという。これほどリアルでヴィヴィッドなロマの物語を読んだことがない。』と結ばれていました。

ユダヤ民族の迫害の歴史については、ずいぶん昔に読んだことがあります。中世からユダヤ民族はゲットーに押し込められ、当時最も蔑まれた金融の仕事しか与えられなかったのです。それがためユダヤ人は一層恨まれ忌み嫌われる苦難の道を歩むことになります。
ロマ人もまた中世からひとところに定住することなく流浪の民として蔑まれ差別を受けてきました。
これまで『ジプシー』という言葉には、とても魔力的な魅力を、そして響きを感じていましたが、これは誇張した『ジプシー』像であり、たぶん彼らを排斥する為のプロパガンダに馴染んでいたからだと思います。
私は、ロマの、彼らの内から語られる歴史を、物語をじっくりと読みたいと思います。

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