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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2016年10月30日日曜日

最近のマイブームは寅さんです。

最近、マイブームは寅さんです。何の気なしにテレビ放映された寅さん映画を観て、ジンときてしまって・・・、それからテレビで寅さん映画があると録画して観ています。
寅さんこと渥美清さんが、俳句を嗜まれていたことも最近知りました。図書館で「風天 渥美清のうた」を読みました。

蟹悪さしたように生き
自殺したひととあそんでるへんな夢
お遍路が一列に行く虹の中
特にこの三編におもしろさを感じました。

蟹・・・、渥美さんのお顔を思い出しプッと笑みがこぼれます。ご本人か寅さんの生き様を読まれたのでしょうか
自殺・・・、なんとも出だしが衝撃的ですが、でもこの句からは悲しみも苦みを浮かんでこない。ただ淡々とした風景を想像し心が癒やされる思いがします。
お遍路・・・、こちらは渥美さんが晩年、病に冒されていた時に読まれた句だそうです。お遍路にご自分を重ねられていたのかなと、しみじみ感じ入りました。

蟹の句は、十七音の原則にとらわれない自由律俳句というものだそうです。渥美さんは、この自由律俳句の第一人者緒方放哉に傾倒されていた様子です。

そしてもう一冊、興味を引いた本がありました。こちらは借りて読みました。
精神科医名越康文さんが書かれた「『男はつらいよ』の幸福論」です。
中学の時に偶然に映画館で寅さん映画を観てから寅さん愛に目覚めて、これまでに全48作品をそらんじられるほどに観られた名越さんの中には、名越寅さんが息づいているように思われます。名越寅さんの人柄がとても愛らしいです。
惚れ症でお節介で、人に迷惑がられることも多々ですが、裏表がないので、寅さんに関わる人は、寅さんが側にいるだけで安心できるんです。それに中学中退で机上の学問はからっきしだめですが、風来人生の中で関わった人を通じて生きた言葉を知っている。それが心に染みるんですね。寅さんは女性に振られ振られの人生だと思っていましたが、それも大きな間違いでした。寅さんは相手女性の一番の幸せは何なのか分かってしまうんですね、だから身を引いてしまうんです。そんな寅さんの寂しさや純情さに私達は心が惹かれるのだと思います。

名越寅さんは輪廻を生きているとも書かれていました。
多くの人は、その人のゴールに向かう一本道を歩いています。出会いと別れは一度きり、だから一期一会を大切にする。でもともに歩む輩や連れ合いに対しては、時にマンネリズムを感じて煩わしく思うこともあるでしょう。そういう苦悩と戦うのも人間なのだと思います。
でも寅さんは出会いと別れを、何度でも新鮮に繰り返すことができるんですね。輩や連れ合いに「あばよ」といって別れ、「よっ」といって帰ってくる。人は「旅の垢を落とす」ものですが、寅さんは「旅で垢を落とす」でしょう。ですから寅さんが持ち帰ってくるのは楽しい話ばかりです。ですから輩や連れ合いは寅さんの帰りを待ちわびることができるのだと思います。


追伸。
あとがきで、名越さんは初めて映画館で観た寅さん映画は「寅次郎ハイビスカスの花」と書かれていました。中学生の時、「戦場のメリークリスマス」を観に行ったら二本立てで、中に入ると寅さん映画の途中だったと書かれていました。おかしい、と思いました。名越さんは私と同じ昭和35年生まれでした。「戦場のメリークリスマス」は、1980年代の映画です。調べてみると「ハイビスカスの花」も1980年の作品です。
この下りは、もしかしたら記憶の錯綜でこんがらがっているのではと思います。
でも「『男はつらいよ』の幸福論」は名著だと思います。読書におすすめの一冊です。

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