播磨の国ブログ検索

映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2015年7月26日日曜日

一文惜しみの百知らず

先週、ドキリとするニュースを見ました。水曜日のNHKの定時ニュースで取り上げられた「IT技術者不足、ベトナムに活路」というニュースです。

※IT技術者不足 ベトナムに活路
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2015/07/0722.html

NHKのアンケートによると、日本企業の約9割がIT技術者が不足と応えています。
ベトナムでは国を挙げてIT技術者の育成と日本語教育に熱心に取り組んでいると云います。そして「真面目に仕事をするし、即戦力になる」として、日本のIT企業は技術者不足解消の切り札としてベトナムに熱い視線を送っているというのです。

ニュースの履歴を辿ってみると、今年の4月に経済産業省が
・2020年までに大規模なシステム開発が目白押し
・しかし、そのシステム開発を賄えるIT技術者が日本に不足している
という理由から
アジア各国でIT専攻の学生を対象に日本語学校留学や日本での就職を支援する、”アジアの学生支援”組織を、この夏にも設立する方針を打ち出していました。

https://www.youtube.com/watch?v=nHoOMykqdPA

要するに国を挙げて、目の前に迫った大規模システム開発の為に、アジアのIT技術者の卵を大挙確保しようとしていると云うことです。
また、「一文惜しみの百知らず」になりはしないかという危惧を覚えます。

過去において日本は、二度同じ過ちを犯しています。
一つは、1990年代から外国企業との競争に打ち勝つためと称して、工場をどんどん人件費の安い国々に移転して国内の空洞化を招くと共に、進出した国々において良質で優秀な人材を育成し、スキルやノウハウを学んだ彼らは自国で優良企業を立ち上げて、今は日本企業の競争力はどんどんと弱まっている状況です。
もう一つは、超高齢社会に突入にした日本の医療や介護の分野で、重労働かつ低賃金な介護専門職員の不足を解消する為に、アジア各国から看護や介護の専門技能者や学生に日本語学校留学と就職の斡旋を開始しました。それ以外にも、労働者不足を補う為に移民施策の必要性が取り沙汰されています。
戦後直ぐヨーロッパ各国は重労働かつ低賃金労働者の確保のために移民政策を大規模に実施しました。しかし衰退期に入ったヨーロッパでは今、移民はスケープゴートの対象とされ、差別や嫌悪が渦巻き、それがISIL躍進の温床ともなっています。
格差社会といわれて久しい日本社会です。外国労働者や移民に対し、日本人と同じ生活権を与えることができるか甚だ疑わしく思います。そういう問題を後回しにして、施策を性急に行えば、ヨーロッパの二の前になるのは火を見るよりも明らかです。

そして、この「IT技術者不足を外国に頼る」施策です。
この数十年間、人材育成をなおざりにして、目先の利益に躍起になってきた報いであると同時に、2020年までの大規模システム開発を通じて、アジアのIT技術者は更なるスキルアップを果たす事でしょう。これ自体は悪いことではないにしろ、日本社会にとっては、時前で人材を育てることをしない限り、今後さらに膨大かつ深淵となっていくITビジネスの開発から運用その他まで、すべて外国に頼らねば立ちゆかなくなる恐れがあります。

IT技術者の不足は、世界的な問題となっている様子です。
現在、IT技術者のスキルは7段階に分類されるといいます。

ITスキル標準とは?
https://www.ipa.go.jp/jinzai/itss/itss7.html

上位のレベル7やレベル6の技術者は、GoogleやAppleなどのアメリカの先端ITベンチャー企業が世界中からリクルートしていると云います。
しかし、日本が今必要としているのは、レベル3やレベル2のシステム開発工程で使えるプログラマです。1980年代の日本のIT企業の前身であったソフトウェア会社は、2000年にはプログラマが不足するとして、時前で大勢のプログラマやコンピュータエンジニアを育成しようとしました。言葉は悪いが「味噌も糞も一緒に」です。しかし、これが功を奏したのだと思います。優秀な者がそうでない者まで引き上げて、プログラマーやエンジニアの裾野が広がりました。

今の日本にはシステム開発工程を担わせるレベル2,3のIT技術者さえ不足している状況です。今こそ国策として、しっかりと人材育成、人材教育を行うべきではないかと痛感します。

0 件のコメント:

コメントを投稿