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映画『オッペンハイマー』を観ました。

”nearly zero(ほぼゼロ)” 先週、映画『オッペンハイマー』を観てきました。期待に違わぬ、クリストファー・ノーランの映画でした。 ノーランは、オッペンハイマーという人物の上昇と転落の物語を通じて、科学者の、もっといえば人間の、探究欲や嫉妬心にはブレーキが利かないという、...

2013年5月7日火曜日

映画『アンドリューNDR114』、あるロボットが人間に恋する物語です。


私、SFが大好きです。海外SF小説の巨匠アーサー・C・クラーク、そしてアイザック・アシモフの作品はよく読みました。
このアイザック・アシモフの短編作品を原作とした、とても大好きなSF映画があります。
1999年アメリカ作品『アンドリューNDR114』(原題:The Bicentennial Man)です。
久しぶりにDVDで観ました。

あらすじです・・・
そう遠くない未来、あるNDR114型召使いロボットに創作力とユーモアが宿ります。購入者の家族はこのユニークな特性をもつロボットを好ましく思い、やがては家族とロボットの間に絆が芽生え愛情が育っていきます。
家族から人間というものを学び、自ら人間の歴史を、人間の文明を学びます。
家族から名アンドリューを与えられ、姓マーティンを与えられます。
そして、服を着ることを許され、財産を持つ事を許され、ついには自由な身分を許されます。

彼は潤沢な財産とポジトロン頭脳に蓄積された広大な知識、そして創作力によって、自らの姿を人間に近づけます。
彼は、骨格、筋肉、感覚器官、内蔵を次々とデザインしては、自らを無機物の金属体から有機体に近づけます。そして次に神経組織をデザインし、味覚や快感をも手にします。

彼は人間に近づくにつれ、彼の中に耐えがたい苦しみが募っていきます。 彼の愛するマーティン家の家族がひとり、またひとりと彼を残して死んでいくのです。彼のデザインした人工臓器は、人間に健康と長寿をもたらしますが、不死を与えることはありません。
そして彼はポジトロン頭脳が維持される限り不死身でありました。

彼は、ついに完全なる人間になることを決心します。死の受け入れです。
彼はポジトロン頭脳がじょじょに機能低下を起こし、やがて機能の回復が望めない完全な停止に繋がる処置を自らに施します。

集中治療室、彼は愛する人間の女性と並んでベットに横になっています。
その日は、彼のポジトロン頭脳が、工場で起動を始めてから200年の節目(誕生日)でした。人間社会は、この日、彼をキリスト以後のもっとも長寿となる人間して、また女性との正式な婚姻を、認め祝福します。
年老いた妻は、彼の手を取り微笑みを送ります。ですが、彼はこの喜びを受けとめることなく、息を引き取っていました。
end

アシモフの短編は、米国社会の中で、自分を擁護してくれる家族の愛と、家族以外の人間社会から受ける偏見の間を彷徨いながら、社会に訴え、ひとつひとつ人間らしい権利を勝ち取っていく物語です。70年代初期の作品で、人種差別問題、マイノリティ差別問題に風を吹かせる人権活動家の顔もあったアシモフらしい作品だなぁと感じます。
ですが映画作品は、現代において、人間というものが根源的に有する尊厳について気づかせてくれます。
年老い臨終を迎えた家族たちが、永遠の命を宿すアンドリューに語る言葉です。
-私たち(人間というものは)は、自然の摂理に従い、自然に帰するのだ-
-神の手から生まれ、神のもとに帰す-
そして家族たちは、表情に威厳をたたえながら、死へと旅立ちます。

映画では、原作にはない、マーティン家の末の娘リトル・ミスとアンドリューとの永遠の友情と、そしてリトル・ミスのDNAをそのままコピーしたような孫娘ポーシャとの恋愛が描かれます。
そしてSEXについての行がとても興味深かったです。
まだロボットの身なりのアンドリューに、主人リチャードがSEXについて語ります。
しかし論理的思考のアンドリューには、何千万という一斉に放出された精子の唯一ひとつだけが生き残り卵子と結びついて人間が作られるという話に不条理さを漏らします。
しかし、頭脳だけを残して心も体もすっかり人間と化した後年のアンドリューが、次に快感を授かろうとするとき、リチャードがほんとうにアンドリューに語りたかったSEXの喜び、期待を口にします。
愛する人と一緒に何度も何度も天国に登っていきたい・・・
そばて聞いていたアンドリューの支援者ルパード・バーンズは、その詩的で甘美な表現にすっかり感心します。

最後にトリビアをひとつご紹介。
この映画のサウンドトラックを記したのはジェームス・ホーナーです。ジェームス・ホーナーはタイタニックでアカデミー作品賞を受賞した現代米国の優れた作曲家のひとりでありますが、この映画作品のオープニング楽曲が、ある作品のオープニング楽曲と酷似していることに、気づきました。その映画は、『ビューティフル・マインド』です。この映画のサウンドトラックを記したのもジェームス・ホーナーでした。
機会があれば一度聞き比べて下さい。ほんとうにそっくりです。

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