日中戦争(1937-1945)が日本の敗戦で終結した後、時の中華民国元首であった蒋介石は国民に対し「怨みに報いるに徳を以てす」という呼びかけをし、その呼びかけによって満州や中国大陸からの日本人引き揚げ者が安全に日本に引き上げることができたと云われます。
「怨みに報いるに徳を以てす」は、聖書の中の言葉「汝の敵を愛せよ」に通じる、深い慈愛に満ちた言葉です。
シェークスピアが悲劇「ロミオとジュリエット」で描いた様に、血を血で洗う紛争や抗争が生み出すものは、ドロ沼の遺恨です。遺恨は復讐の連鎖を引き起こします。
でも、その連鎖を唯一断ち切る方法がこの「怨みに報いるに徳を以てす」なのだと思います。
しかし、中国において「怨みに報いるに徳を以てす」には、相反する二つの意味があるそうです。
老子(道家)は、怨みになど執着せずに、恩徳(慈愛)に満ちた生き方を説いています。
しかし孔子(儒家)は、「 直きを以て怨みに報い、徳を以て徳に報ゆ」
怨みには合理的に対処せよ、恩徳には恩徳で応えよ、と説いています。
近年の中国は、どうやら後者の意味を対日本政策でとっている様子です。中国政府は日中戦争時に日本軍が中国大陸で行った非道を現代に甦らせて、日本は非道の国だとして、中国が抱える内憂外患への不満の矛先を日本に向けているのだと思います。
しかし、反面中国はどんどんと開かれて、一般国民も海外に大勢旅行に出かけ、日本にも沢山訪問されて、日本の良さを実感されていると思います。彼らは、日本が中国政府のプロパガンダの通りの国で無い事を、日本訪問の経験で学ばれたのではないかと思います。
また中国は、政治力、経済力、軍事力の台頭によって米国と並ぶ超大国となりました。そして旺盛な中国の覇権主義、膨張主義は日本にとってもただならぬ脅威となりました。それを日本政府が利用して、日本人の中国に対する嫌悪感や敵愾心を増幅させている様に思います。
国は国、人は人、また政治は政治、経済は経済と、国際関係においても縦割りに合理的に捉える考えがありますが、でもやはり一番上に政治があるのだと思います。政治の舵取り一つで、何もかもが挙国一致に誘導されてしまいます。
日本人の「怨みに報いるに徳を以てす」への心情は、老子(道家)に近いと思います。
四季に恵まれると同時に、年中自然の脅威に晒された日本人は、本来怨みを顧みず、自然に真摯に向き合ってきた民族です。感謝を何より大事にしてきた民族です。
中国政府が70年前の出来事を持ち出して、中国国民を敵意に誘導するならば
私たち日本人は、70年前の恩徳への感謝を思い出し、中国国民への友愛を発信し続けなければならないと思います。
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